眠らないカラダ(3/3 R18)

さっきまでオレの口の中にあった指が、奥の窄まりの周りをくるくると撫でる。
たっぷりと纏った唾液をそこに馴染ませるように。
そしてその指が、ゆっくりと中に潜り込んできた。
「うっ」
違和感に思わず呻き声が漏れる。
「痛ェ?」
気遣わしげに尋ねる田島に、首を横に振って答えた。
痛くは、ない。変な感じはするけれど。
でも田島がちゃんとキモチよくしてくれるって、オレは知ってるから。
身体の力を抜くようにふぅっと息を吐くと、それに合わせて田島は更に奥まで指を進める。
「…ぁあっ!」
その指がある場所を掠めたとき、痺れるような快感がオレを襲った。
思わず上げてしまった声は、さっきとは違う、まるで自分の声だなんて信じられないくらいに、甘くて切ない声だ。
田島の指はぐりぐりとソコを押し潰し、オレはあられもない声を上げ喘ぎ続けるほかなくて。
「んあぁっ、ああぁ……!」
「さかえぐち……」
背後で、田島の熱い声がする。
その身体がオレの背中に覆い被さり、空いた手でオレの顔を掴むとぐるりと後ろを向かされて、噛み付くように口付けられた。
「ふ、んんっ、ぅん……」
嬌声はくぐもったものに変わり、オレは口の中を荒らすように動き回る田島の舌を追いかけて、自分の舌を絡ませる。
苦しい体勢だけれど、だからこそ互いの本能に火をつける。
欲しい、もっと欲しいと。

田島の唇が離れていくと同時に、その指も引き抜かれる。
いつのまにか埋め込まれた指が増えていたようだけど、キスの熱に浮かされていて全然気づかなかった。
そこまで我を失っていたのかと、今更ながらに赤面する。
「挿れるぞ」
その言い方がなんだかぶっきらぼうに聞こえたのは、田島も余裕がないからなんだろうか。
指で充分解された場所に熱い塊が押し当てられて、オレの身体に一瞬の緊張が走る。
だけどそれは本当に一瞬で、直後にはいつもそうするように、すっと大きく息を吸い、それを長くゆっくり吐き出した。
それを見計らい、田島がぐいっと押し入ってくる。
苦しさに息が詰まりそうになるけれど、それを何とか堪えて、続けて息を吐き続ける。
そして最後の一息を吐き出したとき、オレは田島を全て受け入れた。
肉壁を押し広げる田島が、オレの中で脈打つ田島が、熱い。
その熱に、意識も身体も、全てが融け落ちてしまいそう。
「栄口、」
田島がオレの名前を呼び、両手で強く腰を掴む。
オレはそれで田島の意図するところを察し、こくりと一つ頷いた。
直後、ずんっ、と強く突き上げられて、オレは悲鳴のような声を上げた。
そのまま繰り返される抽送に、オレの口からは押し出されるように熱い息と嬌声が止め処なく零れ落ちる。
自分自身の吐息が曇らせた銀色のステンレスに、ぼんやりと映し出されたオレの顔は快感に歪んでいて、その自分のものとは思えないほど卑猥な表情が直視出来ず、オレはぎゅうっと目を閉じた。
「あぁ…んっ、やっ、あぁッ!」
前立腺を擦りながら速度を増していく抽送は、確実にオレを快楽の大きな渦に呑み込んでいく。
理性は熱に狂わされ、意識は白く遠くなっていき、シンクについた両手と両脚ががくがくと震え、腰を掴む田島の手に支えられて何とか立っているような状態で。

もう、何も考えられない。
田島の熱さ、それ以外には。

「たじまっ、も…だめっ、もう……っ!」
田島から与えられる熱と快楽を、これ以上抑え切れなくて。
オレは叫ぶようにその名を呼びながら、田島に限界を訴える。
「たじま、たじまぁ…っ!」
「ん、いいよ…イって……っ!」
苦しげに田島はそう答え、オレの中を一際強く最奥まで、ぐんっと突き上げた。
その瞬間、ドクンと強く脈打って、オレの中で全てが弾け飛ぶ。
「ああぁぁ……ッ!」
吐き出す瞬間に、一際大きい快楽の波に襲われて、オレはそれに抗うことなく自分の身と意識を預ける。
真っ白な意識の中で、田島の低い呻き声を聞き、自分の中に注ぎ込まれる熱い液体を感じた。


ずるりと引き抜かれて、オレは体中の力が抜け、まるで糸の切れた操り人形みたいにその場に崩れ落ちる。
「うお、大丈夫か!?」
咄嗟に差し出された田島の腕に縋りついて、オレと田島は二人でその場にへたり込んだ。
大丈夫なわけ、ない。
こんな場所で、あんな体勢で、狂ったみたいによがって……、熱が醒めて理性を取り戻すにつれて、恥ずかしさが募っていく。
変態みたいじゃん、こんなの。田島の顔が、見れない。
オレこれからここで洗い物するたびに、今のこと思い出すんじゃないかな……なんて嫌な想像をしてしまった。
「ごめんな、栄口」
気遣わしげな田島の声、そしてその手がオレの短い髪に触れる。
「なんかガマンできなくなっちってさ……栄口に無理させた。ほんとゴメンな」
優しくあやすようにオレの頭を撫でながら、田島はそう言葉を続けた。
……くっそ、こんな風に優しくされたら……、怒るに怒れない。
恥ずかしいやら歯がゆいやらで、真っ赤になってしまった顔を田島から隠すように、オレは俯く。
そんなオレに、田島は予想外の言葉を投げかけた。
「だからさ、次はちゃんとベッド行こう、な?」
「……は?」
田島の言葉をオレの思考回路が処理しきれず、思わず顔を上げた。
視界に入った田島の表情、どこか余裕のあるその微笑みは、男らしくて……カッコよくて。
こんな状況なのに、ドキッとしてしまう自分が、悔しい。
「それなら、栄口もツラくねーしさ」
……つか田島、まだヤる気かよ!?
ふざけんなと抗議しようとした口は、田島の唇に塞がれる。
抵抗する間もなく舌が入り込んできて、オレの舌の先端を擽るように弄ぶと、今度はぬるりと絡み付いてくる。
それだけで、さっき醒めたはずの熱がぶり返してくる。……どうしようもない、オレの身体。
「な、栄口、ちゃんと優しくすっからさ」
唇は触れ合ったまま、熱っぽい声でそう囁かれたら、オレはもう頷くしかなかった。

田島と二人きりの夜は、長い。
オレたちのカラダは、まだまだ眠らない。







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2010.6.8 企画『タジサ会』様提出、2010.12.12 サイト再録
テーマは「台所でエロ」(笑)
イベントのアフターで出た話題がもとで始まった企画でした。
とても楽しい企画をどうもありがとうございました!




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