零優零。
フタリのジカン。
**100320




 



珍しく学食に居る零を見つけた。
壁際の奥のテーブルにぽつん。と一人座っている。

何だろうあの周りだけ人がいない。
まるで寄せつけない何か膜の様な物が張られているようだ。

それでも零に近付きたい人達はいる。


『え!珍しいね錐生くんが学食にいるなんて。』

『側に行っちゃう?隣行っちゃう?』

『でも何か機嫌悪そうだしー』

『でもいつもじゃない?
きっと地顔なんだよ。
クールな感じでカッコイイよね』


まさに今。
優姫の前のテーブルに座る女の子達は、学食に足を運ぶ事が珍しい零の方をちらちら見ながら
声を潜め、きゃいきゃい話をしている。


(クールねぇ・・・)


優姫はそんな彼女達を見ながら零の様子を何となく窺った。


(零は今日何を頼んだんだろ・・・)


優姫はカレーを口に運びながら端っこにいる零をぼんやり眺める。
何かを口にした零の顔が一瞬歪んだ。


(ん?苦い顔してる・・・)


姿勢は崩さずに皿の上で器用に何かを分けているようだ。
て言うかあれは・・・


(もしかして避けてる??)


眉間に皺が寄せられ不機嫌オーラが発動されているようだが
もしかして原因は嫌いな食べ物??

優姫はじーっと少し離れたテーブルから零の様子を観察した。

間違いなく皿の端に何かが寄せられているようだ。
ちまちま箸の動きが見て取れる。


(避けてるな、あれわ。)


優姫はきゅぴーんと席を立ちカレーライスを載せたトレイを持って移動する。
零が居る、奥に開かれた空間に向かった。






『零!珍しいね学食に来るなんて!』


優姫が軽やかに声を掛けると零はびくりと身体を揺らせ前に来た優姫の顔を確認した。
優姫はにやにやと嫌な笑いを零に向ける。
零は眉を寄せて優姫を見た。


『何だよ。その変な顔は。』

『別にー。今日は何食べてんの?』

『・・・B定。』

零はぽそり零しながら目線を横に流した。
優姫は零の前にトレイを置くと椅子を引いて腰を下ろす。


『前良い?』

『云う前に座ってるだろ。』


ちまちま避ける行為をやめた零は何事もなかったかの様に避けていた物を口に運び出した。
微妙に顔が歪む。
零の頼んだB定は日替わりランチのチキンステーキ定食だった。
それに掛かっているソースに混ざっている何か小さい物をよけていた様だ。


『ねぇ?何でここだけこんな空いてると思う?』

『は?』


問われて学食を見渡せば周りには誰も居なく、見事に優姫と自分以外は人が掃けた状態だった。
通路を挟んだ前と横のテーブルには人が混雑している。

だが・・


(いつもの事だ。俺の周りに人がいないのは。)


零は眉を寄せ目を伏せた。


『・・・知るか。』

チキンを口に運ぶのを再開する。
優姫もカレーを一口頬張った。
チロリ。上目遣いで零に目を遣ると優姫は身を前に乗り出し零の眉間に指を伸ばした。


『零がいっつも「ここ」にシワ寄せて威嚇してるからだよー?』

『なッ!!』


イキナリ眉間を突かれた零はびくりと顔を強張らせた。
触れられた場所に手を当て目を見開き優姫を見る。


『もう!
もっと普通にしてれば良いんだよ!』

『別に・・・・普通だ。』

『さっき女の子達が零の側に行きたいなーって言ってたんだよー?
だけど機嫌悪そうだって・・・・・・』

『興味無い。』

零はきっぱり言い放ち大きく息を吐くと黙々と箸を運ぶ。

『・・・・・・。』

(クールでカッコイイとも言ってたけど・・・)


優姫は何となく言葉を飲んだ。
トレイの上のカレーを見る。
何だかもやもやして急に食欲がなくなってしまった。


途端におとなしくなった優姫を変に思った零は顔を上げ優姫を見遣る。
暫く自分が見ている事にも気付かず優姫はぼんやりとしていた。
零はスプーンを手にすると、優姫のカレーを掬いパクリ。と口に入れた。


『・・・えッ!?』

自分のカレーが零の口に運ばれて行くのをスローモーションの様に目で追った優姫は
ハッ。と現実に戻された。


『ちょッ 何勝手に食べてんのー?!!』

『お前がぼーっとしてるから食べてやったんだ。勿体ないだろ?!』

『頼んでないー!!』


前に居る零に手をあげる。
零の眉間の皺が薄れた気がした。
先ほど急に食欲が無くなったように感じた優姫だったが沸々と湧き上がる何かと共に食欲が戻ってくる。
優姫の復活にあわせて零は微かに笑みを零した。

優姫はそんな柔らかく表情を崩す零を前にまたぼんやりする。


(私と一緒に居る時の零は・・・)


ハッとして後ろに広がる学食内を振り返った。


『どうした?』

『え?うぅん。何でもない・・・』


振りかえってみたが学食内は既に昼休み後半の喧騒に紛れて誰もこちらを窺っている様子は無かった。

何となくそんな 二人でいる時の零の柔らかな顔を見せたくなかったのかもしれない。
自分だけが知っていたかったのかもしれない。


(変なの。)


優姫は冷めたカレーにスプーンを絡ませた。
ふと見ると零の前に置かれている皿の上は綺麗に片付けらていた。
避けていたのに綺麗に残さず食べたらしい。


(見栄っぱりなんだから。)

そして食べ終わった零は席を立つことなく自分を待ってくれているようだ。
優姫はえへへ。と笑いが零れた。


『何いきなり笑ってんだ・・・気味悪いな・・・』


零は嫌そうに眉をひそめた。
それでも優姫は微笑みが止まらなかった。


『で。 零くんは一体な〜にを避けてたのかなー?
見てたんだからねッ!!ごまかしてもムダ!!』

『はッ?!避けてない!』

『うそうそー。向こうからしっかり見てたんだからー。』


優姫は零がちまちまと避けていた動作を真似てみせる。
零は顔を歪めさせてそんな優姫を見た。


『おッ前・・・凄いやな奴だな。』

『白状しなさい!』




今日も今日とて二人は二人だけの空気の流れる仲睦まじい世界に居るのです。
















20100212
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3か月記念グダグダ第3弾。
ネタが無いよ〜〜と思ったのですが帰りの電車で

(零がちまちま避けて食べるって可愛いよな!)

と ぴかーーんと来ましてそれだけで打ってみた(笑)

だからいつも内容のないぐだぐだになってしまうのね!
すんません・・・。
避ける零が書きたかったんだもん。
しかし何を避けていたんでしょうか零くんは。


(memoにあぷしていたGDGDでした。タイトルもそのまんまな感じに・・・)







  


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