真昼の月 ミエナイケドソコニアルモノ

2011/08/04 15:57 :龍&あくび本編
57 扉の向こう岸 4-volV



正月 鷹栖家へ新年の挨拶
親父達と帰るとこを呼び止められた
「御加減は如何ですか?京介様」
「この通り元気っす ありがとうございました 橘さん」
「それは良うございました 宜しければ旦那様にお会いになりますか?」
にっこりと言われたが断った
話しを聞いてやるよっていう将様の優しさ
気持ちは 凄ぇ嬉しかったけど

 徹は『覚悟』って言ってた
それがない俺は まだ無理で


あれから2週間過ぎ
何一つ変わらない関係を装い
核心には触れられない
 己の弱さに 俺は
ほとほと 嫌気が差してた
でも
死ぬ気で考えるって誓ったし
チャンスは一度しか無いって
自分の本能って奴が教えてた
後で思えば それは
 大当たりだった


その週の金曜の放課後
「京介 用事があるから先に帰る」
「そっか じゃ 月曜日な」
生徒会室に向かう徹と別れ部活に行った
頭真っ白にして たっぷり汗かいて
部室を出たら真紀が待ってた
「どしたよ 真紀」
「ね 梶原って解る?」
「ん 知ってる」
「さっき あいつがね…」
って喋り始めた真紀の話し
最後まで聞かずに走り出した
「頼んだからっ ねっ 京介っ」
「おぉっ」
 あぁっ あの阿呆のことすっかり忘れてっ
 俺の 馬鹿たれっ

筋力UPの為にチャリ通にしてた事も呪いながら
すっ飛ばして
 間に合ってくれっ
頭ん中で
何度も 繰り返し念じた

門のとこのインターホン
足踏みしながら開けろと叫び
ダッシュで飛び込んだ玄関
「京介様 一体…」
「はぁ はぁ 梶原 来てるっしょ?」
「はい」
「説明 後でっ」
待ち受けてた橘さんにそう伝えて
徹の部屋の前まで来た
ノブに手をかけた時
なぜか
ごくり と唾を呑み込んだ

そっと開けた扉
囁きのレベルの声が聞こえて
 良かった 間に合った
今度は 大 丈  夫

 立ち尽くした
ソファーで揉み合う2人
「ゃめっ 梶原っ」
「俺は 前から な?良いだろ?」
奴が顔を寄せて行く
 徹の顔に
ぐらりと
脳天に衝撃を受けたみたいによろけて
  我に 還った
ドクン ドクンと全身心臓になった音
ぷちっぷちっという奇妙な音は
 なんだ?
「このっ 糞野郎っっ」
鞄を床に叩きつけ吼えて
後ろから羽交い締めした奴を
力任せに徹からひっぺがして
ただ ひたすら 殴り続けた
今更の馬鹿な言い訳
ガシャーンという音
酷く 遠くに 聞いていた

奴を引き摺り出す橘さんの姿
体を揺さぶる背中越しの徹の温もり
それで初めて
梶原の叫び声が呻きに変わってたのに気付いた

 アドレナリンって音すんだな
って 関係無ぇ事ぼんやり思って

「はぁはぁ」
荒い息使いは 俺 か

「もう良いんだっ 京介…もう 良い すまない ごめん」
久しぶりに聞く気がする 徹の声
シャツの背中が
ゆっくりと湿っていった

続きを読む

 0 


b o o k m a r k



r e v n e x


-エムブロ-