今日、越えがたい哲学の地平







歩道に出ると、神楽は魔法にかけられたように立ちどまる。
秋の太陽のもと、黄金が点在するこの江戸の一郭は、神楽の心を締めつけ、長い散歩に誘うように控えめな美しさを見せている。


神楽がぶらついているところから見ると、江戸はまるで広い黄色のリボンのようだった。
平穏なそれぞれの地区の小さな街路は、木々を道しるべとしている。
神楽が愛着を覚えるのはこの江戸であり、中心のメガロポリスではない。
前世紀の終わり頃に誕生したらしいこの江戸、ここで暮らす人々のささやかな生活、曲がったり行き止まりだったりする小さな路地で、近所の子と遊んだ、神楽の少女時代の思い出───。
黄昏時になると、周囲の林がこっそりとしのび込み、香りを発散する。


上方の空は青く、陽を浴び、金色に輝く雲が、いくつも大きな冠のようにずっと下におりてきて、周囲の山々の輪の上にとまる。それは美しく魅惑的だ。



神楽は明日から、彼にとっては存在しない空のもとで生きる。
彼女はもう彼だけを追い求めない。
彼はもう彼女を縛り付けない。
愛と少しの孤独。
彼のことを思い出すと、神楽の心には絶望も苦しみも目覚めない。
彼女は自由。


彼女は自由。





今日、越えがたい哲学の地平で










fin




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02/04 23:30
[銀魂]




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-エムブロ-