他CPで似たような話書いたのでこっちは放置したと思われる。もったいないので曝しとく←


天下の不良高校石魔矢を卒業した俺は、あの生ける伝説アバレオーガと東邦神姫の東条英虎が勤めている建設会社に就職した。馬鹿ではあるが体力と腕っ節には自信があったし、このご時世も相まって就職先が決まった時には両親が泣いて喜んだ。

金曜の夜、同じ石魔矢出身だという先輩2人に連れられて駅前の居酒屋に来ていた。最初のビールが運ばれてきてとりあえず乾杯をしたのはいいが、この空気に似つかわしくないほどの重たさで先輩(仮に佐藤さんとしておこう。あともう1人は鈴木さん(仮)で。2つ上なのだが如何せん、さほど名の知れた人ではなかったので記憶にない。まあ悲しいかな、俺もだけど。)は口を開いた。

「加藤。ここに入社したお前に、言っておかなければならんことがある。」

何を言われるのかと生唾を飲み込む。右手にはしっかりビールが握られているけれどそれを持ち上げて飲む気にはなれなかった。鈴木さんも同様に眉間にしわを寄せている。

「お前、彼女とかいるか?」

「は?」

さっきまでの重苦しい空気にはそぐわない、なんてことない質問に思わず肩を落とした。なんなんだ、一体。

「居るか居ないかで精神ダメージが違ってくんだよ。居ねえ俺らはあの時間がどれだけ苦痛だったか…!!!」

「泣くな、鈴木…!!!」

思わず目頭を押さえて呻く鈴木さんの肩を慰めるように叩く佐藤さんも眉間にしわを寄せている。何がなんだかわからない俺を尻目に二人してビールをぐいっと飲み干す。すかさず追加をするあたり抜け間がないというか。

「まあ…居るには居ますけど…遠距離っす。」

ちびり、とビールを舐める。地元に就職した俺と地方に就職した彼女。距離は離れてしまったけどなんとかうまくやってきたいなあとぼんやりと考えていると「居るのかよちきしょうめ…!」とかなんとか聞こえてきたけど聞こえないふりを決め込んだ。

「まあいい…。居るんならまだダメージは軽く済むはずだ…。ここからが本題なんだけど、」

ずいっと体を前に出してより一層真剣な表情を浮かべる佐藤さんの後ろで鈴木さんが追加のビールを受け取っていた。俺はさっきの質問で身構える必要がないと判断し、なんの構えもなく言葉を待った。

「まず、第一に。男鹿さんと東条さんは知ってるよな?」

「石魔矢で知らなかったらそいつカンペキモグリっすよ…。」

というか入社日の昼休みに殴り合いどつきあいの喧嘩をしていたのを目の当たりにしたのはまだ記憶に新しい。現場の親方も程々にしとけよー、なんて言うくらいには慣れているみたいだった。

「間違ってもあの2人には喧嘩なんか売るな。めり込まされるぞ。」

「めり込む…?」

おもむろに鈴木さんが携帯をこちらに差し出してきた。そこにはずらっと並んだオブジェ。…いや違う。人が壁に突き刺さってる!!!?

「…合成とかじゃないんすよね?」

「そんな器用なこと俺らが出来るわけねーだろ。ちなみにこれは男鹿さん作だ。」

作って!!!!そんな作品みたいに!!

「第二に。男鹿さんに嫁の話は振るな。」

「絶対だ。帰れなくなるぞ。」

2人は同時に目頭を押さえ、ぐいっとジョッキを煽った。なんだかもう飲まなきゃやってられねえっていう飲み方だ。

「嫁さんのことはお前知ってんの?」

「ああ、はい。確か銀髪の幼なじみって聞いてますけど。」

「通称悪魔誑し(テンタツィオーネ)の古市…!」

なんか、無償に彼女に慰めて貰いたい気分だった。