「愛してる愛してる愛してる!レンくんそればっかり!はっきりいってマンネリよ!もっとハートフルでチャーミングな愛の言葉はないの!?」
「ミク姉無茶言わないでよ!僕はそれ以外思いつかないんだ。大切な人だから。愛してる以外に何を当てはめればいいって言うのさ!」
「…はう」
レンくんは意外と直球なんだよね……知ってたけど。
私は今までそんな風に一途に思われたことがなかった。
恋なんて大人なイメージだったし。カイトおにいちゃんとメイコおねーさんみたいな。
よくわからないんだよね、恋って。
いっぱいいっぱい、胸が苦しくなるような恋の歌とか思わずはしゃいじゃうような恋の歌とか歌ったけど。
でも実際に分からないの。
……怖いのかもしれない。
「もっとなんか違う言葉で言ってみてよ」
「愛してる、はダメなの?」
「…うーん、ダメじゃないけど。私が聞きたいの。そしたら、ご褒美のちゅーしてあげるから」
「ちちちちちちゅー!?ミク姉が!?ぼぼぼ僕にっ!?」
「うん」
「それは…!くくくく、口に…!?」
「うん、口にちゅーしてあげる」
ぽっぽっぽと頭から湯気をだすレンがちょっと心配になる。
ともあれ、言ってくれるなら万々歳だ。
「…ミクさん。好きです」
「………!!!!」
「あの…ダメだった…?」
「ううん!そうじゃなんだけどっ!レンくんの言い方がすごく初々しくて、ますます好きになりそうで怖かったの!」
「うぎゃ!ミクさん今の反則…っ!!」
素直に言葉にしたら、真っ赤になって抱きしめられた。
ああ、それだけでこんなにもうれしい。
「意地悪言ってごめんね」
私は臆病だ。
でも、あなたがそんな臆病者を好きだなんていってくれるから、少し調子に乗ってみようと思うの。
「愛してるがマンネリなんて嘘。本当は、もっと………言ってほしいわ」
なに、笑ってるのよ。
レンくんのくせに生意気ね。
そんな悪態ついても、許してね。
―――――――――――
ツンデレな初音さん。
ボカロは奥深いなぁ。
歌を歌う。
電子音の羅列。
リズムをとって、自分でこんなことを思うのもなんだと思うけど、人間が歌うソレよりも結構いい響きなんじゃないかな、なんて。
歌の中では私はいくらでもハッピーエンドになれる。
幸せ。
それが一瞬のものなんて、わかっているけど。
『ミク姉が好きです』
レンくんはそう言ってくれたけど、私は信じられないの。
この恋の結末は分りきっている。
だって、前もそうだったんだから。
お兄ちゃんのとき。
私はいつだって二番目だ。
だから諦めている。信じない。傷つかない。
この気持ちが育ったなんてあってはいけないんだ。
『ミク姉』
その一言でプログラムにはない部分がきゅうってなる。
レンくんの奏でる言葉は奇麗だ。
そして私の恋心はビートを増す。
もうダメだと思った。
私はあなたのことを好きになりすぎた。
ハッピーエンドを、望んでしまった。
私が好きな分あなたも私が好きでいてほしいと思った。
嘘でもいいから一番だって言ってほしいと思った。
カイトお兄ちゃんのときとは違う。
私はもう、このビートを止めたくない。
だからレンくん。聞いてください。
私の歌を聴いてください。
あたしの思いが、あなたに少しでも伝わりますように。
「レンくん、大好きだよ」
歌を歌う。
電子音の羅列。
リズムをとって、自分でこんなことを思うのもなんだと思うけど、人間が歌うソレよりも結構いい響きなんじゃないかな、なんて。
歌の中では私はいくらでもハッピーエンドになれる。
幸せ。
それが一瞬のものなんて、わかっているけど。
『ミク姉が好きです』
レンくんはそう言ってくれたけど、私は信じられないの。
この恋の結末は分りきっている。
だって、前もそうだったんだから。
お兄ちゃんのとき。
私はいつだって二番目だ。
だから諦めている。信じない。傷つかない。
この気持ちが育ったなんてあってはいけないんだ。
『ミク姉』
その一言でプログラムにはない部分がきゅうってなる。
レンくんの奏でる言葉は奇麗だ。
そして私の恋心はビートを増す。
もうダメだと思った。
私はあなたのことを好きになりすぎた。
ハッピーエンドを、望んでしまった。
私が好きな分あなたも私が好きでいてほしいと思った。
嘘でもいいから一番だって言ってほしいと思った。
カイトお兄ちゃんのときとは違う。
私はもう、このビートを止めたくない。
だからレンくん。聞いてください。
私の歌を聴いてください。
あたしの思いが、あなたに少しでも伝わりますように。
「レンくん、大好きだよ」
騒ぐクラスメイトと一緒にいたキョンくんは、表面上では、なるほど、同調して馬鹿騒ぎをしていたが、その実、どこか不安げな表情を浮かべていた。
クラスメイトの輪の中にいたキョンくんは、校門前で待っている僕と目が合うと慌ててクラスメイトに一言二言かわして僕の方に来てくれた。
気を利かせてくれたのだろう。
「古泉、卒業おめでとう」
「はい、ありがとうございます。それとキョンくんも卒業、おめでとう」
「…………ありがとう」
キョンくんは、いいながら顔を俯かせ、視線を下に落としてそう言った。
「おや。どうしたんですか、キョンくん。あまり、嬉しそうじゃないですね」
「まだみんなには話してなかったけど、俺は東京にいくんだ。東京の学校にいく。もしかしたら、もうみんなと会えないかもしれない」
「キョンくんは、東京でひとりで、やっていけるんですか…?」
「ダメかも…しれないな。俺はSOS団が解散したときも、古泉がいてくれたから、立ち直れた。古泉がいてくれたから、俺でいられた。でも進学先には古泉はいない……ただの甘えだなんて気付いているけど……」
すごく、辛い。
キョンくんは自嘲気味に笑った。
それに釣られるように、僕は微笑んだ。
「……なら、大丈夫です。キョンくんが住居の契約をしてしまった場合が一番困るのですが、そのときは心苦しいですが、居候させて頂きますよ」
「……それって」
「僕も、いきます。貴方が東京の学校にいくと担任の先生から聞いて、こっそり受けてたんです」
キョンくんはしばらくきょとんとしていたが、ようやくふっと、微笑んでくれた。
とても綺麗な笑顔だった。
「……ストーカー野郎」
「構いませんよ」
(貴方が、笑ってくれるなら)
古泉と当分あわないと決めたのは、俺の方だった。
そのことを告げたときの古泉の顔は今でも忘れられない。
普段のスマイルイエスマンがどこにいったのかと思うくらいの取り乱しっぷりだった。
「僕のこと、嫌いになったんですか?」
古泉はそういった。
俺は古泉があまりにも的外れなことを言ったから、思わず笑ってしまった。
笑ったことに古泉は「笑いごとじゃないですよ!」とまた激怒したが、俺はそんな輪をかけるようにらしくない古泉にまた笑ってしまった。
笑ってしまって、そこで俺も少しだけ涙を流していることに気付いた。
「んなわけないだろうが。ばか泉」
「では、なぜですか!僕が何かしましたか?何かをしたなら謝りますから―――」
「俺の問題なんだ」
なんて勝手な発言だ。
古泉もさぞかし呆れているだろうと自嘲する。
「だから、少し距離を置こう」
俺が説明できることなんて、何もないのだ。