沈黙が流れる。彼女はいまだ話そうとしない。
「・・・いいわ。話したくないなら無理に聞かない」
彼女に私は微笑んで言った。
「お前はおかしなやつだな。私の負けだ。美鈴出ておいで」
『ごめんなさい。二人に迷惑かけて。ただ私はお母さんに会いたかったの。』
泣きながら現れたのは依頼主の美鈴本人だった。
「美鈴さん、無事でよかった。サリエルも美鈴も家においでよ。こんなところに居ても仕方ないし。それにずっと時間をとめておくのはよくないから。」
「私もか?」
一瞬驚いて私を見る。
「吸血鬼と悪魔が一緒に行動するのは珍しい事だ」
確かに種族が違い一緒に行動することは滅多にない。珍しい事だ。
「危害を加えないだろうし、何か訳有りみたいだからかまわないよ。にぎやかだから楽しいよ。ガラクタがいっぱいあるけど」
「ふ、そうだろうな。その青いのは特にな」
「なんだt 「すぐ突っかかるから言われるんですよ。蒼斗」
「白いのは面倒見がいいみたいだな。」
恭也はニコリと微笑み応える。
「いつもお嬢様や蒼斗の面倒を毎日みていますから苦ではありません。
そこに食って掛かるのが蒼斗だ。
「いちいち説明しなくてもいいだろうが!この化け狐」
黙って聞いていた私はとうとう堪忍袋の緒が切れた。
「二人共・・・いい加減にしなさいよ!」
「「Σ!!はい・・・」」
ひと段落ついて店に着いた。恭也がすかさずお茶と茶菓子を用意した。
「暖かいお茶をどうぞ。落ち着きますよ。美鈴さん」
「ありがとうございます。」
「それでいつからお母さんいないの?
『1ヶ月前に買い物に行くって言ったっきり帰ってきません。』
涙を流しながらしっかりと私たちに教えてくれた。
「そう。何か原因はあったの?お父さんと喧嘩したとか」
『両親はとても仲がよくて喧嘩はしたことありません。お役に立てなくてすみません。』
原因が分からない。喧嘩でも家出でもなさそうである。
「・・・私のほうでも調べてみよう。原因は魔界にありそうだからな。」
「!!どういうこと?」
「私とは別に悪魔がいる可能性があるってことだ。」
つながった。原因は人間界ではなく魔界にあった。早く見つけなければ大変なことになる。
しばらく沈黙が広がった。
「……」
「何か勘違いをしているようだな。確かに私は結城美鈴をしっているが唆すことはしていない。母を思う気持ちにうたれた。だから無償で協力しているに過ぎない」
それを聞いて驚いた。悪魔が無償で協力するなんて信じられなかった。
「嘘だ!悪魔がそんなことするわけ 「おやめなさい!蒼斗!失礼しました。貴女はそれだけの理由でここにいるわけではないでしょう。」
喧嘩ごしの蒼斗を制し訪ねた。
「……」
じっと彼女を見つめた。話してくれるまでずっと見つめた。
彼女にいったい何があったのか。
「ここが美鈴さんがよく来ていたという公園ね。・・・恭也、蒼斗いるわね」
「「は、ここに」」
普段はにぎやかな公園なのに今日に限って誰もいない。静けさが漂う。
これは普通じゃない。音が聞こえない。
違う。音が聞こえないんじゃない。音が消されている。
「普通じゃない。何故音が消されているのかしら。これって関係あるのかな。」
あたりを見渡すが見た目は普通の公園なはずなのに何かがおかしい。
「おやおや?珍しい人がいるようだね」
「誰だ?名を名乗れ?」
蒼斗が気配に気づき声を荒げる。
「人の名前を聞くときは自分から先に名を名乗ると教わらなかったのかい?躾がなっていないようだね。」
「申し訳ありません。私は霧生 奏といいます。二人の主人です。貴女は?」
「私か?私は悪魔 サリエル。くく、お前は人間じゃないな。真っ赤な血を好む吸血鬼(ヴァンパイア)だな。」
まっすぐ見下してくる悪魔。こんなところで会うなんて思っていなかった。まさか私の正体もわかってしまっていた。
「悪魔!!あなたね。結城美鈴さんをどこへやったの?何の罪もない彼女をそそのかしてなにが楽しい!!」
悪魔と対峙しこの後どうなるのか。
美鈴は助かるのか。
それは次のお話で。
美鈴は相変わらず手がかかりもなく行方不明のまま数日が過ぎた。
「どこに行ったのかな。美鈴さん。一応クラスの人にもう一度きいてみようかな」
何か見落としあるかもしれない。クラスに行ってみることにした。
「しつれいします。あの結城美鈴さんのことについて知っていませんか?」
「結城さんは休みですよ」
「それはしっています。彼女が行きそうな場所とかでいいんです。小さな事でもいいので教えて欲しいんです」
「よく行く場所かぁ」
彼女が考えこんでいるとき後ろから声をかけてきた男子がいた。
「結城さん、最近はみないけど前はよく公園の並木道にいたよ。」
「ありがとう。助かったよ」
手がかかりと言えるかはわからないけど情報が手に入った。
「よし、並木道に行ってみよう。」
難航するとおもいきやみじかなところから情報を手に入れることができた。
まだ肝心なことは見えてこないけれど一歩進むことが出来た。
だが、その公園で事件は起きることはしるよしもなかった
「はぁ…」
結城美鈴をあちこち捜したが見つからなかった。出るのは溜息ばかりでとうとう疲れてやむなく店へと帰って来た。
「お嬢様、お疲れ様です。私供も捜しましたが美鈴様は見つかりませんでした」
「こっちもよ。悪魔と契約してまで母親と会いたいと願う彼女…なぜそこまで…」
昔の記憶が蘇ってくる。私もものごころがつくまえに母さんが突然いなくなってしまった。辛くて悲しくて何日も泣いた。なんでもいいからすがって母さんに会いたかった。でも悪魔と契約はしたくなかった
「…お嬢様、お嬢様、しっかりなさいませ。」
恭也の声で我に帰り恭也を見た。今私はどんな顔をしていたんだろう。
「恭也…大丈夫。ごめん。今日は疲れたみたい。先に寝るね」
「おやすみなさいませ。ごゆるりとお眠り下さい。余り無理なさらずに」
一人になりたくて先に部屋に行ってベッドに横になる。恭也は黙って私を見送り仕事の片付けを始めた。
「恭也は鋭いな。あの調子じゃ気付いてるよね。母さん…はぁ…私がくよくよしてたら意味ない。しっかりしないと」
疲れていたためそのまま寝入ってしまった。