エンドウ豆に乗った女王様








「食べすぎだろ…」


ややぽっこり出てしまったお腹を撫でながら、銀時が言う。神楽は途中まで剥がされた服をもたもたと脱ぎすてながら、今度はズボンだというように足をあげた。それを丁寧にまた取りあげられながら、銀時の呆れた視線とやさしい手にむっつりと拗ねる。


「銀ちゃんが食べてもいいって言ったアル」
「…いや、別に食べるなとは言わねーよ……お前には」
「じゃあいいアル!」


たしかに、和洋中のバイキングにはしゃいで、すべてのメニューを三周したのは良くなかったかもしれない。だが、美味しいものを目の前にして控えろというほうが神楽には無理だ。
赤ん坊のような姿勢でベッドの上に坐りこむ少女の、そのパンツ一枚の姿が思わずオムツをはいた肉づきのいい幼児と重なって、銀時は笑い出しそうになるのを堪えるのに、かつて無い努力を使った。別にやる気をそがれて怒っているのではない。ある種の色気より、こういった幼稚なファシズムに傾倒している自分を立派な変態だと思う。
ぽっこり出たお腹を相変わらずやさしく撫でながら、銀時はそっと神楽を転がし、オムツを代えてしまうみたいに先に下着にまで手を出した。


「あ、そーだ!」


手を止めた男に、少女がふふんと微笑う。
こういう笑い方をする時の神楽にあまりいい思い出はなかったが…







「妊娠したと思えばいいネ」



……───。



「そうヨ、それがいいネ。 妊娠したと思えば、銀ちゃんだって悪い気しないダロ?」



……。



「誰の子にしよっかナ〜♪」
「…オイぃぃぃッ」


ようやくツッコめた銀時に、冗談ヨ、とばかりに笑う。
とんでもない設定を言ったばかりか、世のほとんどの男にとって恐怖にもなりえる台詞をペロリと吐いた神楽に、銀時は、今度こそ本気で呆れた。その手の内容を、男が毛嫌いする理由などわかってもいないのだ。
これからする行為を前にして、その冗談も普通ならぜったい禁句レベルである。
けれど、それさえ悪い気がしない自分が一番怖ろしい…。
お腹をポコポコたたいて、「妊娠したアル〜」 なんて言いだす神楽に、思わずやめろと手でかばって…


「あんまりたたくんじゃねーよ」


(お腹の子にさわるだろ)


第三者が見ていれば激しくツッコミを入れそうな台詞を吐いてしまった。









fin

07/15 18:02
[銀魂]




・・・・


-エムブロ-