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絵本のような現実

夢の中で僕は、思い出していた。


それは巨大で美しい鳥籠でもあり
黒い影に包まれて終わりが見えないような
恐ろしい迷路でもあった

不思議だ。

この夢の中で僕は
薄日に溶け込んでしまいそうな
白く鈍る輪郭を持つ少女と
いつも指先を結んで
繋がる言葉もなくしたまま
黙って
ふたりで歩いていた。


悲しいね、
と彼女は呟いた。
しかしそれは彼女ではなく
木々のざわめきだったかもしれない
目を閉じて、耳をすます

麻痺。
感覚を忘れて
地面に足がついているかも分からず
それでも僕らは
そこに存在していた


僕らはそこでは異物だった
永遠に馴染まない存在。
美しい背景に混ざり合えないまま
ぼんやりと思うことは故郷

滝の流れる音
小鳥のさえずり
水の流れが止まった水路
高くて不安定な道なき道
死者を弔う静かな場所
揺らめく松明の灯
眩しい西日
ゆったりと風を受けて回る風車
そびえ立つ正門

知らない空間
でも
確かに知っていた
懐かしい風景
彼女と歩いて
歩いて
立ち止まって
冷たい指先から鼓動を感じて
柔らかな髪が揺れ、て


「あの子はこの城から出られない運命だ」


そう
どこかで聞こえた低い鳴き声
ここでいつも夢が真っ暗になる
何も見えない
見たくても見れない映像
だから僕は
暗闇の中を
泳いで
もがいて
でも何も変わらなくて

短い時間か長い時間か
どれくらい経ったか分からない
突然
雷の音が響いて
何かが崩れる音
同時に身体が揺れた
ゆらゆら、と
一定のリズムを刻みながら
僕の身体は揺れている
揺り篭に乗ってるみたいだ
夢の中のはずなのに
夢ごこち、


「あなたはここにいてはいけない」

ああ
こんな死に方も悪くない

そんなことを思いながら
夢が途切れる




ゆっくりと目を開ける
どうやら木漏れ日に包まれながら
うたた寝をしていたらしい

隣を見ると
夢に出てきた君が傍にいた。
空気に触れて透き通っている
白い横顔を見つめて
僕は、君を守れていただろうか。いるだろうか
と、
起きない頭で考えた

息をすって
そっと吐き出す
同時に
君の瞼がうっすら開いた


「あ……起こしちゃったかな」


君はしっかりと目を開け、僕をじっと見つめる。

僕らの間に共通の言語は存在しない
言いたいことは全て、身体を使って合図する。
そうやって一緒に生きてきて
どれくらいの月日が経つのだろう


すごく、泣きそうになった。
僕は
いつもその視線に守られてきたのだ。

鳥が羽ばたく
風が吹いて
取り残された迷子
それでもふたりなら、。



それは絵本のような現実



僕より小さくて白い手を取り、君に笑いかけた。


「帰ろう。」



【ICOクリア記念につらつらと。
手を繋げば、世界も繋がる】
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