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第十二夜(走者:紅葉)




「ひ、酷い…っ」


雲雀達が戦ってるさなか、綱吉達は街へと到着した。そこで見たものは家は焼け落ち、ほとんどが火の海と化していた…街、だったもの。


「穏やかじゃねぇな…」

「…っ」


綱吉は口を手で覆い、横にいた武は顔を歪めた。隼人は鼻効くのか、焼けた臭いに腕で鼻を覆っていた。


「相手も相当力をつけたみたいですね…人々の憎しみや悲しみをたくさん吸い込んで…」


付喪神になりそこなってしまった、妖の憎しみに人々の憎しみ、悲しみが共鳴し、妖は強くなっていった。すべては人が起こしてしまった罪。


「でも…こんなの…関係のない人々を巻き込むなんて…っ」


綱吉はギュッと拳を握った。自分が狙いなのに…。


「っ!?…骸様、あれ!」


髑髏が指差す方向、そこには妖達がこちらに向かってきていた。まるで、ここを通さないとでも言うように。


「まだあんなに…」

「兵を自分の守りに付かせるのは心得ていたようですね」


そう言って、スッと綱吉を庇うように前に出る骸と髑髏。


「ここは私達に任せて、若旦那様は行って?」

「え?でも、二人でなんて!あんなにいるんだぞ!せめて、隼人か武も」

「何を言ってるんです?そうなれば、貴方の護衛が手薄になるでしょう?それに、その二人では足手まといになりますから」


嫌みっぽく微笑む骸に、隼人はキレぎみだが、呆れた顔をする綱吉。一つため息をつき、骸と髑髏の手をそれぞれ取り、両手で包み込んだ。


「……絶対無茶はするなよ…絶対、皆で家に帰るんだからな!」

「若旦那様……うん!」

「仕方ありませんね…」


綱吉のまっすぐな瞳に二人は素直に頷いた。そして、忠誠とでも言うように、髑髏は左、骸は右の頬にそれぞれキスをした。


「んなっ!?///」

「行ってきます…」

「ほら、さっさと行きなさい」


真っ赤になって頬を押さえる綱吉を余所に、二人は歩き出す。そんな二人を心配そうに見つめていた綱吉だが、ギュッと唇を噛み締め街の中へと足を踏み出した。


「行こう!隼人、武!」

「はい!」

「おぅ!」














三人が街に入って行くのを確認し、二人は妖達に向き直る。

「骸様、ホントに若旦那様が好きですね?」

「おや、キミもでしょう?髑髏」

「もちろんです」


クスクス笑いながら話す髑髏と骸。闇にいた自分達への一筋の光…それが綱吉の存在だった。二人は瞳を合わせ深く頷く。


「さて、若旦那に注意されてしまいましたからね、さっさと片付けてしまいましょうか」

「はい、骸様」


スッと骸は右手を前に、髑髏は薙刀を構えた。


「僕達の妖術…甘く見てはいけませんよ?と、言っても見えないでしょうけどね」


クスリと笑う骸……その手から光が放たれた。














「骸達…大丈夫かな…」

「大丈夫っすよ!中身はアホで変態でも、上級の妖怪っすからね!」


綱吉は苦笑いしながらも、そうだねと頷く。あの二人を信じて自分は前に進まなければ。
街の中に入れば、さらに炎は増し、建物も崩れ悲惨な状態だった。周りを見渡しながら歩いていると、一つの建物から人が現れた。


「誰かいるぜ!」

「あれは…っ」


咄嗟に綱吉の前に立ち塞がる武と隼人。綱吉はその人を見る。長身の金髪…綱吉はハッとして、二人の間を摺り抜け近寄る。


「兄さん!ディーノ兄さん!」

「…っ!?ツナ!待て!!!」


山本の声にえっ?と振り向いた瞬間、綱吉とディーノを囲むように炎が立ち上がった。


「10代目ーーーー!!!!!!」

第十一夜(走者:みん)

 


「なに…!?」

「あれは…鼬…?」


空を飛び交う、鼬。魂を狩る、小さな妖。外に出て綱吉達がすぐに見つけたのはそれだった。


「あっ!」

「………なんてこと…!」


白蘭と雲雀が目を見開く。
揺らめき煌めく、赤い炎。

それは徐々に強まり、人々や家屋を包み、命を奪っていく。地獄絵図、だ。


「ツナ!あっちの方向って…!」

「!!兄さんを助けに行かなきゃ…!」


武に言われ綱吉は走りだそうとする。
しかし、その腕を奈々が掴み止めた。


「……お待ちなさい」










渡されたのは、異国製の指輪だった。
綱吉だけではなく、武や隼人、雲雀、骸。動ける妖にもそれは渡された。

了平は屏風なので行けるはずはなく。


「………必ず生きて、私達のもとに帰ってらっしゃい。…綱吉」

「…………うん!」


綱吉は力強く頷き、その指輪を嵌めて走り出す。隼人と武は綱吉について行き、骸や髑髏はその援護を。雲雀は魂を人体に戻すべく、鼬をひとりで相手する。


「………雲雀さん…大丈夫かな」

「あいつなら大丈夫っすよ!」


元の犬神の姿に戻った隼人が、自分の背に乗り不安げに呟く綱吉にそう言った。


「ヒバリなら何とかするって」


そう付け足す武も白沢の姿に戻っている。綱吉は小さな声で返事をし、炎が揺らめく地上を見下ろした。
























ひとつ、ひとつ。

またひとつ、ひとつ、と。


闇に堕ちていく命を掬う。

こぼれ落ちていくとわかっていて。


自分のような迷子を作らぬように。


悔しくも。

それが流れ逝くのを見送ると知って。




「……ちっ。これだから盗人みたいな鼬は嫌いなんだ。…ちょこまかと…」


いい加減、煩わしい。
雲雀は呟き、扇子を振るう。放たれたのは渦を巻く風と針。

風が鼬を巻き上げ、次々に針に突き刺していく。魂だけは傷つけぬよう。


「……気が滅入るね…」


魂の盗人は、未だ数多く。

雲雀は溜め息をついた。生前はじゃじゃ馬娘でも、今では化狐の神社に仕える、戦力に欠けた鈴の憑喪神に過ぎない。


「……言っておくけど…。僕は気が長い方ではないんだ。昔からね」


酷く鬱陶しそうに、雲雀は扇子を構えた。背後に、鎌の尾を持つ鼬がいることに気が付かないまま――――。


「ひとりは狡いよ、ひっばーりチャン♪」


一瞬にして炎が氷つく。
背後の鼬も勿論のこと、だ。

ここまでの力を持つ妖はそう多くはない。雲雀は空を仰いだ。


「白蘭…貴様…」

「そんな怖い顔しないで、ひばりチャン?僕は手伝いに来ただけだよ」

「胡散臭いんだよその顔が」


どうせ初代の為にしか動いてないくせに。雲雀は知っていた。すべてを。


「綱吉を代わりにしか思ってないくせに」

「今はちゃんと綱吉くんとして見てるよ」

「あの方がいるからだろ。狡いヤツだな」


―――でも、心優しい若旦那様は、きっと許すんだろうね。


「僕は許さないからね。……キミは初代といちゃこらしてればいいさ」

「いちゃこら!それどこの言葉?異国語?気に入っちゃった!」

「黙れ不埒者。…僕に傷1つ付けさせたら容赦なく貴様から殺す」

「ありゃ、それは気をつけなきゃ。…ま、彼以外に殺されるつもりはないけどね」


そうお互いに悪態を吐き微笑みを浮かべ、2人は地を蹴り出した。







 

第十夜(走者:紅葉)




「あの〜…二人は恋人ど「違う」


綱吉の質問を遮って初代はきっぱり答えた。


「そんな照れなくても〜♪」

「誰がだ!!!」


ぶーと拗ねる白蘭を余所にほんのり顔の赤い初代。


「(でも、言葉はきついけど…たまに見せる優しい笑顔……気のせいかなぁ?)」


今だ言い争ってる二人を見つつ首を傾げる綱吉。そんな綱吉の横にいた雲雀がはぁとため息をつき口を開いた。


「で、何か用事じゃなかったの?」


その言葉に初代は言い争いを止め、綱吉達に向き直った。白蘭は今だに初代に膝枕をしてもらっているが。それもお構い無しにコホンと一つ咳ばらいをして、ゆっくり話始めた。


「私が来たのは、綱吉…お前を向こうに連れていくためだ」

『!?』


初代の言葉に綱吉以外全員が目を見開く。


「向こ、う?」

「向こうとは私や皮衣、神が存在する領域だ」


意味がわからなかったのを察した初代が説明する。初代の言葉に綱吉は理解した。


「ま、さか…」

「っ…待ってください!初代!綱吉はまだっ」


奈々は慌てて初代に言い寄る。そう、向こうに行くということはすなわち、死を意味するのだ。他の妖達も必死になって引き止めようとしていた。


「そうですよ!10代目はまだ生きているのです!」

「あぁ!ツナが危なくなったら俺達が守る!!」

「だが、こないだの件はどう説明する?一つ間違えれば綱吉が死んでいた」

「「っ!?」」


初代の言葉に二人は俯いてしまう。


「いつ何時、何があるかわからぬ。これからも被害は広がるばかりだ。ならば、早く手をうったほうがいいと思う」


初代はチラリと綱吉を見る。当の本人はただ、ぎゅっと拳をにぎりしめてジッと畳を見つめていた。


「……でも、若旦那様の意見も聞いてくれるんでしょ?」

「もちろん聞くつもりだ」


ジッと初代は綱吉を見据える。そして、妖達も綱吉を見つめる。みなが不安げに見つめているなか、綱吉はゆっくり顔を上げ、初代と目を合わせた。


「俺は……ひ弱でダメダメで、みんなに迷惑ばっかりかけて…ホントは俺は、生まれてきちゃいけないと思ってた…なんで生まれてきたのかなって…」


ポツリと話し始める綱吉。皆真剣に耳を傾けた。


「でも、おばあさまから貰ったこの命…きっと無駄じゃないと思うんです。きっとまだ何か出来ることがある……俺はあいつを止めたい…俺が現況なら自分で解決したいんです!」

「だが、今の奴はかなり強暴化している…死ぬかもしれぬぞ?」

「その時はその時です。でもここで貴方と行ったら、逃げ出すみたいで嫌なんです」


まっすぐに綱吉は初代を見据える。それを見た初代が口を開きかけた。 
 
 
ードーン!


突然響いた爆発音。全員がそちらのほうを向く。そこには赤い光。遠くの街から煙が上がり、火の手があがっていた。

第九夜(走者:みん)

 


「俺に何があるというの」


綱吉が2人に訊いたのは、単刀直入にそれだけだった。訊かれた隼人と武は、ほんの少し難しい顔をする。


「犯人の狙いは俺だよね。でも、妖絡みで何の理由もなく襲われるなんて考えられないんだ。…俺には2人がいるから」


何があっても自分を守ってくれた。それに2人は妖といえど神の名を冠する存在だ。―――その2人が傍にいて、どこの無知が綱吉を襲うというのだろう。


「……もう一度、訊くね?…俺に…こんなひ弱な俺に何があるというの」


2人は黙ったまま。けれど、先ほどより、表情が強張っているのがわかった。


「………それは…」

「わたしから話すわ。ごめんね、武くん、隼人くん」


凛とした声。振り向くとそこには、綱吉の母親である奈々がいた。


「しかし奈々様…!」


隼人が止めに入るが、奈々は首を横に振って退かない。武が諦めろと言うように、隼人の肩に手を沿えた。


「母さん…」

「あのね、ツナ…」






ちょっとだけ、昔話をしましょうか。
 

 




やけに冷える夜だと、雲雀は思った。


「いいの?雲雀くん」

「………あの人が決めたことだ。…若旦那様も、事実を知りたがっているし」

「うん…」


その冷える原因かもしれない白蘭は、雲雀の隣で静かに顔を伏せる。


当時の沢田家の娘は、身ごもった子供を、産後すぐに亡くしてしまった。

子供とともに希望をなくした娘に、二度と子供は宿らなかった。

見かねた娘の母が、命を賭して娘に希望を与えた。―――代価は重かった。


「そりゃあそうさ。僕だって、奈々ちゃんから聞いたもん。……あの子は…反魂香で生き返った此処の一子だって」


奈々の母の命を汲んだかのように…宿った命は――とても弱々しくも、生まれてきた喜びに泣き声をあげてくれた。






「私の母は、妖だったの…。…そうして、母自身が神のお側で尽くす代わりに…私にアナタを授けてくれた。母の名は皮衣」


命を贖う――反魂香で。

皮衣は今、その代価として神の側に。


「俺は死んでしまった一子の生まれ変わりで…その反魂香の香りが今も…」

「だから壊れてしまった墨壷が……キミを狙ったのですね。自分の命を贖う為に」

「あら、骸くん」

「お久しゅうございます。…奈々様」
 

突然ふわりと現れた骸に、綱吉は瞳を大きくする。否、むしろ―――


「母さんてば、妖が…!?」

「えぇ…。私も、半分だけ妖の血を引いているから。隠しててごめんなさい?」

「びっくりした…。じゃあ…」

「えぇ…。…雲雀くんも白蘭くんも…千種くんに犬くん、髑髏ちゃん」




私には、ずーっと、みんな、見えてたわ。



微笑む母親に、これほどまで驚いた事などないだろう。綱吉は今まで妖たちの存在を隠していた自分に疲れて、肩を落とした。


「はぁあ〜…」

「妖たちはみんな知っていたしね」

「うえぇ!?」


綱吉が武と隼人に目を向けると、武はごめんな〜と言い、隼人に至っては土下座までして謝っている。


「……見えてないのは」

「父さんだけよ」





「ぶぇっっくし!!…んー…?奈々やツナが噂でもしてるのか…?可愛いヤツらめー!父さんは今から帰るぞー!!」



















―――地面が割れたような、そんな衝撃。
綱吉達はもちろん、雲雀や白蘭にもそれが何なのかわかった。



「白蘭!」

「うん…。来ちゃったよ…。閻魔より恐ろしい初代沢田家頭首様が…!」





綱吉の目の前に現れたのは―――まるで、もう1人の綱吉自身。


「……あ………だ、誰…?」


綱吉が訊くと、その人物はゆっくりと薄い唇を開いた。綱吉はその動きにさえ、気品を感じる。


「………白沢…犬神」

「「はっ」」


呼びかけると、2人は畳に膝をついた。
奈々も座り方を正す。


「………おのれらは一体何をしていたんだ役立たず共めが!!何故に綱吉が私の存在を知らぬ!!あれほど伝えておけと申したはずだこの阿呆共!!」

「「申し訳ありませんでしたぁああ!!」」


こんな2人は見たことがない。
綱吉がぽけっとしていると、鈴の音を鳴らして、雲雀と白蘭が部屋に入ってきた。


「やはり貴方でしたか…初代」

「鈴ノ君か。久しいな」

「相変わらず綺麗だね、初代」

「黙れ白蘭。かっ消すぞ」


どこか聞いたことのある言葉を言い、綱吉そっくりのその人物は腰を降ろす。


「若旦那様。…此方は見越の入道様。初代沢田家頭首だった御方だよ」

「貴方が…」

「恭弥が暴走したときに巻き込んじゃって…若かったし、それでいて魂が純粋なままだったから神の名を冠したの」


綱吉は雲雀の紹介を聞いて、もう一度だけ初代をまじまじと見つめた。


「僕もお世話になってね」

「貴様が埋められる時に一度と…向こうで五度会ったな、鈴ノ君」

「っ、その…度は…まぁ…大変なご迷惑をおかけしまして…」


とてもやりにくそうに言葉を紡ぐ雲雀。


「いいなぁ…。僕なんか向こうで二回しか会ったことないよ」


白蘭はそう言いつつ、何気に初代の膝に頭を乗せている。所謂膝枕だ。


「五月蝿い。たった二回会っただけでこの私に恋文を寄越すなど…。そんな無礼者に会いたいなどと思うか。殺すぞ」


悪態をつきながらも、ゴロゴロ甘えてくる白蘭を見て微笑む突然の来客者・初代に、綱吉は首を傾げた。



 

第八夜(走者:紅葉)




犯人は確定した。だけど、やっぱり気になることが一つ。


「何が…目的なんだろう?」

「やはり恨み…しかないのでは?」


ポツリと呟いた綱吉の言葉に隼人が答える。付喪神になれなかった恨み。それが人を殺し続けている理由。だが、なら墨壷を持った人が殺されるのは分かる。でも違う人だった。綱吉が疑問に思っていると、近くにいた千種がカチャリと眼鏡を上げボソリと話始めた。


「そういえば調べてるうちに操られていた人達が必ず口にする言葉があったんだ…」

「言葉?」

「あれかぴょん?『匂いがする…』ってやつ?」

「匂い?なんかの香りのこと?」

「…調べてみる価値はあると思う」


髑髏の言葉に皆が頷いた。まだ続けたいがもうそろそろ家光が探しに来そうな時間ということで、会議は終了。武と隼人以外の妖達は散り散りに解散していった。




部屋に戻った綱吉は座ってまた悩んでいた。


「まだ悩んでるのか?ツナ」

「うん…なんかひっかかるんだよなぁ」

「大丈夫っすよ!きっとすぐわかります!」


隼人の言葉にコクリと頷く綱吉。そして机においてある風車を手にとった。フワッと微かに花の香りがした。


「これ香がついてたんだ…まだ微かに香っ……香り?」


風車の匂いを嗅いでいた綱吉は突然ハッとして顔をあげた。そして今までの事件の様子を思い出す。


“笹川家の頭領…持っていたのは綱吉が落とした風車”

“籠屋に乗っていた客…お客さんが持っていたのは綱吉が忘れた薬入れ”


そこまで思い出して綱吉は気がついてしまった。全員自分の持ち物を持っていたのだ。となると考えられるのは一つ。


「狙いは…お、れ?」


綱吉の言葉に隼人と武は顔を見合わせる。だが、綱吉のあっ!っと言う言葉に二人は慌てて綱吉を
見た。


「どうした、ツナ?」

「10代目?」

「大変…正一が危ない!」 
 
そう、綱吉が思い出したのは正一。先程お守りを…自分が持っていたものを持たせていた。慌てて立ち上がる綱吉だったが、それと同時にバタバタと走る音が聞こえた。顔をだせば家光が慌てた顔をして向かってきていた。


「大変だ、ツナ!!!正一くんが刺された!!!!!!」

「えっ!?」


遅かった…綱吉は慌てて正一の元に向かった。





「正一!!!」


綱吉が部屋の扉を開けると医者と家族に囲まれ、倒れている正一がいた。お腹を刺され苦しそうに息をしていた。
医者や家族が出ていき、綱吉と正一の二人だけになった。綱吉は近寄り正一の手を握る。


「ごめん…ごめん、俺のせいで…っ」

「綱吉くんのせいじゃないよ、それに…お兄さんに届けられなくてごめん」

「ううん…っ」


首を振り、ぽろぽろ涙を流す綱吉に正一はフッと微笑み、涙を拭ってやった。


「大丈夫…よくわからないけど、刀が急所から外れたんだ…一瞬寒くなってさ」

「さ、むく…?(あ…白蘭?)」


気配がしてフッと顔をあげれば、今は妖の姿で見えないだろう、白蘭が窓辺に座っていた。それに気づいた白蘭も唇に人差し指を当てしーっと笑ってみせた。


「でも…不思議だよね…」


声がして慌てて顔を正一に戻す。

「金目のものには一切目もくれず君のお守りを奪っていったんだ。でも、すぐに離してしまったんだけど…匂いがするってさ」

「……そう、なんだ…」


綱吉は俯いてぎゅっと拳を握る。完璧に確信した。犯人の狙いは完璧に自分だと。
それから正一にお大事にと告げ、綱吉は家に戻った。

−二人にいろいろと聞き出さなくては…−
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