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番外編:はじめてのおつかい

※古宮家の場合











「やっぱり、ついてった方がよかったんじゃあ…」

「悠賀(はるか)、大丈夫よ。」


そわそわと落ち着かない夫に、妻は苦笑する。先程から、夫…悠賀の視線は時計にロックオンされていた。


「で、でもっ…つばきさん!」

「私とあなたの子よ?しっかりしてるから大丈夫!」


妻…つばきは、『ねー』と腕の中にいる娘に同意を求めた。

五歳の娘は、自分の身体とほぼ変わらないくらい大きな黒猫の人形を抱きしめて母を見上げる。くりくりとした大きな目が、笑っている母を捕らえると同じようににっこりと笑った。


「ねぇー!」


母と同じように返事をすると、それを見ていた父親の顔がゆるゆるになった。先程の心配した張り詰めた表情の気配はかけらもない。


「悠賀、顔が緩んでるわよ。」


クスクスとつばきに笑われて、悠賀はハッと先程の張り詰めた表情になる。その頬は若干朱く染まっていた。


「いくらしっかりしてても、まだかなちゃんは七つだよ…?」


むぅと唇を尖らせて抗議する悠賀に、つばきは苦笑を浮かべる。二十七になる夫に、お前はいくつだと聞きたくなった。


「まだ小さいし…他の子なんかよりも可愛いし…知らない人に声かけられてそのまま誘拐とか…!!」

「大袈裟ねぇ…」

「最近小さい子狙われやすいんだよ!」


親バカ丸出しの悠賀に、つばきは笑うしかない。


頭を抱えて唸る悠賀をどうしようかと思案し始めると、ピンポーンと機械音が鳴った。


「かなちゃん?!」

「そんなわけないでしょう。」


心配のあまり叫ぶ悠賀に、バッサリとつばきは切り捨てる。

ここはかなたの家だ。わざわざ呼び鈴を鳴らすわけがない。


「はい、どちらさ…」


リビングに取り付けられているインターフォンをとる。同時に、映った外の映像に言葉を無くした。


「つばきさん?」


固まったつばきに、悠賀は首を傾げる。

すると、愛娘・ゆりこが声を上げた。


「かなちゃ!」

「え?」














***







「………」

「………」


とりあえず。


「ご、ごめんね…奏伍(そうご)さん…」

「いや、大丈夫だ。」


お隣りの小野家の旦那さん、小野 奏伍に頭を下げる悠賀。

そして、奏伍の腕には七つになる愛息子、かなたがいた。小さな腕でエコバッグを抱え、大人しく奏伍の腕にいる。


「ほら、かなたおいで。」


悠賀が両手を広げると、かなたは無言でそれを見て、次に奏伍を見上げた。


「ありがとう…」


小さな声でお礼を言って、自分の父親の腕に移る。

奏伍は軽く目を見開いてから、笑みを浮かべて悠賀の腕に移ったかなたの頭を撫でた。


「危なかったぞ。連れ去られそうになってた。」

「!!やっぱり…!」


奏伍の言葉に、悠賀は青ざめる。そんな悠賀に奏伍は苦笑した。


「まあ、俺がいたからよかったけど…」

「本当ありがとう…!!奏伍さんっ…!」


今にも泣きそうな悠賀に、奏伍はさらに苦笑した。


「悠賀のとこも大変だな…」

「奏伍さんもでしょ…」


小野家の子供二人は、ご近所から『天使』と称されるほど、将来有望な顔立ちの可愛い子供だ。

遺伝子の提供者である両親が美男美女なのだから、それも頷ける。

父親の奏伍はすらりと背が高く、すっきりとした鼻筋に涼やかな目元。まさにイケメンだ。そして、二児の父親には見えないくらい若く見える。

この間悠賀と奏伍の二人で買い物をしていた時に芸能人事務所からスカウトされていたし、道行く女性は奏伍に視線が釘付けだった。
(タバコを吸って待っていた姿に、思わず悠賀も頬を染めていたなどと死んでも言えない)


とは言え、若作りならば古宮家も負けてはいない。

嫁たるつばきは三十路になったというのに、スッピンでも二十代前半に見られる上、美人だ。

悠賀は奏伍のような爽やかでカッコイイイケメンではないが、とても可愛らしい顔立ちをしていて、童顔だ。幼い頃は女に間違わられるほどの女顔で、今でもたまに間違わられる。
(身長が高いため、昔ほどではないが)


ちなみに、古宮家の子供は二人とも父親似だ。かなたは若干母よりではあるが、ゆりこは丸っきり女版悠賀なのである。

さらに、小野家は姉は母親似で弟は父親似という両親のミニマム。


「かなたはつばきさんにちょっと似てるからなー。気をつけろ。」

「う、うん。」

「ついでにお前もな。」

「え?なんで?」


奏伍の言葉に首を傾げる悠賀に、奏伍は呆れたような顔をする。そんな顔でもかっこよく見えるのだから、イケメンは得だ。


「かなたもゆりこも可愛いけど、お前も一応可愛い部類に入るからな。」


男だけど。

そう付け足して、奏伍は笑う。


「笑えない…それって、俺が男に襲われるってこと?」

「そういうこと。世の中、色んなやつがいるからな。気をつけろ。」

「………」


じゃあと去っていく奏伍を、悠賀はじとっと睨みつけていた。


「…パパ?」


呼ばれてハッとすると、腕の中のかなたが悠賀を見つめていた。


「ああ、ごめんね。でも、危なかったね。大丈夫?怪我はない?」

「……ん」


小さく頷くかなたに笑いかけて、悠賀は家の中に入った。


「おかえり、かなちゃん。」

「……ただいま。」









終わり。







ただ仲良しなパパズを書きたかっただけです!


まんぞく!(^w^)


でも、本編にはまだ奏伍さん出てない…




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