ヒヤシンス姫







神楽は幼い時から、何かをじっと視ているような時、不機嫌だというのではないが、どこかわけのわからないむっとしたようなものが感じられる子供だった。
神楽自身、自分の気分をもてあつかっていよいよ不機嫌になるのだが、その拗ねるような様子は大きくなったいま、いよいよ籠もった、湿り気のあるものになって、それは重い量のあるエロティシズムに通じている。そうして、その蒸しだされるものが銀時を酷く魅惑するのだ。   
我儘いっぱいに不機嫌を撒きちらす神楽が、その我儘を知っていてやっているのは明かだが、どうもそこにはもう一つはっきりしないものがあると、銀時は思うのだった。

何よりも、銀時自身、神楽がそうなっている時の可哀らしさに魅せられて、そこに溺れ込んでいるので、銀時は神楽をそういう神楽のままで眺め、愛情を傾けている状態になっている。
銀時にとって、神楽のそんな様子を眺めていることは甘美な蜜の歓びでもあった。


今日も神楽は相変わらず、むっつりと押し黙り、その眼は怒っているように見えなくもない。
でもその妙にむくれた可哀らしさと、投げ出されたふてぶてしい受け身にたじろぐことなく、銀時の肉慾も躊躇うことはなかった。
自分を直視することにはもう慣れた。


だから…


いつもじっと、こっちのなすことやること見ている大きな眼。自分からは何もしない。それはこの手が、最初から全部してやりたがっているのを知っているからだろうかと、勝手に都合よく解釈している。


指の先が、可愛らしい飾りボタンに触れた。


上から順にゆっくりと…もったいなげに。あるいは早急に外す時もあるが、幾度となく繰り返してきた行為に飽きることはなかった。
このふてぶてしい獣の仔が、自分の手で明らかになっていくのを、ぶっちゃけ、視るのがやめられないわけだ。
日頃のうすっぺらい服の上からでもころんと主張しはじめた──芸術品のように成長してきている膨らみも、陰影さえ彫刻的なほど白すぎる魔の膚も、薄紅色の髪がこぼれる頼りなげな肩も…


ひとつ、ひとつ、露にしていくのがたまらないなんて――─。


剥ぎとったものをすべて畳のほうに追いやった後は、上から下まで視線をじっくりと滑らせていた。


『へんたい』


正気のうちにそんな言葉も浮かんだが、神楽がとうとう居心地悪そうに目を伏せる、その表情にまでゾクゾクするからお手上げだと、自分自身に白旗を上げる。
手を伸ばし、素肌の肩にあらためて触れると、そこがぴくりと揺れ動いた。
何度カラダを重ねても、この最初の一歩には常にためらいがあるらしい。
その稚さが愛しい反面、堪えがたい嗜慾も湧き起こる。


神楽が自分を隠すようにしていた腕を強く捉えて、ゆっくりと引き剥がし、びくっと顔をあげさせた。
その青い瞳を食い入るようにみつめて。
手首を握り締めたまま、徐々に唇を近づけていく。


最初は微かに震えをおびたその唇に。
それから下へ降りて、咽喉に、鎖骨に、その可愛い胸元に――─

耳元で溜息のようなものが零されたのを聞きながら、外した手で強く神楽を抱きしめた。
それでも宙に浮いた形になった小さな手は、なかなかこの背を掴んでこない。


なぁ、そろそろ覚悟を決めて


また全部教えてくれよ。







「……今日は、立ったまま気持ちよくしてやろうか?」


そんな囁きを舌先にのせて、耳朶を軽く舐めた瞬間、か細い腕がようやく首に齧りついてきた───。



大丈夫、今日もめいっぱい可愛がってやるよ。
腰が抜けるまで気持ちいいことしてあげる。










fin




裏にかかりっきりなので、時系列無視できる短文を更新しておきます。



more
02/19 23:58
[銀魂]




・・・・


-エムブロ-