薔薇色のフクロウと青猫の世界







神楽の唇は常に淡い薔薇色をしているのに、少しひんやりとしていた。
夕映えの桜の花を溶かしたような髪は、光に当たって冷たい艶を放っている。外はうだるような暑さだというのに、この娘の肌は冷えたミルクのように白く、みずみずしい。
夏にそぐわないようでいて、冬のそれとも違う、けれどどこか白魔なアロマが漂う、乳美な雰囲気が常に抜けない。
餓鬼だ餓鬼だと思っていたその乳臭さでさえ、この仔どもの妙なスパスムを思わせた。


その、熱を通していないかのような滑らかな陶器を思わせる肌は、今はしっとりと汗ばんでいる。


花弁を開いてその内側の紋様を知るように、篭った花の芳香を嗅ぐように、神楽は様々な面を銀時に晒して魅了する。



声が、喉が、ひりつく…





自分のモノになれば、不安なんてなくなると思っていた。


カタチよく実りはじめた胸に顔をよせ、銀時は神楽に気づかれないように、そっと息を吐く。
世間的には発育の途中で、健全な象徴そのもののような少女だが、彼にとって、そこは甘く不吉な、どこまでも惑溺に満ちた場所だった。
もう少し前だったなら、無邪気に抱きついてこられたのは自分のほうだった。腰に回した腕に身体を預け、ぎゅっとひっついてくるのが、何よりも贅沢だったのを覚えている。
その仔どもの瞳に篭められている光の存在を、銀時などの何を気に入ったかは知らないが、少女は興味以上の視線で彼を見詰めてみせる。それを煩わしいと思うよりも先に、これが他の誰かのモノになるのは厭だと思ってしまったのだ。
自分だけのモノにしたいのだと、いつしか告げたくてしようがなくなった。




「もう、暑いヨ!」


その言葉とともに腕をふり払われ、銀時はその場で膝立ちになったまま下を向いた。
きっと、神楽は興味のあるうちは銀時と同じ場所に居て、後はそれとは違う場所に居る。
暑いからと一緒に避難した薄暗い物置きの床で、すでに退屈を貪っていた神楽の身体は外に向かい始めていた。
引き戸を開けようとしたのを捕まえて、まだこの薄暗い閉ざされた部屋の中に、神楽を蔵していたかった。
銀時は哀しいような、耐え難いような、愛に殉じたものを見たいという気持ちも覚えて、日当たりのよい窓際へ向かった少女の戻りを待った。





薔薇色のフクロウ青猫の世界











fin


時系列ががが…



07/20 19:38
[銀魂]




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