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折原臨也と平和島静雄の関係

門田京平続き



注意!

平和島サン偽物
イザイザちょろ
シズイザ色薄し







折原臨也と平和島静雄の関係










折原臨也が池袋から姿を消した。
新宿にも彼の形跡を残すモノは一つもない。


忽然と、折原臨也はその姿を消したのだ。
様々な火種を残して。
様々な思惑を残して。
様々な感情を残して。






そして折原臨也が消えたと気付く者は誰も居なかった。
一人を除いて。



其れは平和島静雄ではない。
彼も気付かなかった一人だった。


折原臨也が目の前から消える。そして、自分の周りには自分の暴力にも屈する事も怯える事もなくただ普通の人間の様に、友人の様に話しかける存在が増えた。
充実した毎日だった。



だから、静雄だけが特別に感じる事の出来る折原臨也の出現を理解するこの苛立つ様な香りに気付いても追い掛ける事はしなかった。
だから、会えなかったのかもしれない。


半年に近い長きに渡る期間を。
今、折原臨也の温もりを思い出すことは難しい。


どんな風に笑っていたのかすら自信がなくなっている。
だから平和島静雄は勢いで空港に来た足は止まっていた。行き先も空港のチケットも準備している。



空港に走っている途中、黒バイクの友人セルティが全てを静雄に持たせたものだった。
ダラーズのサイトを見て、新羅が用意しセルティが届ける。
礼を口にしながら、その時の静雄はあるのは怒りだった。

自分の標的が、自分の許しもなく盤上から降りた事への怒り。



その勢いで着たにもかかわらず、静雄は止まっていた。
空港を目の前にして。躊躇いがあった。
自分がなぜ、折原臨也を此れほどまで執着をしているのか。


未だ、門田京平に問われた言葉を口にする事は出来なかった。




だから、足が前に踏み出すことが出来なかった。
搭乗口は目の前にある。



時間が迫ると、アナウンスがかかる。
しかし、静雄の足は動かなかった。





突如、静雄の携帯に着信音が流れた。
登録されぬ、知らぬ番号だった。


「……はい」

『その様子じゃ、未だ飛行機には乗ってないみたいね』

「…誰だ、手前」

『そんな事は些細なことよ。…平和島静雄、一つ忠告してくわ』

「…あ?」

『折原臨也は本当に沖縄に居ると思う?』

「…どう言う事だ」

『自分で考えなさい。寧ろ、貴方の事だから今更追い掛ける意味なんてくだらない事を考えてるんでしょうけど』

「……手前…うぜぇ。目の前じゃなくてよかったな、ぶっ飛ばしてやりたい処だ」

『あら、これはタダの気まぐれからの忠告なのよ?』

「あ?」

『折原臨也ともあろうものが、情報に長けたアイツが、そう簡単に目撃情報を残すのかしら?』

「どういう…」

『後は自分で考えなさい』






着信は一方的に切れた。
静雄は考える。
言葉の意味を。苛立ちに携帯はヒビが入ってしまった。もう使えないだろう。



「……ああ、うぜぇ。こういう時、臨也をぶっ飛ばして…」



中途半端に与えられた情報に静雄は苛々と眉間に深く皺を寄せた。
片手で拳を作り、禁煙であるスペースに今更ながら更に苛立ちが増す。




静雄はただ冷静に成りきれぬ頭で考える。
確かにあった違和感を。
周りに協力され此処まで辿りつけたが、今一つの違和感がある。ダラーズに入っていた期間はそう長くはない。しかし、臨也が自分の目撃情報をそうやすやすと残したままにしておく可能性。

静雄は辿る。
今までのことを。折原臨也と共にした時間、彼の性格。自分の記憶する全てを。


不意の出来事だった。
一瞬風に乗り、鼻孔を刺激する香り。
忘れようにも忘れられない胸を締め付けるような香り。


静雄は焦がれた匂いに顔を上げた。



折原臨也が近くに居る。

それだけの直感を頼りに、静雄は走り出した。
躊躇いも、思考も、全て。今は感情に身を任せ、走り出していた。






「……いーざーやーぁあぁぁああぁぁ」







吠える様に静雄は叫ぶ。
周囲の人が驚いたように静雄を見る。
平日で通常よりも人は少なかっただろうが静雄には関係ない。
ただ、本能のままに走っていた




白いコートのフードを目深にかぶった男が一人、周囲の群衆に向かって走っていた。





「そこか。いーざーやーくーん」





静雄は待合用の椅子を取った。
床に接着されていた其れを無理やり引きはがし、男に向かって投げる。
自分の方を見ることもない白いコートを着た男に向かって。




周囲から様々な悲鳴が飛ぶ。
池袋では見慣れた光景であっても、空港では非現実に周りが逃げ惑う。コートの男も其れに紛れていたが、静雄にはいくら紛れても、その一点だけが輝く様に居場所を教えていた。

「こっちを向きやがれ、臨也!」



男は振り返る事はない、
ただ、走り続けていた。



逃亡


まさにこの一言にふさわしく、足を止める事はなく壁を登る勢いで。男は走る。
静雄は益々確信していた。この逃げる男が折原臨也であると。




静雄は近くにある電話ボックスを引きちぎる様に持ち上げると、男目掛けて投げつけた。
硝子が無残に割れる。



漸く、男の足が止まった。





「……シズちゃん」







振り返った白いコートの男は紛れもなく、折原臨也そのものだった。









――――――
リクエストにもあったこのシリーズ更新!
とのお言葉を受けて。
漸く出会った…。長かった、長かったようっ。シズちゃんと臨也さんは周りからはた迷惑な関係なんだろうなと…。寧ろウチのシズイザは周りが助けてくれなかったら進展しない。
電話の相手は波江さんです。彼女は臨也さんの嫌がらせしか考えておりません。あとはウジウジする上司がうざかったから…。


え、総受け?…一度書いたデータが飛んでただいまべっこべこに凹んでおります。もう少しお待ちを!







気づけんば10000hit。え、嘘じゃないですよね?…どどど、どうしましょう。まさかそんな夢みたいな大台がっ。あ。あああ。有難う御座います!
…皆様何かしてほしいことってあります?

薄れゆく愛は闇色(後2/2)











注意!
注意
シズ→→→←イザ
臨也さんいっぱい
臨也さん偽物警報
シズちゃん偽物注意報












薄れゆく愛は闇色(後2/2)







抱き締められたままの腕の中で、臨也は混乱していた。
さっきまで自分は夢の中に居た。
テーブルの上で。

何時もの白い自分と対峙している。
ただ、その相手が何時もの笑っているのとは異なり、酷く不機嫌そうな表情をしていた。




何時もの夢とは違っていた。
変革の意味する言葉は分からない。臨也は疑問符を浮かべながらも変わらぬ広がる皿の中で一皿だけが消えていた。



「……甘楽の皿がないんだ」

「へえ、君其れが食べたかったの?」

「別に、ただ何時もと違うからさ。君も、皿も」

「俺も?」

「そう、不機嫌そうだから…否、つまらなそう?」

「……そうだね、詰まらないよ。あの化け物はなんなんだろうな」

「確かにシズちゃんは化け物だよ。あれを食べないかとか言われてたら食当たりを起こしそうだよ」

「ハハ、それは確かにあるかもしれないな。けど、俺はあれが気に入らないよ。臨也がなんで其処まで気にするの?」

「嫌いだからだよ。だから消したいんだ」

「愛の反対は無関心なんだよ」

「知ってるよ。だから俺はそれに当て嵌まらない。あれは思う通りに動かない、なら邪魔をするなら消すしかないじゃないか」

「…本当に嫌いなの?」

「…何が言いたいんだよ」

「だって、君はあの化け物を愛しているんじゃないのかい」








呆気に取られる間に白い視界は黒に戻った。
目蓋を持ち上げた矢先広がったのは静雄の顔だった。自分が落ちているのだけは感覚だけで理解した。
しかし、何故自分は静雄に抱き締められているのか臨也には理解できなかった。



「ばっかやろ…」

「あー…ねえ、シズちゃん」

「黙れノミ蟲」

「いや、黙ったら分かんないじゃん」

「じゃあ、死ね」

「多分俺今君に命を握られてるんだけど」

「そうか、死ね」

「ちょ、痛い!痛いから!!」


抱き締めたまま顔を見る事は出来ないも何処か安堵した様子の静雄に益々理解できず臨也は困惑していた。
鉄格子を掴む手を離し、再度落ちても距離は然程ないビルの屋上に着地した。臨也の足が地面に付いた。しかし、臨也は未だ疑問に満ち溢れていた。
ただ、思考せぬとも周る口だけに感謝しながら軽口を交わしあう。
臨也の言葉に従い静雄は腕に力を込める。臨也の感覚を自分に刻む様に、覚えこませるように。

自分の言葉に従う様に腕に込められた力は圧迫感に思わず背中に回す腕を叩く。それでも腕の力は弱まらなかった。けして命を奪う様にこめられた力ではない。
ただ温かい腕と鼓動と静雄の体温。


全てが全て未知のものであり、臨也は自分の夢を思い出した。



好きでも、愛してるでもなく嫌いなのだと頭を振る。




「シズちゃーん、そろそろ離してくれないかな」

「…断る」

「意味が分からないよ。大体今日はなんだい?こんな抱き締めるなんてさ君らしくないよ。俺は情報屋の折原臨也なんだよ」

「知ってる」

「だから離してくれる?」

「…嫌だ」

「…だからシズちゃんは嫌いなんだよ。俺の理解の範疇を超えて、素知らぬ顔で荒らすんだから」

「それは手前の事だろうが。勝手に壇上に上がってきて、挙句の果て俺に断りもなくコロコロ変わりやがって…」

「ああ…この会話になって無いのがよく分かる文脈何なんだろう。…馬鹿?」

「…殺す」

「それにはまずこの手を離そうとか無い?」

「ねえ」




臨也はかれこれ何分間抱き締められているか分からない。
しかし、静雄の腕は力が弱まる事もない。距離はゼロ。



体温を今まで此れほど長く感じる事がない臨也は違和感が包む。
しかし、何故か突き放す事が出来なかった。それは余り突飛な事が続き思考力が低下しているからなのか分からない。
ただ、周囲は音もなく互いの音以外静寂を壊す者はなかった。







「意味が、分からないよ。なんでこんな事をするのか」

「るせぇ」

「…ねえ、シズちゃん。俺は最近奇妙な夢を見るんだ」

「…あ?」

「俺が何人も居る夢さ…そして俺を食べろと進める夢」

「とんだ悪夢だな」

「間違いないよ…おかげで寝不足」

「…ハッ、ざまあみやがれ」

「……けど、アイツが言ったんだよ」

「愛の反対は無関心だって」

「………」



静雄も言われた台詞であった。
目の前の折原臨也に。

しかし、それは折原臨也ではない。ただ分からない存在。臨也の皮をかぶった別物相手であった。静雄は黙って臨也の言葉を聞く。
抱き締めた身体はそのまま。傍に居るのは折原臨也である。自分が間違う事のない存在。だから、静雄は安堵していた。この存在は手放したくない。
手放せない。

ずっと守っていきたいと決めていた存在。
いくら言葉で悪態を吐いて誤魔化していたとしても今の自分の前から消える事は許さない。



「…だから、俺は…」

「………なんだよ」

「シズちゃんが嫌いだよ。嫌いで嫌いで嫌いで大嫌いでこの手で命を奪いたくて仕方無い」

「そうかよ…」

「……けど、君が俺の目の前から消えたら俺はどうすればいいんだろう」

「あ?」

「もう一人の俺が言った。あれは紛れもなく俺だ。自分で自分の中で設定した自分だ。けど、アイツは…言った。俺を食べろと…それは要は俺自身が死ぬって事なんだろうか」

「……許さねぇからな」

「ん?」

「手前は俺のもんなんだよ」

「は?」

「だから殺すのも俺だ。手前の命は俺のもんなんだよ。ひいては手前全部俺のもんなんだよ」

「意味が分からない」

「……いっつも鋭い癖しやがって…どうしてこういう時は鈍いんだよクソ馬鹿ノミ蟲」

「喧嘩売ってる?ねえ、そうだろ」

「だから、手前は今日今、この瞬間から俺のもんになったて言ってんだよ!」

「だからどういうことか聞いてんだよ!馬鹿シズちゃん」

「だから、好きだつーことだ!」

「………は?」




その告白は余りにも乱暴で。返答は余りにも間の抜けた返事だった。
抱き締めたまま、漸く見れた顔は酷く不機嫌そうな顔だった。
眉間に深い皺を寄せた静雄と目を大きく見開いた臨也。抱き締めたまま、怒鳴りつける様な告白。


「ちなみに返事は決まってるからな、YES以外受付ね―」

「いや、俺の意志無視?受け付けろよ」

「手前だって俺の事好きだろうが」

「…何その自信満々な言い方は…」

「決まってんだろ?だって手前…今の顔分かってんのかよ?」

「…?」

「真っ赤」

「…っ!」





今度こそ臨也は言葉を失った。
静雄に指摘された通り臨也は頬を赤く染めていた。それは耳にまで飛び火し全体が発火したように体温があがっていた。
抱き締めていたからこそ如実に感じる体温の上昇に静雄は笑みを零した。また、抱き締める、腕に力を込め顔を肩口に埋め片手を頭を撫でやり五感を使い臨也を感じていた。





「手前は俺のもんなんだから手前以外いらねーんだよ」







白い自分は矢張りおもしろくなさそうに背を向けて、臨也はそれから同じ夢を見る事はなかった。


――――――――
隠れた設定一杯あります。
臨也さん多重人格一歩手前。
他の人格臨也さんLOVE。シズちゃん死ね。


自分の設定で自分とは別物だと切り替えてやってるから無自覚です。
記憶はある時問ない時がある。
今回は他の人格がシズちゃんの臨也さんLOVEを気付き半ば暴走。

ああ…文才の無い自分が嫌…(凹
次は番外編鍋パーティー総受け!リク有難う御座います!
付きあいたてシズイザを邪魔しよう会設立です。




私信
何時も誤字指摘いただき有難う御座います!チェックはしているつもりなんですが…うう、タイピングミスを無くせるよう今後も精進していきます!

薄れゆく愛は闇色(後1/2)




薄れゆく愛は闇色(後1/2)








注意
シズ→→→←イザ
臨也さんいっぱい
臨也さん偽物警報
シズちゃん偽物注意報


以上が許せる方のみどうぞ















頭の中の声に同意した途端に、俺は頭痛に襲われた。同時に抗いがたい睡魔にも。
目の前に天敵がいるにも関わらず片手を額に当てた。


遠くで聞こえる声は何故か切羽詰まった声がした。
同時に視界に埋める金髪は臨也よりも切羽詰まった顔に他人事のように折原臨也は笑って意識を手放した。









「あーあ、シズちゃんってば本当にタイミングってのが読めてないんですからー」





崩れる様な身体を静雄が支えるよりも早く意識を失った筈の臨也から声が聞こえた。
普段喋るものよりも幾らか高い声。
まるで女の様な喋り方。


普段とは異なるものに静雄は眉間に皺を寄せた。
臨也は倒れる事無く堂々と静雄と対峙をする。倒れる身体を支えようと差し出した手は行く場を失い中途半端な体勢を取る。 何時もの人を小馬鹿にした笑みを携えて。其れは何時もの臨也の表情だった。しかし一つ違いがあるなら静雄に対する嫌悪の表情は無かった。
安全対策にと設置された手摺へ腰を降ろす。
既に老朽化が進んだ其れは体重を掛ければ壊れる危うさを持つ。しかし、臨也は気にせず腰を降ろす。

静雄は二度目の違和感に苛立ちを深くした。


「……誰だ、手前」

「だぁから、折原臨也に決まってるじゃないですかー。シズちゃんってば頭も可笑しくなったんですか?」

「俺の知ってる臨也は男だ。んな、カマみてぇな喋り方しねーんだよ」

「酷いですよー、怒っちゃいますよぷんぷんと」

「気色悪ぃ、臨也を出しやがれ」

「だーかーらー、シズちゃん頭悪い?ああ、知ってましたけどねー私が折原臨也ですよ」

「……臨也は何処だ」

「ああ、本当に嫌になりますね。そんなんだから私たちが出てきたのに」

「…あ?」

「ねえ、シズちゃん。君は化け物なんですよ、なのになんでそんな人間みたいな行動をしてるんですか?気持ち悪い。化け物は化け物らしくしてればいいんですよ、なのになんで此処に居て、なおかつ臨也君を追って来るんでしょうね。嫌いなんでしょう?憎いんでしょう?なら放っておけば良いじゃないですか。愛の反対は無関心なんですよ」




喋り続ける臨也に漸く嫌悪の色が浮かんだ。
理解できないものを見る目。
静雄は尚も黙ったままだった。
苛立ちに手摺に力を込める、足を揺らす。
耳障りな金属音が響いた。


静雄は苛立っていた、同時に混乱もしていた。
目の前の折原臨也の様で折原臨也ではない存在に。


「もう一回聴く、手前は誰だ」

「…………名前なんて大した拘りなんじゃないんだよ、シズちゃん」



一拍の沈黙に帰って来た言葉は臨也のものであるもやはり臨也のものではなかった。
先の女の口調を喋る臨也でもなく追い掛けている内の本物の臨也でもなく。今日最初で出会った臨也に似ていた。

「…手前は今日最初にあった奴だな」

「おや、分かるかい?俺達は結構似ていると思ったんだけど」

「…追い掛けていた臨也以外俺は臨也と認めねぇんだよ」

「…ねえ、甘楽も言ったけど其れはなぜ?」

「…あ?」

「言ったろ?愛の反対は無関心だ。なんで、嫌悪と執着を俺に見せる?嫌いと言いながら新宿に来る?」

「………」

「分からないよ。だから君が嫌いなんだ」



がしゃん、がしゃんと

足が鉄柵を叩く耳障りな音だけが響く。静雄は変わらず無音のままだった。


「君、会話する気がないなら帰ったら?」

「…俺が今、此処で話したいのは手前でもさっきのカマみたいなやつでもなく臨也なんだよ」

「だから、俺も臨也なんだよ」

「違う、手前は臨也じゃねぇ」

「……へーぇ、そんなこと言うんだ」

「なんだよ?」

「別に?臨也だろうがそうでなかろうが構わないんだよ。俺はね…だって、彼はもう選んだんだから」




目の前の臨也の言葉の意味が掴めず開いた口は音を発するよりも早く臨也は消えた。
消えたというのは語弊がある。目の前で突如居なくなったわけではない。
臨也は手を離しただけだった。
鉄柵から。



そして


身体を倒した。





重力に従い倒れる。






闇夜に呑まれるように。
一瞬の無重力が襲った。




「……あれ?」






静雄が一番求めた臨也の声が、鼓膜を震わせたと同時に静雄は走っていた。
思考もなく、ただ反射に近い行動で。鉄柵に手をつき落ちる臨也を見詰める。
其処にあるのは現状に理解出来ず呆然としている臨也が闇に呑まれていく様に下へと落ちていた。






臨也は廃ビルからまるで自分が自分を見ている様な錯覚とその隣で切羽詰まった表情で見る静雄に訳が分からずにいた。
ただ、その表情を見るのは今日で二度目である事を回らない思考で臨也は呑気に考えていた。




「臨也!」





身体は重力に従い落ちる。
落ちる
落ちる




背中は風を受け、夏場であっても冷気すら感じる事が出来た。
臨也はパルクールを習得している。
だから、この状況が絶体絶命とは思わなかった。



ただ、静雄の傍で自分が自分を見ている錯覚だけが行動を億劫にさせた。
夢で見る、真っ白な自分が笑いながら鉄柵に肘を乗せ頬杖をついてまるで詰まらないものを見る様に見ている。


自分の表情の自覚は無くても、それは出来た芝居を見る様な怠惰さがあった。



口を開くよりも早く、目の前に静雄が居た。








「臨也!」






静雄は決意も何もかもを吹き飛ばし、自分も廃ビルの屋上から身を投げたのだった。
何度も馬鹿の様に名前だけを呼び続ける静雄は臨也は困惑が強く、声が出ぬまま口を開くも明確な音が出る事はなかった。


ただ取られた手と抱きしめられた腕が心地良いと、ぼんやりとした頭で考えた。











もう一人の自分が、酷く不愉快そうに表情を歪めていた事を臨也は知らない。






静雄は臨也を抱き締め直し、急降下を続ける身体はめまぐるしく視界を変える。地上へとの距離が近くなると静雄も流石に焦燥が表情に浮かんだ。臨也は変わらずただ、呆然と静雄を見ていた。
細いとも取れる腰に腕をまわし視界端に捉える金属に反射的に手を伸ばし掴んだ。其れは落下防止に付けられた窓の格子だった。
二人分の重力に悲鳴を上げる金属を気にすることなく力を込める。
甲高い金属音を奏でながらも落下は止まった。




息をつく静雄と抱き締められたままの臨也が残った、





「………シズちゃん?」

「あ?」

「これは…どう言う事?」

「俺が知るかよ、好きな事言って勝手に落ちて行きやがって」

「落ちた?俺が?」

「じゃなきゃ誰が手前を落とすんだよ」

「状況的にシズちゃんかなと」

「落とすぞ手前」

「御免なさい、今だと俺骨折くらいするから」

「自業自得だ馬鹿野郎」







静雄は今、この傍にある体温に密かな幸福感を感じ、抱き締める力を強めた。
臨也は未だ分からぬと顔を顰めていた。










―――――――
後篇で終わらなかったぁぁぁぁぁ!!!!苦肉の策で1/2…終わるかな…

仮り物アイ




注意!
シズちゃん出て来ません
杏里と臨也さんが話しているだけ。
臨也さん化け物設定
シズ←イザ←罪歌


























仮り物アイ






二人の男女が無人の公園のベンチで隣に並んで座っていた。
一人は黒ずくめの男と、一人は制服に眼鏡の。胸の大きな少女だった。







人間が好き。
人間を愛してる。


けど、一人は嫌い。
あれは例外的に化け物だ。

ナイフを刺しても刺さらない。
スタンガンも銃もきかない。トラックに突っ込ませたって無理だった。



じゃあ、どう殺せばいいのか俺には分からない。
だから、あるモノにその存在を教えてみた。

何時でも何処にいてもその強い遺伝子を求めているそいつに。




「………困ったな」

「…何がですか」

「まさか罪歌がこんなにも彼を好きになるなんて思わなかったんだよ」

「貴方が最初に言い出したんじゃ…ないですか」

「そうだけどさー…だって罪歌は俺の言葉にあれほど素直に従うなんて思わないじゃないか」

「…罪歌にとって…貴方は全て…です」

「知ってるよ。だって、俺が罪歌の気持ちを分からないはずがない。今だって…君は呑まれそうなんだろ?」




罪歌が自分の中で歌い続ける。
何時もの人間を語る愛とは異なる、たった一人に向ける愛を。


愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる。
貴方が好き。大好き。その黒髪が私の刃で切れたらどれだけ幸福だろう。あの目が私を映したらそれだけで良いわ。あの身体に流れる紅い血が私を伝えば幸福で昇天してしまうかしら。血管を一つでも裂く事が出来れば私は他の人間を愛せないかもしれない。筋肉の細胞一つ切断出来ればもう他を裂きたくないの。だってその感触を消してしまうなんて許せないわ。ああ、愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる。その流血一つ逃したくないの。
愛してる愛してる…




「知ってて…それでも貴方は罪歌の元に来たんですね。今までずっと…来なかったのに」

「だって罪歌は俺だけしか見ないから。俺は人間すべてを愛しているんだよ。罪歌だって今は人間を愛している。罪歌の生みの親である"俺"が愛しているものを罪歌が愛さないなんて事は無いんだからさ」



臨也は何処からともなくナイフを取り出した。
何時も使う、袖に仕込んだ風に見せかけるナイフ。
其れがいくらへし折れようとも何本も用意周到に準備するみたいにポケットから取り出すナイフの一本。


しかし、臨也は普段ナイフなんて持ち合わせていない。
コートの何処を探しても見つかる事はない。臨也の身体自体にナイフがある。
別にナイフでは無くとも構わない。其れが日本刀であっても、刃と名のつくものであれば臨也は扱う事が出来る。
それは園原杏里が罪歌を身体から取り出す様に。
日本刀は規格外の大きさゆえに自然体を装う事の出来るナイフを好んで使っている。

罪歌。
人間を愛し、子をなす事を目的としている。
しかし、人間を愛しているものから例外が二つある。
一つは平和島静雄。愛して愛してやまない。しかし、愛し合うことの出来なかった存在。今でも焦がれる存在。
もう一つは折原臨也。罪歌という刀を生み出した本人。罪歌の子供たちは罪歌を母というのと同じように罪歌の親は臨也である。


人間を装い、人間愛を語る臨也。


「シズちゃんも俺が化け物って知ったらどうなるかなー」

「……どうって?」

「同族意識を持つかな?それとも本物の化け物だって俺を殺しにかかるかな」

「……分かりません」

「どっちでも良いんだけどね。だって俺はただ人間が愛しくてその中で例外であるシズちゃんが嫌いで仕方ないんだから」

「だから…罪歌と愛し合う、かもしれないと思ったんですか?」

「いや、思わなかった」

「……え?」




臨也の言葉に杏里は固まった。
最初に強い遺伝子という言葉で一人の存在を教えたのは臨也だった。罪歌に語りかける様に。



"強い人間と子をなしたいんだろう?なら、アイツが適任さ"




今でも、覚えている。
一人で下校している処を、音もなく現れた黒ずくめの男。一度だけ見覚えのある折原臨也だった。しかし、薄い印象故に杏里はすぐに思い出す事は無かった。ただ杏里を見る事無く、杏里の中にある罪歌に最初から語りかけてきた人間と思った者。
怪訝な表情を浮かべる杏里に臨也は初めてその存在に気付いた様に何度か瞬きを繰り返し、笑っていた。


「ああ、君は罪歌に呑まれた訳じゃないのか。なるほど…だからここ数年、彼女は大人しかった訳か」

「……貴方は…誰ですか」

「……ただの情報屋さ」


それだけ言うと臨也は去って行った。
ただ、罪歌だけがいつも以上に高らかと愛を語り、抑えるのに苦労したのを覚えている。




それから罪歌の言葉に突き動かされるまま公園に来ると臨也がベンチに座って待ってた。
黒幕と、切りつけた記憶も今でも新しく覚えている。
そんな事すら忘れたように臨也はただ親しげに笑っていた。罪歌の言葉と臨也の言葉で杏里はなんとなく臨也の存在を理解していた。しかし、それでも矢張り他人事のように受け止める自分がいた。




「俺が何度切りつけたと思ってるんだい?それでも何もならなかったんだから罪歌が切った処で愛し合うことなんて出来るとは思ってないよ」

「…なら、なんで教えたんですか」

「…俺がアイツを嫌いだから、罪歌も嫌いになるかと思ったから…実験?」


臨也はただ笑いながら立ちあがった。
罪歌を一度愛しげに見詰めては未練などもう無いと闇に消えていく。




「…ま、その実験は失敗におわったんだけどねー」



闇の中、臨也の声は軽く、どうでも良いという風に響いた。
杏里は臨也の消えた方向を眺めていた。
ずっと、その気配が消えるまで。



腕から罪歌を取り出し、臨也が座っていた場所に刃を突き立てる。
罪歌が温もりに至福を感じたいを煩く続け杏里を強制的に動かした。





「……貴方は。あの人を好きだから…罪歌も……」






額縁の外で、杏里はつぶやく。
その答えに返す者は、人間も、怪物も、誰も居なかった。













--------------
ちょっと他のシズイザを読み漁ってる愛の度の最中に臨也さんが罪歌設定で滾ってしまって思わず書いてしまった…。
後悔はしていない!

薄れゆく愛は闇色(中)





注意!
シズ→→→←イザ
仄かに総受け
臨也さん偽物警報


















薄れゆく愛は闇色(中)




折原臨也は分からなかった。
自分の記憶が正しければ池袋ではなく新宿にいたはずだ。否、それは些細な事かな。
ただ臨也は走っていた。

何故か後ろで走る平和島静雄の怒りを買っているらしい現状に困惑しながらも捕まれば命が終わる気がしていた。


「なーんで追って来るのかなー、シズちゃんは―」

「手前がさっき絡んできたからだろうがぁぁぁ」


「は、いや俺知らないしっ!もう新宿帰るから見逃してよ」

「誰がこんな絶好の機会逃すかよぉ」

「シズちゃん、顔、犯罪顔になってるからっ」

「元々こんな顔だっ、ノミ蟲野郎ぉぉぉ」





自分の記憶の欠落とかもうどうでも良いから誰かシズチャンから助けてくれ。
曲がった先にいたのは見慣れた来良の制服の姿だった。
俺が今一番の気に入った火種の一つ。


「やあ、帝人君。今日も充実した毎日を送ってるかい?」

「臨也さん…」

「今日は紀田君と一緒じゃないんだね」

「ハイ、正臣は今別行動で…」

「……おーい、帝人―。今平和島静雄が…ゲ」


臨也が出会ったのは竜ヶ峰帝人と紀田正臣。
帝人は瞳を輝かせている気がするのは気の所為かと臨也は顔を幽かに引きつかせる。
帝人の背後より遅れてやってきた正臣の心底嫌そうな声に臨也は本来の調子を取り戻し口元に笑みを浮かべ、親しげに手を振る。
そんな臨也を見て帝人は軽く臨也の服を引いた。





「やあ、紀田君素直な反応有難う」

「正臣…良い処に邪魔しに来たの?」

「み、帝人っ!?」

「済みません臨也さん、正臣が空気読めなくて…」

「ああ、彼大抵空気読めないもんね」

「そうなんです、だから折角臨也さんと話してるのを邪魔しに来て…」

「ん?」

「あ、御茶飲みに行きましょう。もっとゆっくり話しましょう」

「帝人、そ、それはナン」

「正臣うざい」

「………可笑しいな。帝人君はそんな性格だったっけ」

「ちょっと正臣にイラッと来ただけですから」

「俺のせいなの」

「うん」

「酷い…」

「……あー、とりあえず俺は此処で…」

「え?もう行くンすか」

「おや正臣君。君が引き止めてくれるのがとっても嬉しいんだけど君の話じゃシズちゃんがこの辺にいるんだろ?なら俺逃げなきゃ」

「平和島静雄なら…」

「あ」



会話は臨也の短い一言共に打ちきれた。
空気を裂くような音共に地面に看板がめり込んでいた。
三人とも言葉を失い、一番早くに動いたのは臨也だった。二人に背中を向けて走り出す。


「じゃ、まったねー」



颯爽と走り去る背中を見送りながら帝人は看板の飛来する方向を見た。
明らかに苛立った静雄が其処い居た。


猛スピードで走っている。
臨也を追っていたのは明白だった。帝人が瞬きすると同時に目の前を通りずぎる姿は陸上選手とは比較にならない様な速さであった。
しかし、帝人は其れについて驚愕はない。ただ、振り返った一瞬に静雄の目に確かにあったのはほの暗い妬む様なものと帝人は知っている、
臨也は知らない。



「あの二人ってさ―…」

「なんだよ?」

「なんであんなに素直じゃないんだろう」

「お前そんな趣味が…」

「正臣だってそうな癖に」




二人が去った背中を見ながら語った言葉を聞いてはいない。
知らぬが花、なのかもしれない。
臨也はパルクールを使い、ビルを昇っていた。窓の桟を伝い、着実に高度を上げビルからビルへと飛び移る。猫のような身のこなしで飛び移る姿に静雄は一度目を細めるも自分も腕力と身体能力を駆使して上へと上って行く。
時に壁に拳をめり込ませて取っ手を作り、時に爪先をコンクリートに穴を開け足場を作った。

臨也との距離を着実に詰めていく。途中、トラックに跳ねられそうになったりと臨也の画策した悪事が静雄の足を止め、苛立ちに力を増幅した.
増幅した苛立ちが更なる力を呼び起こし、破壊衝動が増していく。自分の中で手加減が次第に躊躇がなくなっていく。


「いーざーやぁぁぁぁ」

「シズちゃん諦めてくれる気になった―っ?」

「良いから止まりやがれぇぇぇぇ!」

「アハハ、ないよねー」

「死ね、殺す、死ね」

「こわぁぁい」



軽口を言っているも臨也はそろそろ限界に近かった。今まではトラックに跳ねられたり、他のものに喧嘩を売られれば直ぐに意識が其方に集中する。その時に距離を稼ぎ逃げれば良い。
何時もと同じ段取りだったはずなのに縮む距離に次第に臨也は自分にも苛立ちが溢れていた。だから、逃げるのを止めた。

廃墟の屋上で。
来るだろう金髪を待っていた。




時間が経過する。
短時間な筈なのに永劫な程長い時間とも感じる。


思考も巡らせる事もなく、ただ夜空を眺め声が響く。


……――なんで、シズちゃんを待つんだい
……―――なんで、化け物なんかと話すんだい。
……―――なんで、人間なんかと話すんだい。




「…うるさいな」



…良いじゃないか、皿にはもっと沢山の火種が並んでるよ。
良いじゃないか、火種なんてもっとたくさん起こせるよ。



「うるさい」

「何がうるさいだ」

「…………シズちゃん」

「手前がうるせーんだよ」




いっつもタイミングが悪いんだよね、シズちゃんってさ。






今は頭の中の声に同意したかった。











―――――
話が進まない!(;一_一)
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