ピンクグレープフルーツ、破廉恥







「っ……だからっ! できないって言ってるアル!」


できないできない無理ネっ、この非常識っ、死ねコノヤロー! どんどん罵詈雑言になってくる口の悪い小娘を引き連れて、銀時は部屋の扉を閉めた。
ふぅ…、とひと安心。いつもより殊さら丁寧に小さな体を抱きあげて、神楽もぶつぶつ言いながらおとなしくなる。
言いなりになるのは嫌だけど、ここまでくればもう……仕方がないのかもしれない……。
いつからこんなに素直になってしまったんだろう…、いやな諦めだなと思いながらも、かじりついた首から上の男の横顔を見つめる。 そっとベッドにおろされた。
おろされながらもそのまま添い寝のかたちで横抱きにされて、はぁー…と、今度はこっちから溜息。
まだまだ成長途中の胸に顔を寄せられて、しばらくそこで湿った息の温かさ感じつづける。別に何もしてこない。…と、片方の掌がお腹の上をさするように置かれ、この男がいったい何をしたいのかわからなくなった。


「……映画に行きたかったアル」


『エイリアンvsやくざ』見たかったアル。 行くはずだった今日のデートをほのめかせば──


「…今度な」


そんな言葉が返ってくる。


「……四越デパートで、 赤い靴、買ってくれるって言ったアル」
「……今度な」


なんとなく笑われてる気分。


「……タルトのお店に連れてってくれるって言ったアル」
「……今度な」
「今度っていつネ!」


思わずムキーっと返せば、


「安静にしてろよ」


…っ 


「ヒトを病気みたいに言うんじゃないネっ」


ひとつの枕にうまく頭をふたつのせてきて、相変わらずさするようにされるお腹の上───子宮の奥がジクンと呻いた。
まだ慣れない痛みに顔をしかめると、もう一度、「安静にしてろ」、そんな病人扱い…。
はっきりいってウザい。はっきりいってめんどい。
だいたい、『アレ』がきたから出来ないって言ったのに、ふたりしてホテルのベッドに寝転がってただボーっとしてるなんて、ものすごく変だ。 ものすごく──…


「変なことはしねーよ…」


・・・。


「……当たり前アル」
「…してもいいけど、今日はしねー」
「してもよくないアル。絶対よくないアル」
「だからしねーって」
「やーヨ、銀ちゃんのことだからわかんないネ」
「信用ねーのな、俺」
「信用ねーヨ」


間近の唇が、触れるか触れないかの位置でささやくようにかわされた会話。
思わず二人して吹きだして。顔を見合わせたままとうとう鼻の先まで触れあわせる。
普段なら最初っからこの甘さはこっ恥ずかしいのに、今日は変にアンニュイだから気にならない。カラダ自体ほんとうに気怠いし…。さっき買ってもらった、痛み止めを飲んだから余計そうなのかも…。
相変わらず優しく撫でられるお腹の上の大きな手に、自分の手を重ねた。


「……ホントに、……できなくてもいーアルか?」
「………ああ」


その間はなんだと言いたいけれど、、、
とりあえず怠惰な蛇のようにまったりするのも、実のところ嫌いじゃないのだ。


「──仕方ないアルな〜、今日は銀ちゃんの手抜きデートに付き合ってやるネ」


憎まれ口をたたいた唇に、銀時の苦笑いがそっと被さった。









fin




more
07/30 17:36
[銀魂]




・・・・


-エムブロ-