恋いうる







うつくしいキスだった。


まさかあの神楽と、こんな夢のような神聖さで唇と唇を寄せ合う瞬間など、考えてもいなかった。
いや…考えていないというのは嘘。それ自体は何度も何度も、せつないほど望んでいたのだ。
銀時の人生にとって初めてといえるほどの純粋なこのキスは、身体の芯から震えあがるほどの慶びが、鼓動の早さが、痛みをともなってせり上がってくる。
今まで経験したことのない胸の苦しみと、甘酸っぱい火照り。
寄せた唇のしわをひとつ、またひとつ、数え上げるようなこの瞬間────。
それがどれほど特別で、貴いことか。
こんなキスが自分にも出来たのだと思うと少し不思議な感じもする。
やわらかな余韻をひきずりながら、ほとんど感覚の麻痺した唇を名残惜しげに離せば…。忘れていた呼吸が埋まるように耳の奥に心臓の音を肥大させた。
吐息がふるえる。
長い桃色のまつげの震えがゆっくりと持ち上がっていく瞬間を見守る。
その一瞬、一瞬を、息を飲んで見つめている。
うるんだ青い瞳のうつくしさにまた眩暈がした。
もう一度引き寄せられるように近づけた唇──…。
長い睫毛の羽ばたきが頬をかすめる。
寄せ合う瞬間、どうしようもなく溢れ出してしまった。



『あいしてる、神楽』








fin
啄んで、押しつけて。
呼吸さえ惜しんで口付ける。





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09/20 14:10
[銀魂]




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