人工楽園の渉猟者たち







山吹色。あるいは赤茶色。その色彩の美しさに目を見張る。
まるで漆を塗ったような紅や、金箔を思わせる濃淡が、強いマチエールを重ねている。
無作為といっていいような秋の絢爛にもかかわらず、少し立ちどまってこの風景を見ると、空気全体が醗酵するような印象があった。
そばに黒い枝や白い幹が伸びている。黄金色の黄葉に向かって、道がゆるやかにカーヴをしながら続いていくのに…──その先は見えない。



「寄るか?」



お互い立ちどまったままの公園の入口。
けれど、見つめるだけで首をふったシナの娘に高杉はうなずく。親指で作ったキザな誘いはゆるりと仕舞った。
似合わないことをするもんじゃないなと、彼は嗤った。
たまたまこの場所で、たまたまこの娘に、たまたま鉢合わせただけなのだから。本来ならお互い気づかぬフリをして通り過ぎるだけの間柄 (それも後でチクられるかもしれないが)。
一瞬、強くふいた強風と、死にゆく秋の美しさに少し囚われただけだった。


「じゃあな、お嬢さん」


黙っててくれよ、と去り際に嗤いかける。
その時、ささやくような声がざらりと背筋を撫ぜた。


…───確かに、紅葉した樹々の美しさと同時に、その向こうにある浄土のような世界が存在しているようにも感じられた。たとえばあの道を歩いていくと、その先のもうひとつ向こう側の世界に入っていくようにも───。




『……おまえとは、極楽すぎネ 』




上空には緑がかったグレーの空が、静かに力強く睨下の紅葉の色彩を生かしている。




人工楽園の渉猟者たち










fin


10/03 18:26
[銀魂]




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-エムブロ-