零優零。
ピュアホワイト。
**100325

memoあぷしていたホワイトデーテキストです。
ぐだぐだ4弾です。










いつもの様に机に突っ伏して寝ていたある日の昼休み。


『ホワイトデーのお返しってハンカチとかで良いかな』

何となしに耳に入ってきた話題に零はむくり。と顔を上げた。

『女子ってハンカチとか小っさいタオルとか良く持ってるもんな!』


そんな話を交わしているクラスメイトは、かはは。と笑ってみせる。

3月に入り男子の間では、あちらこちらでホワイトデーの話がひそひそと繰り広げられていた。

例に洩れず眼前で話をしている二人を、零はぼんやりと視界の端に入れながら頭をがしがし。と掻いた。


(好みに合わないハンカチタオルは
嫌がられる物の1位らしいがな)


零はそんな事を口に出さずに呟く。

たまたま観た朝のテレビでその様な事を言っていたのだ。
ふと前で話をしていた二人の内の一人と目が合った。


『錐生は沢山貰ったんだろ?』

『は?』


突然話を振られた零は目を丸くさせた。


『でも受け取らないイメージあるからな錐生は。
勿体ないよな!』

『絶対貰ってるって!何個貰ったんだ?』

『俺 は・・・』


突然の振りに思わず思考を先月のあの日へと持って行かれた。
例年と違ったのはパシリ券以外の手作りチョコ1粒・・・

自分の口にチョコを入れて微笑んだ優姫の顔が浮かんだ後に零は、はた。と
そういえば誰だか知らないヤツから何か押し付けられたっけな−−−
などと今更な記憶が蘇る。


(あれは・・どこにやったっけ)


赤い花柄の包みを思い出しつつ、いつの間に来ていたのか零の机の前に身を寄せたクラスメイト2人の話は構わずに進んでいた。


『オレ、彼女にはペアで時計を送ろうと思って。
一緒の物着けて欲しいって云うか。』

『俺はアクセサリーをねだられてる・・』


零には理解しがたい会話に思わず眉をひそめた。


『はぁ?何でチョコの返しがそんなものになるんだ?』


二人は顔を合わせキョトンとした目を零に向けた。


『だって、あげたいから?』

『喜んだ顔見たいし?なぁ?』


二人は照れた様に顔を合わせると見遣って笑いを返す。

(そんなもんか?)

零は頬杖をついて窓に目をやると何と無く優姫の笑った顔を頭に浮かべさせた。









『このチョコおいひぃ〜』


理事長の居住区へ足を運ぶと、リビングでデレ〜。ととろけた声を出しながらチョコを頬張る優姫がいた。
零の姿を確認すると「零も食べる?」と綺麗に並べられた小さなチョコが入った箱を零の前に差し出した。


『ホントに・・甘い物好きだな、お前。』


零は眉間にシワを寄せて溜息混じりにそう吐き出すと優姫を見る。
出された箱を手で制止し、そのまま優姫に突き戻した。


『うん。大好き!』


優姫は返されたチョコの箱を嬉しそうに抱えると幸せオーラ全開な笑顔で答える。


『じゃあこれ、私食べちゃうよ?』

『ぁあ。』


そう返すと優姫は「やったぁ」と更にチョコを頬張った。
たかがチョコでよくここまで幸せになれるものだと零は目を細めて優姫を眺めた。


『お前ってホント・・
色気より食い気・・・』

『なッ、何よー!零だって色気ッ・・』


そこまで言って優姫は言葉を切る。
ふと、時折見せる零の熱を帯びた瞳が頭を掠めた。
思わず振り上げた右手が空で止まる。
零はそんな優姫に、顔をしかめ じとり。と目線を向けた。


『?・・・何だよ。』

『う、
ううん何でもッ・・・』


優姫は ぶんぶんと宙ぶらりんだった右手を振った。


『変なヤツだな』


零は訝しげに優姫を見るとリビングの椅子に腰を下ろした。
優姫は一連の動きをただただ視界で追いかける。

浮かぶのは理性と本能の狭間で熱に溺れて行く零の姿。
血を求めて自分を見つめる紅色の瞳には
いつもいつもドキリとしてしまう。


(零の・・・色気?)


優姫は思わずカーッと身体を火照らせ、今度は頭をぶんぶん振った。
振り過ぎてくらくらする。


零はそんな優姫の様子を怪訝に思いながら、テーブルに広げられていた赤い包装紙が目に入った。
すっかり忘れていた物ではあったが、ひょんな回想から今日存在を思い出したショコラトルデーで渡された物の包装紙と合致する。


『・・・これ、もしかして俺の・・・』

『・・・え?あれ?零のだったの??
理事長が聖ショコラトルデーの時に貰ったって・・・』

『・・・理事長が?』

『・・・え!ヤダ!どうしよ!』


零が貰ってきたと云う事に、何だかざわりと胸の辺りに苦い塊が生まれた様な気がした。
アタフタと慌てて、今更ではあるが箱の蓋を閉める動作をする。
そんな優姫に顔をしかめた零が溜息を零した。


『はぁ・・・まぁ良いけど。忘れてたし。』

『え!?でも・・・零の事を想って渡した物なのに・・』

『別に・・誰かわからないし。
それに美味しそうに食べてくれるお前が食べた方が良いんじゃねぇの?』

『そ、そう云うものじゃない様な・・』


優姫は目の前で頬杖をついているいつもと変わらない零の様子を見た。
先程感じた塊がすぅーっと消えて行く。
優姫はえへへ。と安堵の微笑みを零に向けて零した。










それから暫くして一人で街へ出る機会が出来た。
優姫の好きだと云うケーキ屋の店先には時期柄か、3月14日用に可愛くラッピングされた洋菓子が陳列されている。
零は思わず足を止め陳列された物に目線を合わせた。

大好きだと言って笑った優姫の嬉しそうな顔が浮かんでくる。


(さぞかし甘いんだろうな・・・)


零は店先から薫る甘い香に眉根を寄せる。
じっと佇む零に、「陳列されている物は期間限定商品になります」と店員が声を掛けてきた。


『宜しければ試食も出来ますよ?
ホワイトデーの贈り物ですか?』

『・・いえ、俺は・・・』


と口から出てからピンク色のリボンが掛かったピンクの袋が目に留まった。
何となく優姫が好きそうな気がした。


『こちらはストロベリー、ブルーベリー、ラズベリーの果実入りクラッシュクッキーなんです。
お相手の方がベリー系がお好きでしたら喜ばれると思いますよ』


零の目線を察知した店員がピンク色の商品の説明をニコニコしながら零に向ける。

ホワイトデーなんて考えた事もなかったが、ラッピングされたクッキーの包みを見ながら
幸せそうに頬張る優姫の顔が目に浮かぶ。
これを渡したら優姫は喜ぶだろうか。



「あげたいから」
「喜んだ顔見たいし」

そう笑って話していたクラスメイト達が頭を過ぎる。
選ぶ対象は時計やアクセサリーではないけれど。
それでも。


”うん。大好き!”

そう言って笑顔を向ける優姫の顔と、こみ上げるこそばゆい甘味が零の胸に広がる。
零は、ふ。と小さな笑みを零した。


(買ってやりたくなった。それだけだ。)


ラッピングされたクッキーの包みを手に取り、優姫の驚く顔と喜ぶ顔とを思い浮かべながら
零は先程の店員と目を合わせた。
















20100312−−−−−−》》
やぱり幼稚なうちの零優(笑)
初めてのお使いならぬ初めてのプレゼント
みたいな!
零たんが「買ってやりたくなった」て思うのがツボって事で!
地味な萌えポイントですんません・・
プレゼントってそう云う物じゃないかしら
って。


あとテレビでやってたてのは本当だよ
特ダネで見たんだよ(笑)










  


[EXIT]


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