「ただいま。 いい子にしてたか?」
「……お帰りなさいヨ」


シングルサイズのベッドの上でのろのろと身を起こした『愛兎』に微笑みかけると、銀八は傍らのチェストに手にした袋を置いた。彼が背広の上着を脱ぎ、近くのソファに放り投げようとしたのを神楽はいつもの癖で手を伸ばし、「ちょうだい」とたたもうとするが、ベッドから降りようとした彼女を銀八は制する。
銀八が部屋を出て行ったその間も、ベッドの上でペタンと座った状態で彼女は素直に膝の上に手を置いている。それは、丁度おりこうさんなペットが、『お座り』をしているようだった。
……少し、寝汗に湿った白い肌を覆っているのは、昨晩銀八が着ていたシャツだけ。ぷらぷらと裾は余り、肩の縫い目の位置が肘にまで来ているそれは、部屋の隅の屑入れに丸めて放り込まれているチャイナドレスの代わりだった。
淡いペイルピンクに桜の花が精巧に刺繍された美しい絹地は、以前、彼が買い与えたものだったが、一度でもこの部屋を逃げ出そうとした故にこのような末路を辿ることとなってしまった。
そしてドレスを失った彼女に、彼は相応しいアクセサリーを新たに与えている。


「悪い、待たせたな。 食事にしよう」


トレイの上に用意してきた飲み物を乗せた銀八が、少女の隣に腰を下ろした。ごそごそと袋をあさると、野菜と一緒に炒めた海鮮やきそばを皿に盛り付ける。…今日は中華料理らしい。何でもそつなくこなすようにみえて不器用な彼は、ぽろぽろと野菜の切れ端をそこらに落としてしまっているが、神楽はそれを代わろうとはせずにじっと見ているだけ。しっかりと嵌まった手枷がそれを許さないからだ。


「口を開けて」


銀八がこちらを向く。その動きに簡素なベッドのスプリングが彼女の方にも動きを伝え、か細い身体を揺らした。それと共にじゃらり、と重たげな音。
ベッドの柱に止められた頑強な鎖は、白い首をがっちりと食んでいる首輪へと繋げられていた。


「ほら…」


フォークにまとめた麺を、開かれた小さな口へと押し込む。彼にとっての一口は彼女にとってはやや大きかったが、神楽は雛鳥のように従順にその摂取を受け入れた。
彼女が咀嚼している間に、銀八もまた自らの口へと食べ物を運ぶ。だがその意識は常に神楽の方を向いていて、口の中のものが無くなると、すぐにまた与えるという状態だ。時折ウーロン茶を含ませて、零れた雫を甲斐甲斐しく指で拭ってやる。
程なくして嚥下する間隔が開き、少女はフォークを差し出しても口を開かなくなった。


「…もういいのか?」


頷く神楽の頭を撫でて、彼は自分の食事に専念する。彼女はその背にぴたりと寄り添い、シャツの布地に頬を擦りつけた。



聞きたいことは沢山ある。


捜索は続いてる?
仕事に支障はないのかな?
皆に怪しまれたりしてない?
私は何時までこうしていればいいネ?



それでも、彼女は一言も発せず彼の傍らに控えていた。無駄吠えをするような頭の悪い犬では彼をまた失望させてしまう。
鎖が少し開いた胸元に落ちて、その冷たさに神楽が身を竦めた。彼女の指の太さほどもある鉄の輪が互いに噛み合ってできたそれは、丁度この寝室と備え付けの洗面室を行き来出来る程度の余裕は持っている。当然彼女の力ごときでは手枷がなかったとしてもどうにかなる代物ではない。
元よりどうにかしようという気もないのだが。


神楽が目覚めたときには、その細い首にはしっかりと皮と金属で作られた首輪がはまっていた。彼はベッドに鎖を括りつけ、手枷をつけるとそのまま彼女を置いて仕事に行ってしまった。説明などは、勿論ない。
いわゆる『監禁』、というやつだ。
元より支配欲や独占欲が常人より強い傾向にある彼だけに、このような暴挙に出たとしても、驚きはしたものの恐怖はなかった。
それよりも昨晩、散々責め立てられて憔悴しきっていたとはいえ、首輪と手枷を嵌めたまま一日中眠ってしまった己の神経の図太さの方が、恐ろしいといえる。


食事を終えた銀八は後片付けもそこそこに、彼女の首輪から鎖を外して軽々と抱き上げた。はだけた裾から露になった下半身は、昨晩の彼の欲の残滓が乾き、こびりついた惨々たる有様となっている。


「気持ち悪かったよな。ごめんな。朝は時間がなくて、風呂に入れてやれなかったから」


子供か何かのように神楽を腕に抱くと、飄々とした様子で浴室へと向かう。普段力仕事などろくにしないくせに、教師としてはガタいのいい身体は危なげなく彼女を運んでいた。
お湯を満たしたバスタブに彼女を下ろすと、彼は腕をまくる。上着は脱いでいるものの、くたびれたスラックスは履いたまま。しかし躊躇なくソープを湯船に流し入れると泡立て始めた。
見る見るうちに湯気に曇った室内にシャボン玉が溢れる。


「腕を出して」


跳ねるお湯が服を濡らすのも気にせず、彼がスポンジにたっぷりと泡をつけて、手枷をつけたままの神楽の細腕を擦った。シャツを脱がせる際に、手枷は一度外して再度つけている。くすぐったさと弾ける泡に目を細める彼女の胸元へと手を動かし、小振りで形の良い乳房に、まるでケーキのデコレーションのように泡を塗りつける。


「…んっ」
「こら、暴れんな」


脇の下や腹を弄る指に彼女が思わず身体を強張らせるのに、銀八が笑った。口ではそう言いながらも、くすぐったがる神楽を面白がっているように長い指であちこちを弄る。


「…わぷっ」
「あ」


ばしゃり、と一際大きな水音と共に銀八の胸元にびっちょりと飛沫がかかった。そのままの姿勢で固まっている彼女に彼は口の端を吊り上げて見せる。


「悪いやつだ」
「ひぁ…」


肩を掴んでバスタブの中へと押し倒された神楽は、腕を戒められている所為で態勢を整えることもできず、ほっそりした脚を上げたあられもない姿を晒す。銀八は彼女の脚を開かせると、狭いバスタブの中のその間へと腰を下ろした。

これだけ濡れてしまえば一緒だ、と笑って抱きすくめるようにした神楽の身体を撫でる。その手が次第に胸元や臍を通過し、足の付け根へと移動するに従い、彼女の身を震わせるのは、くすぐったさではなく愉悦に変わっていった。


「ゃ…ん…っ」


押し開いた花弁の間にソープにぬるつく指を差し入れると、中にわだかまるものを掻き出すように蠢かせる。濁った湯が満たされているとはいえ、皓々とした明りの元で容赦なく広げられる秘部に、神楽は顔を伏せてしまった。
服を着たままバスタブに浸かっている銀八が、膝を彼女の身体の下に入れて持ち上げる。泡にまみれ、濡れそぼった淡い桜色の茂みに指を這わせると、タイルの床に転がっていた何かを拾い上げた。
彼が手にしたものを見て、神楽は目を丸くする。


「手入れは飼い主の務めだからな」
「あ、でも…」


後ずさろうとする彼女の脚を捕らえて、銀八が意地悪な微笑を浮かべた。右手に握られているのは普段彼の顔にあたっている剃刀。そのひやりとした感触と緊張に彼女は身体を固くする。


「動くなよ。俺が不器用なのは知ってるだろう」


観念してこくこくと頷く彼女に苦笑いし、銀八はクリームを塗りつけたそこにそっと剃刀の刃を当てた。


「ぁ…ッ」


さり、という軽い感触と共に剃り落とされていく桜色──頭髪と同じくらい薄く柔らかなそれが、少量、白い泡の中に沈みこんでいく。意識を集中している所為で鋭敏になった肌は、撫でられているだけに近いその行為にも震え、神楽は声を漏らした。
もともと無毛に近いとはいえ、瞼をぎゅっと閉じて首をすくめる彼女の秘所が次第に晒されていく。丸みを帯びた少女の身体にちぐはぐなそこは酷く卑猥に見えて、神楽が薄目を開けては耳朶を赤らめ再び眼を瞑った。


「可愛らしいな。子供みたいだ」


くつくつと笑う銀八がお湯をかけてクリームや泡を洗い流す。


「―─中はもう子供じゃないけど」
「んん……っ」


埋め込まれた指が花弁を玩ぶ淫猥な光景を遮るものはなく、少し赤らんだ秘部は湯以外の液体に濡れていた。溢れた蜜を泡立てるようにそこをかき混ぜ、銀八は指先を膣の奥へと挿し入れる。


「ぁ、ん、あぁっ」


ぱしゃ、と手枷を嵌めたままの両の腕が水面に落ちて音を立てた。抜き挿しを繰り返す彼の指をソープに濡れた肉襞が締め付ける。


「ぅ…っ、ん、く!」


引き抜いた指の代わりに銀八がその猛りを突き入れた。膝の上に乗せた身体を揺すると、自らの腕で支えることができない神楽は仰け反るようにバスタブに背を預ける。開かれた脚の間に割り込むように、突き立つ屹立が秘裂を蹂躙する様に銀八は唇を嘗めた。


「…こりゃいい眺めだ」


彼が身体を動かすたびにバスタブは揺れ、中に満たされた湯は小波を起こす。嵐の海に翻弄される小船のように華奢な肢体が傾いでは、彼の生む律動に鮮やかに反応を示した。


「あぅ…っ」


細い腰がびくびくと引き攣る。内に収めたそれの質量に耐えかねて、無理な体勢のままに腰を浮かそうとしては崩れゆくように身を落とした。


「ひ…ぁ、ん…!」


銀八の大きな手が撓むそこを鷲掴み、荒々しく動かす。激しい上下の動きに乳房が揺れて、立ち上がった先端を彼の指が爪弾いた。


「あ、あっ、ゃ、あぁっ!」


嬌声が浴室内に反響する。一際大きな飛沫が上がり、神楽の身体が跳ねた。


「は…ぁ、あ…」
「ふ―」


呼吸を整え、銀八が彼女を抱き上げた。泡の混じった湯が肌を滑って滴り落ち、肉のあわいから引き抜かれた逸物に少し遅れて白濁がとろりと零れる。


「……ぁ」


水を吸ってずしりと纏わりつく服を脱ぎ捨て彼は浴室を後にした。彼女の身体をバスタオルでぬぐい、自らはさっと身体を拭いたあと全裸で歩いていく。タオルに包んだ神楽を抱きかかえて寝室に戻ると、彼女の首輪に元通り鎖を繋いだ。
湿った髪がシーツを濡らすのも構わずに、銀八はベッドに身を横たえる。投げ出された腕を枕にした彼女の頭を、広い掌が慈しむように撫でた。


「おやすみ、神楽」
「――おやすみなさい」











fin





何となく監禁モノが書きたくなって…orz
しかし、もっと誰か文才のある方、お願いですから銀神で書いてくれないかなぁ。萌えを補充したい。




05/21 18:08
[銀魂]




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