―君の笑顔は太陽のようで
―君の存在は日溜まりみたいに暖かい
最近は平和で、襲ってくるイミーテションにも苦戦することなく、暫くは落ち着き穏やかな日々を過ごしている秩序勢
そんな中、太陽の名を持つ青年・ティーダは一人で色々な世界を歩いていた
「…おーい。何処に居るっスかー?」
もう何度目かもわからない呼び掛けをする。が、返答はない。シーンと静まり返っているのが寂しい
寂しくてじんっと目尻が熱くなってくる
「…バッツ…」
はぁ、とため息を吐いてからもう一度名前を呼ぼうと吸い込んだところで、背中に何かが張り付いた
「ティーダ」
あぁ、聞きたかった声がようやく聞けた。泣きそうになったが何とか堪えてくるりと後ろを向いた
「バッツ」
名前を呼べば、年上なのに年上に見えない笑顔を浮かべて更に密着するように抱き付いてきて、それを抱き留める
「探したっスよ…また一人でいなくなるんだから…」
「悪い悪い…」
このやり取りも何度繰り返しただろうか。バッツも悪気があるわけではないようだが、いい加減止めてほしくなる
「…ねぇ、本当に心配したんスよ?」
ぎゅっと抱き締めて、肩に顔を埋めて呟くと、悪かった、と返答が帰ってきて頭を撫でられる
(…本当に、懲りてほしいっス…)
これが、ただの仲間の関係ならば諦めもつく。しかし、二人はそんな関係ではなく、もっと深い関係なのだ。所謂、恋人という関係
(俺が好きって言って…バッツも好きだって言ってくれた…俺ばっかり、バッツのこと好きみたいだ)
バッツを抱き締めたまま、ティーダは心の中で呟き続ける。変わらず頭を撫でられたままで、自分より背の低い彼を抱き上げると、うわっ、と驚いた声が聞こえた
「いきなりなんだよっ」
「バッツが好き」
降ろせと言い掛けた言葉が飲み込まれ、きょとんとした表情から段々と赤みが増していく
「…それこそ、いきなりじゃないか…」
「だって…バッツが…いつもいなくなるから…」
自分の側に居たくないのかと不安になってしまう。抱き上げたバッツの鼻先に口付けると擽ったそうに身を捩った
「恥ずかしいことばっかすんなよっ」
「俺より年上の癖にー」
降ろせと肩を叩かれると仕方なさそうにしながらバッツを降ろした。またいなくなるのだろうとため息を吐けば、ふと手に暖かな温もりを感じそちらを見れば
「行こうぜ」
満面の笑みを浮かべたバッツとしっかりと繋がれた手。何処へ、と聞き返す前に腕を引っ張られ、半ば引き摺られるように歩いていく
バッツの腕力は仲間内でも1、2を争うほどで、伊達にクラウドのバスターソード、スコールのガンブレードを片手で振り回すだけのことはある
暫く歩いていくと、次元城のとある一角へとやってきた。何をする気なのだろうかと考えていると、いきなり抱き付かれた
「…バッ、ツ…?」
「……やっと、二人っきりになれたな」
へへっと恥ずかしそうに、けれど何処か嬉しそうに見上げてくる
「最近さ、みんなといること多くなって二人になれなかっただろ?」
だから人気のないところを探してた、と笑う。彼がいなくなる理由がわかり、それが自分に関することだとわかれば天にも昇るほど嬉しくなった
「バッツーっ!!」
「わわっ!!く、苦しいってば」
ぎゅうっと強く抱き締めれば、加減しろと笑う愛しい彼の笑顔
「ほんとはさ、ティーダと一緒に行きたかったけど…誘えなくて…」
お互い親友とも呼べる仲間がいて、彼らがいつも側にいたために声を掛けれなかったらしい。実はティーダもそれは同じで、バッツの側にはジタンが。ティーダの側にはフリオニールがいたのだ
「のばらなら分かってくれると思うけどなぁ」
「ジタンもだけどな」
二人の恋路を一番応援してくれたのは親友たち。意外に強情なティーダの背中を押してくれたり、意外に照れ屋なバッツを引き止めたりと何かと手伝ってくれた
「一緒にいたくないわけじゃないけど…たまには」
「二人がいいっスよね」
バッツを抱き締めたままティーダはその場に座り、膝の上に横抱きにしてバッツを座らせる
「毎日でも、俺はバッツと二人になりたい」
「…っ…あ、当たり前、だろっ…俺だって…いたい」
顔を真っ赤にしてバッツからキスをしてきた。それに応えるように触れ合うだけのキスを何度も繰り返す
吹く風の心地好さとティーダの温もりに、バッツはいつの間にか眠っていた。規則正しい寝息を立てながらティーダの腕の中で眠る
その寝顔を見つめるだけで今は満足だった。風に揺れる髪を優しく撫で、額に口付けた
(…こんな防備になっちゃって…俺が襲ったらどうする気っスか?)
ぺたりと頬に触れ、唇へ口付けようとしたらバッツが目を覚ましてしまった
「……?…っ…!?」
至近距離のティーダの顔を見てきょとんとしていたが、すぐにその近さに真っ赤になり思わずティーダの顔を殴ってしまった
「ぐっ、あっ…」
「あ…わ、悪い…」
殴られた頬を抑え、恨めしそうにバッツを見るが自分に非があるために視線を反らした
殴ったバッツはティーダが何をしようとしていたかわかっていないらしく、条件反射で殴ってしまったことを何度も謝ってきた
(…可愛すぎる…)
年上なのに、自分と同じ…いや、年下に見えてしまいそうなバッツに愛しさばかりが募る
「バッツ」
慌てるバッツの腕を引いて抱きしめ、自分がしたかったことを耳元で囁いてみると、耳まで真っ赤にしながら頷いた
上目でティーダを見上げ、何処か緊張したように目を閉じる。その仕草に目眩にも似た感覚を感じながら、そっとその唇へと口付けた
―…ティーダ、そろそろ帰ろうぜ?
―んー…もうちょっと…
―っ…調子に乗んなっ!!
―あたっ…
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ものすごーく中途感がぬぐえない…
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みなさん、ありがとうございました!!