かつてこの世界を、この地球(ほし)を護る勇敢な戦士達がいた。彼等は「炎神戦隊ゴーオンジャー」と名乗り、相棒(パートナー)の「炎神」と呼ばれる異世界より来たりし機械生命体と共に、この地球を暗黒と混沌に満ちた世界にせんとする、悪の軍団「ガイアーク」と日夜闘い続け、勝利した。こうして我々の住む地球(ほし)は彼等の目覚ましい活躍によって平和へと導かれたのである・・・
そして、地球に平和が訪れると共に、「炎神戦隊ゴーオンジャー」は解散。彼等の相棒の「炎神」達も元居た故郷に帰り、誰しもが「ゴーオンジャー」と「炎神」の存在を忘れ、彼等が単なる「都市伝説」となりつつある頃に再び事件は起きる事となる・・・
東京都某所、日差しもそろそろきつくなる初夏の頃、とある小学校に一人の転校生が、これから転入する学校のクラスに期待と不安を寄せながら準備をしていた・・・
少年「母さん、おはよう。」
母「おはよう翔太、転入初日から不備のないようになさいね?」
少年「分かってるよ、母さん。あ、そろそろ時間だ。行かなくちゃ!それじゃ母さん、行ってきまぁーす!!」
母「ちょっと待ちなさい、翔太。あなたまだハンカチとちり紙を!!・・・まったくあの子ったら、父さんに似てせっかちなんだから・・・」
少年の母は彼のせっかちな性格をいつも危惧していた。
少年の名は風見翔太。この物語の主人公である。
翔太「ここが新しい学校かぁ・・・新しい学校ではどんな友達に出会えるかなぁ・・・」
目的地に着いた彼の心臓は今にも爆発せんとする勢いだ。
そして担任教師の紹介とともに挨拶する翔太。
教師「あー、そういう訳で〇〇小学校より転校してきた風見翔太君だ。みんな、仲良くな。」
翔太「風見翔太です、みなさん よ、よろしくお願いします・・・」
教師「翔太君の席は、そうだなあ・・・吼太郎の隣、でいいかな・・・?吼太郎、翔太君のことよろしくな?」
吼太郎「はい、先生。おまかせください。」
やる気があるのかないのか、担任教師に吼太郎と呼ばれる生徒は感情の伴わない、棒読み調子で生返事をした。
〜同刻〜
謎の男「はい、連博士。あなたのお孫さんが例のターゲットと接触いたしました。ターゲットにはこちらから呼び掛けいたしますか?」
博士「・・・その必要はない、同じ志を持つ者同士、やがては「相棒」との出逢いを経て、一つの目的へと導かれる・・・。あとは、ターゲット自身がどれほど、「伝説の戦士」を受け継ぐ者として自覚出来るか、だ・・・それよりも、GG(ジーツー)の様子はどうか?」
謎の男「今の処は特に何も・・・」
博士「そうか、それなら大した心配は無さそうだな。ただ、事態は一刻を争う。速やかに『Team Enzinoh』の集結を望む。もはや、私と吼太郎の二人だけで、奴等を食い止めるには限界があるんでな・・・」
謎の男「御意。連博士の御心、大変心得ております。」
その日の放課後・・・
翔太「ねぇ、吼太郎くん。途中まで一緒に帰ろうよ?」吼太郎「ああ、別にいいよ・・・」またしても感情の籠っていない生返事で返す吼太郎。
翔太(なんだろうな、この子・・・何かよく分からないけど、何もかも楽しくなさそうだなぁ・・・何か絡みづらいなあ・・・)
翔太「あのさ!吼太郎くんの趣味は何かな?僕カードゲームとか得意なんだけど・・・」
吼太郎「趣味・・・?趣味は・・・趣味なんて特にない、強いて言うなら人間観察。」
翔太(えぇーーーーーーーっ!?吼太郎くん、趣味がめちゃくちゃ渋すぎだよ?!てか、そんな趣味を持つ小学校いないよ?)
吼太郎「・・・あ。」急に足を止める吼太郎
それに釣られて翔太も歩みを止める
翔太「え、えっ!?急にどうしたの、吼太郎くん?」
吼太郎「・・・あれ・・・。」と、吼太郎の指差す方向に目を向ける翔太。
そこには、見るからにおもちゃの謎の車と謎のユニットが、道端に落ちていた
翔太「うわあ、これから何だろうね吼太郎くん?!」
吼太郎「炎神キャストと炎神ソウルだよ・・・」
翔太「えっ、何?」
急に真剣に、人が変わったように吼太郎が喋り出す
吼太郎「そうか、君が例のターゲット、『Team Enzinoh』の一人か。こうしてスピードルと出会えたのも運命、かも知れないね。翔太くん、君の命が危険に曝される時、スピードルのボディにその炎神ソウルを挿入するんだ。そうすればたちまち、炎神スピードルに命が宿り、君の身の安全を護ってくれるだろう・・・」
翔太「えっ、それは一体どういうことなの、吼太郎くん・・・?」
吼太郎「今は何も解らなくてもいい。ただ、運命の歯車は既に動き出した。君が知ろうとも知らずとも、君はその運命には抗えない。いや、君だけじゃない。・・・僕もまた、その一人さ。」
翔太「吼太郎くん、何か知っているの?君は何を知っているの!?」
吼太郎「・・・それは・・・」吼太郎はしばらく沈黙した後に、再び口を開いた。そしていつもの彼に戻った。
吼太郎「・・・今日は少しばかりお喋りが過ぎたみたいだ。じゃあ僕の家はこの辺りだから、この辺でまた明日。」そう言い、吼太郎は自宅らしき豪邸の方角に去って行った。
〜その日の晩〜
翔太は放課後の帰り道に偶然拾った、不思議な形の自動車のおもちゃを慎重かつ丁寧に磨いていた。
翔太「よし、まあこんなものかな?やっぱり綺麗に磨いてやると気持ちいいな〜よし、こっちも磨いてやるか。」
そう言い、翔太はソウル?の方も綺麗に磨いた。
翔太(それにしても吼太郎くんが先刻言った言葉の意味は何だったんだろう・・・?彼は何もかも知っていたような口振りだったけど・・・)
放課後に吼太郎の言っていた言葉が翔太の心の中に引っ掛かり、モヤモヤする翔太。・・・だがいくら翔太が考え込んでも、その答えは出ない・・・翔太はそんな複雑な考え事をする内にいつしか眠りこけてしまった。
そして夜中の出来事である・・・
?「・・・太・・・おい翔太・・・起きてくれ、お前に大事な話があるんだ・・・おい翔太!!」
寝惚け頭にいきなり、普段聞き慣れない謎の声が聴こえてくる
翔太は眠い眼を擦りながら、声の主を探した・・・
翔太「・・・う、ん・・・?」翔太が辺りを見回すとどうやら声の主が、放課後に拾った不思議な形の自動車のようだ
?「よお翔太。お前が俺の新しい相棒のようだな?」
翔太「ええぇぇっ、おもちゃが喋ったああぁぁ!?」
「わ、バカ、大きな声を出すな!!」
翔太「あ、ごめんなさい・・・」
?「まずは自己紹介が先だな。俺は炎神スピードル。先代ゴーオンジャーの『ゴーオンレッド』の相棒だった炎神だ。昨夜は俺を見つけて、拾ってくれてありがとな、相棒♪」
翔太「い、いや、見つけたのは僕じゃなくて吼太郎くんの方・・・」
スピードル「細かい話は気にすんなって♪でな、翔太。ここから大事な話なんだ・・・実は俺たち炎神は炎神ワールドって世界の住人で、ここ、ヒューマンワールドへは悪の組織・『ガイアーク』を追い、退治する為にやってきたんだ。以前は先代ゴーオンジャーと共闘してなんとかやっつけたんだけど、また最近になって奴らの方に不穏な動きが見受けられて、俺たちは再びこの『ヒューマンワールド』に足を踏み入れたって訳だ。」
翔太「ちょっと待って、そのヒューマンワールドって何?」
スピードル「それはだな、翔太達の住む世界の事さ。地球には様々なパラレルワールド(並行世界)があって、それぞれの住む世界を区別する為に、そう読んでるんだ。」
翔太「そうなんだ・・・それで、その不穏な動きって?」
スピードル「俺たち炎神は、 ゴーオンジャーは・・・一度は奴らの壊滅に成功した。だが奴らは完全には滅びてはいなかった・・・残党がいたんだ、ガイアークの。そのガイアークの残党どもが『ゴーストガイアーク』を名乗り、このヒューマンワールドに暗黒と混沌をもたらすために再びやってきたんだ。そして俺たちは奴らの悪巧みを阻止するべく、こうしてヒューマンワールドに潜り込み日夜、相棒を探しながら闘っている。なあ翔太、お前の力、俺に貸してくれないか?」
翔太「別にいいけど・・・力を貸すって、具体的にどうすれば良いのさ?僕はゴーオンジャーでもないから、闘えないよ?」
スピードル「おいおい、俺たちが小学生に闘いを強いるほど、極悪人に見えるか?そんなこと微塵も願っちゃいねーよ。俺はただ、俺の炎神キャストとソウルはいつも、翔太に肌身離さず持っていて欲しいんだ。そしてゴーストガイアーク、通称GG(ジーツー)出現の折りには俺のキャストに俺のソウルを挿入して欲しいってだけの話さ。」
翔太「そうするとどうなるの?」
スピードル「俺達はヒューマンワールドでは、元の姿を長時間維持できない。だから普段はこんな小さな体と心に別れて、エネルギーの消費コストを最小限に押さえてるんだ。そして、人間の相棒が俺達のキャスト(ボディ)にソウル(心)を挿入(スロットイン)することで、俺達は短時間ながら本来の姿に戻れるんだ。そしてこのヒューマンワールドの各地には、俺達『Team Enzinoh』以外の仲間もいる。何とか他の仲間たちとも合流して、今度こそ奴らを壊滅させるんだ!」
翔太「うん、君たちの事情は大体解ったよ。ところで・・・その仲間って何人いるの?今何処にいるの?」
スピードル「仲間は炎神だけでも13人、その中には俺の息子もいる。居場所まではさすがに判らない。炎神ワールドまでは一緒だったけど、ヒューマンワールドの入り口入ってから皆、散り散りになって迷子になっちまった。まあ、ヒューマンワールドの入り口までは無事にたどり着いたし、この世界の何処かにはあいつらもいるだろ♪」
翔太「そんな悠長な・・・て言うかスピードル、君に子どもなんかいるの?」
スピードル「ああ、俺と同じで熱いソウルを持った炎神だ!ちょっとひねくれてるけどな♪・・・まあそう言うことだから相棒、これからよろしく頼むぜ?」
翔太「解ったよ、こちらこそよろしく、スピードル。それからスピードル、今から僕の友達になってくれるかい?」
スピードル「友達?そんな必要ないだろ?俺達はもう、友達よりも絆の堅い、相棒になったんだぜ?家族も同然さ♪」
翔太「うん!!」
斯くして、一人の少年と一体の炎神は出会った。
これから迫り来るゴーストガイアークを倒すことを誓って
〜to be continue?〜