信じていても傷つくんだよ。
傷ついた痛みは信じることとはまた別。
「どうして、報われなきゃいけないの?」
銀ちゃんしかいらないのに。
わからない、と返された瞳の奥をどれだけ見つめても、自分には一生納得できないものだと思った。
できない──というよりは、したくないといったほうが正しいのか。沖田は目の前でうつくしく浮遊する泡の玉をぼんやりと追った。七色の泡越しに顔色ひとつかえない少女が、またひとつ、つまらなそうに小さな泡をつくりあげる。
どこまでも怖いくらいに透き通ったむきだしの無垢──。
空高くあがっていくシャボン玉のように、少女もこのまま掻き消えてしまいそうだと思った。
──銀ちゃんしかいらないのに
それは逆にいえば、他はなんにもいらないのだということ。
この少女の中では世界は銀色ただひとつなのだ。
それを失くせば生きていけない───。
幼くしてたったひとつのモノに出会ってしまった者の覚悟。
───壊れそうな無垢なきみへ。
いっさいの無駄を省いた、色も匂いもぬくもりさえも感じさせない、人形のように無機質で冷たいその表情に、沖田は特有の性的な美しさを感じていた。
それは彼の目を不思議な冷酷さで満たしている。
fin
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