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汚泥に脚を預ける程の愚かしさ、彼は子供であったと君は謂うがその足元は如何なるものなのであろうか。
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安い言葉は金でも買える。
子供でも知っている。
しかし高い言葉などは存在しない。
それに値段などは付けられない。
そこに感情があるからだ。
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人間なんて録なものじゃあないのだぜ
動物は言った。敵意。
人間なんて録なものじゃあないのだぜ
人間が言った。免罪。
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幽けし記憶に追い縋り軟らかな泥を蹴り付けるそれはあたかも天の邪鬼を抱えて走り続けているようで愚かしくも懐かしい。
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生きる意味を問い、探し続ける人がいる。
生きる為に歩く道、そんなものはないと気が付けばそこに広大な自由が落ちているというのに。
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哀惜と愛惜は似ている。
似ているだけであって、
彼女の死顔に降り懸かる涙は
どちらのものが幸せであるのかは
誰にも知り得ない。
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大佐さんについての分析結果は以下の通り。
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【こんな問題ありませんか?】
◆実は「いかにも女子グループ」みたいなのは苦手だ。
◆少し重苦しいような思い詰めた男性は苦手だ。
◆なんだかんだで男性を傷つけることが多い。
【分析と課題】
大佐さんは、わりと男性からアプローチを受けやすいほうだと思われます。それは、大佐さんにとって男性というのは遠い存在ではなく、近しい存在だからです。平均的な女性よりも、大佐さんは男性に対して心の距離感が近いのです。さらに言えば、そこには「男性には好かれるものだ」という無意識が存在しています。むしろどちらかといえば女性のどろどろした感情を苦手に思っているかもしれません。
それは男性への好みにも表れていて、大佐さんが小ざっぱりした(あまり女性らしくない)性格なだけに、あまりねちねちした男性が相手だと「うっ…(重っ面倒くさっ)」と思ってしまうことでしょう。大佐さんと付き合う男性には、あまり小さなことは気にしないような、大佐さんに振り回されたりしないような、どんと構える余裕が必要なのです。
しかし大佐さんと付き合っていると、どんと構えていた男性も弱ることがあるでしょう。大佐さんがあまりに自己完結した人なので、自分が必要とされているのかが分からなくなり、不安になるからです。よく束縛されたり、相手に依存されたり、付き合っていくうちに相手がねちねちした男性になっていくということはないでしょうか?それは大佐さんのそっけなさが招いている部分もあるのです。
ところで、大佐さんは彼女付きの男性や、既婚者と恋に落ちたことはありませんか?大佐さんのことを少しほったらかし気味で扱ってくれる人といえば、そういった人たちがうってつけだからです。あくまで可能性の一つという程度ではありますが。
【恋愛キーワード】
「柔軟」「余裕」「いたわり」「相手いらず」
ぶっちゃけそうでんがな/(^O^)\
親愛なるU.N.Owenへささぐ。
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過去に捕われる者程憐れな存在を私は知らない。それは過去への依存という今を過ごすもはや正常ならざる者である。
過去を忘れる者程愚かな存在を私は知らない。それは己の歩んだ道のりの犠牲となったものどもへの冒涜であり、今という時を過ごす資格のない者である。
未来に捕われる者程奇異な存在を私は知らない。未来の為に今を、過去を食いつぶす。過去もいつかは未来であったというのに更に先を望む。後には死のみが残される。
未来を想わぬ者程空虚な存在を私は知らない。それは生きる事の概念を失った空箱である。
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理由も無きに等しい、
衝動による殺害があった。
動物ですら理由無きに生物を殺したりはしないというのに、人間とはなんと下等ないきものであるというのか。
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名も無き主は、
この島を本物の孤島にしてしまった。
みたまえ、昔は人がいたのだ。
人が居たからなのだ
人の仕業なのだ
そして誰もいなくなった
(だから誰もいなくなった)
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アガサ・クリスティ著
「そして誰もいなくなった」
に於けるU.N.Owenへささぐ考察。
ざぁあ、と、水音と間違えそうなさざめきを立てる葉。此処は戦場とは別時限にある、そんな錯覚を覚えさせた。
「そう。」
少女は固定された表情のまま、理解の返事を返した。
「ならば、貴方はこちらへ来るべきよ。」
今にも泣き出しそうな少年の瞳は不可思議な色を浮かべてはいたが、熱に浮かされたように少女の瞳を捕らえた。少女の瞳に、少年が映り込んでいる。その少女の瞳に映る自分の瞳にはまた、少女が映っているのだろう。
合わせ鏡になった二人は小さく笑い声を漏らした。笑う。笑う。笑う。
徐々に大きくなる笑い声は森に響いた。
ただただ純粋に声を上げる少年と少女は手を取り合った。長らく見知った者と踊るように。ただ今この瞬間を寿ぐように。
「あなたは、私の物になるの!」
少年は、逃亡からの生涯を
この森から出る事なく過ごした。
「これが、例の森の調査書かね。」
声からは疲労がありありと見て取れる。
目の下に黒い隈が広がるのを許したまま、何日が過ぎたのだろうと云った調子だ。
過ぎた戦時。
無闇に人の死ぬ時代は過ぎた。
平和の為の歴史の精算に労を組すのは嫌な気分ではないが、複雑そのものである。
(最初から、そんなものを起こさなければ良いのだ。子供でも解る。)
「は、誠に…奇異ではありますが。」
眉を潜めたままの下官に彼は軽く頷き、これ以上に無い労いを込めて言葉をつく。
「ご苦労様、君の兵役はこれにて終わりだ。」
下官は薄汚れた軍帽を脱いで礼をした。
彼には故郷があるのだろうか。家族や、恋人という精神の故郷が。
扉が閉まる。静寂。
ため息は長く漏れた。
「奇異なものか。真実さ。」
あの森には魔性が棲んでいる。
彼がその魔性に出会った事はなかったが、居るのは解るのだ。感じるのだ。
粗末な紙に書かれた内容を、今見る気はしない。
これ以上の疲労は、殊更に不可思議な疲労は、今の彼には重荷すぎるであろうから。
彼はその部屋を後にした。
(少年369番は、逃亡の途中で転倒し、朽ちた木の枝に心臓を突き抜かれて絶命していた所を終戦後に発見された)
(その姿は愛しい者を抱きしめるかのように木の幹に巻き付いていた。)
(身体は腐乱していたが、真っ先に溶け出すはずの眼球は何故か死後直後のそれのように綺麗であった。)
(そして青い色をしていた。)
(魔性の棲む森は、死後にその魔性を現す。)
少年兵369番。
彼は戦争という愚行の被害者にして、一介の死者にして、逃亡者にして、幸福な夢に落ちた永遠の少年。
(少年が死んだのは、いつなのかしら?)