※ティエ+ライ
 多少よろしくない表現ございます。
 ティエライいやんな方はお逃げ下さい。

















 勘違いされては困るので一応弁解しておくが、自分に妙な性癖はないし、彼をどうこうしたいという願望などもさらさらなかった。
「んぐ…っ」
心の声が聞こえたのか、彼の指先が喉の奥へと付き込まれる。
「ぐっ…ひょ、ぅ…は…、」
沸き上がる嘔吐感で歪む視界の向こうにいる彼が小さく笑った気がした。



「教官、その指、逆剥け?」
「サカムケ?」
 電子端末を扱うその美しい指先に目を留めたライルが思わず声をかけると、ティエリアはその言葉をまるで初めて聞いたかのように、怪訝な表情を隠そうともせず、おうむ返しで聞き返した。
「知らねえの?」
「知らない」
ライルは普段偉そうにしている彼にも知らないことがあったという事実に少し驚き、思わず笑ってしまう。
「何なんだ」
「んー、まあ小さい怪我だけどここだけの話、」
ここぞとばかりにライルは声をひそめた。
「親に口答えばっかりする悪い子がよくなる怪我だ」
「馬鹿馬鹿しい」
一刀両断とはまさにこのような状況で使う言葉なのだろう。少しからかってやろうと思ったライルは、心の中で小さく舌打ちしてティエリアに対面した机の反対側に腰掛けた。

「きみはあるのか」
「は?」
しばらく時間が空いて、ライルが携帯端末をいじり始めた直後、ティエリアが顔を上げずに尋ねた。
「サカムケだ」
「へ?…ああ、逆剥け?んー…小さい頃はよくあったな。そのたびに兄さんと『お前が母さんの言うこと聞かないからだー』とか言って」
気にしてんじゃねえか、と、ライルは少し面白くなって頬が緩む。
それを見たティエリアは少し面白くなさそうに鼻を鳴らした。
「どうすれば治る」
「どうすれば、って…舐めて唾でもつけときゃ治んだろ」
特に深く考えずにライルが告げるとティエリアは、傷ついた指先を有する左手を無造作に差し出す。
「舐めろ」



 ほんの遊び心というか出来心というか、這わせる舌の動きに反応する指先に悪い気はせず、ライルは舌先でティエリアの指の愛撫を続けていた。
当のティエリアは、特に表情を変えるでもなく余ったほうの手で電子端末を操作し続けている。
 当然、ライルはそんなティエリアが気に入らなかった。
どうにかしてこちらに注意を促してやろうと、逆剥けなどには目もくれず、人差し指と中指の間に舌を滑り込ませてみる。
するとくすぐったかったのか、その細い指先はぴくりとふるえ、動かずにいると再び何事もなかったかのように力が抜けた。
ここか、と、ライルが再び舌を伸ばした瞬間、それはティエリアの指先によって引っ捕らえられる。
「そこはサカムケではない」
「ひょーはん、ひひゃい」
今にも引き千切らん勢いで相手の舌を捕獲したティエリアは、顔を上げることもせず冷たく言い放った。ライルは依然こちらに目も向けないティエリアに多少の苛立ちを覚えながらも抗議する。
ティエリアは、ふんと鼻を鳴らし、ライルの舌を喉の奥へぎゅうとと押し返した。
「んんっ、うっ…う…っげほ……っ」
咳き込むライルは、ティエリアが瞼を持ち上げたことに気がつかない。
口角を持ち上げたティエリアは、唾液に濡れた指先で相手の顎から輪郭にかけてをするするとなぞった。
ライルは落ち着きを取り戻し、ティエリアの瞳に自分が映っていることに少しだけ驚くと、すぐににやりと笑う。
「やっとこっち見たな」
「僕の勝手だ」
そう言って電子端末を端に退けたティエリアは、右手で自らの頭を支えるように肘をつき、左手の中指を立てた。
「ふぁっく」
「馴れねえ行為はするもんじゃねえよ、教官殿」
再びその指に舌を這わせるライルをティエリアが、今度は真剣に見つめている。
確かに無視されるのは辛いが、こんなふうに観察するように見られているとなると、正直見られない以上に辛いものがあった。
そっと覗き込むようにティエリアを見上げると、目が合う。
ライルは居心地が悪くなり、ちゅっと小さく音を立てて相手の指から離れると、問い掛けた。
「俺の顔、なんかついてる?」
「なにもついていない。ただ…」
ティエリアは少しだけ下を向くと、意を決したように口を開く。
「僕はきみの顔が好きだ」
「は?なに言っ「ただいまーっとぉ。あれ、お客さん?ライル?誰…ってティエリアかよ!とりあえずいらっしゃいだな!ん?何してんだ二人して。やけに近くないか距離」
帰宅早々一気にまくし立てるように喋りながら会話に入ってきたのはライルの双子の兄だった。
ティエリアは彼を一瞥するとさっと立ち上がり、長期間借りっ放しだった電子端末を返しにきた、という用件だけを簡潔に告げ、さっさと出て行ってしまう。
「んじゃ俺も部屋戻る」

 取り残された双子の兄は、二人の邪魔をしてしまったのだろうか、と真剣に悩んでいた。









※ティもライルもニールが好き
 ティはライルで遊んでいる
 ライルもティで遊んでいる



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