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魔法の呪文



暖かくて優しい、ひかりのようなあなたが、ぼくは好きで。

それだけで終われなかったのは、ぼくのせいだな。
大切にしたい気持ちなのに、触れようとすると棘になって、それでいてきらきらとするから。
嫌なことは、簡単に忘れられたらいいのに。
大好きなところだけ、永遠に記憶に出来たらいいのに。

生きてるの、大好きなところだけ、永遠に記憶に出来たらいいのに。
いつか来るさよならは、さみしい気持ちのまま時を止めてしまうんだろうな。
幸せねって言われて、返そうと詰まる言葉。
もらったのは全部愛だと思ってたんだ。
きらきらとしてれば、そんなの誰だって綺麗だって言うから、みんな何も悪くないよ。

暖かくて優しい、ひかりのようなあなたが教えてくれた、どこにでもあるおまじない。
暖かいのは、少し嘘をついているからだよ、って、ぼくもまた頷き、受け入れている。


#ヘキライ 魔法の呪文

我が主


行かないで、と言えなくなったのは、大人になったからだよ。
「家に帰ろう。」
やさしくわらうひとだということ、ぼくだけが知っていた。

初めて出会った夜も、こんな風に雨が降っていたよね。

傷付いたことにも気付かないような、不器用なひと。
心臓が冷たくても、温かい手のひら。
例えどんなに弱くても生きていけるんだって、どういう意味かな。
ぼくらはまだ、どこにも行けない。
心臓が冷たくても、やさしくわらうひと。

だいじょうぶ、悲しくて泣いた夜も、生きていればいつか、忘れることができるからね。
触れてもこわくないこと、ぼくだけが知っていた。


#ヘキライ 我が主

ひかりのうろこ

「ここの湖ってね、そんなに深くないの。必ず太陽の光が届くようになっている。だからね、死のうとして飛び込んでも、死なないのよ。苦しいだけで。ずっと昔から、この湖にはそういう魔法がかけられているの。だから、ここに沈んだ寂しい気持ちはみんな、まだ息をしている。わたしたちはそれを、いつかそのときが来るまで、見守っているのよ。」

久々に訪れた湖の底は、漣のようにきらきらと輝いています。レイスはその光を踏んで歩きながら、水中に響く誰かの声を聞いていました。
姿の見えないものの声を聞くことは、言葉の神さまであるレイスにとって、特段珍しいことではありません。それでもきらきらとした光に胸が苦しくなるのは、その光が何であるか、そのひとつひとつに、心当たりがあるからでした。少しの沈黙のあと、レイスは問いかけました。

「寂しさが、まだ息をしている?」

「気持ちを捨てることは、難しいことなの。」

返事はすぐに返ってきました。

「ただゴミ箱に入れるだけなら簡単だけど、それだけではふとした瞬間に、すぐに思い出してしまう。いつ、どこで思い出してしまうか予測もできない状態では、まっすぐ歩くこともままならないわ。でも、もしほんとうに処分しようと思ったら、たくさんのエネルギーを使わないといけない。それにはとても知識が必要だし、技術が要る。時間がかかるし、痛みも伴う。だからみんな、捨てたことにして、忘れたふりをするの。生きていくためにね。だからここに集まるのは、捨てられた気持ちではあるけれど、同時に捨てられなかった気持ちでもある。」

避けて歩こうと思っても、水底はそこらじゅう光の欠片でいっぱいだったので、レイスはそれを踏み付けざるを得ませんでした。こんな風に光を踏むことも、水の中を歩くことも、知らない誰かの声を聞くのも、全部、街に住む他のみんなとは違うことです。他のみんなとは、違うこと。
湖の中をどこまで歩いても、その声の主を見つけることはできませんでした。やがて、レイスは諦めて、立ち止まります。

「あなたはここで、そのような気持ちを守っているのですね。地面がきらきらと輝くのは、そのせいですか。あなたが魔法をかけているから?」

「光というのはね、昼間の中だけのものではないわ。夜の中にも、寂しさの中にも、光はあるのよ、こんな風にね。そして、あなたの中にも。もしかしたら、あなたの気持ちもここにあるんじゃないかしら、レイス=ヴァン。」

レイスには心当たりがありました。だから、その声に何も言い返さずに、唇を噛みました。それは大切な記憶でした。そしてそれは、寂しさではないはず、の。
例えば両手に渾身の力を込めてぎゅっと握りしめたとしても、この光を「処分」することはできないのだ、とレイスは察しました。その逆で、おそらく、両手にそっと包んで温め、癒してやるようなことが、その光を消す唯一の方法なのです。
鋭く光るその光は、触れればきっと傷付くことでしょう。助けようとして近付いたひとにだって、同じように鋭く切りつけたはずです。だからみんな、どうすることも出来ずに、それは湖の底に沈んでいきます。
レイスは自分がどうしてこんなところに呼ばれたのか、分かったような気がしました。

「今の僕には、これを持ち帰ることは出来ません。まだ、触れることができないんです。ごめんなさい。でも、それが何なのか、心当たりがあります。大切な気持ちだったんです。」

「あなたを責めようというんじゃないのよ。ただ、知ってほしかったの。今はまだ、上手に心を使えないかもしれないけれど、この光はいつか、あなたの味方になるものだから。」

その「いつか」の日を想像して、今とのあまりの距離に、そのあまりの遠さに、泣きそうになります。果たして本当に、そんなに遠くまで、歩いていけるのでしょうか。ずっと、他の誰とも違う道を歩いてきました。この光のひとつひとつも、恐らくそのように、違う道を選んできたのでしょう。それらはまだ息をしていて、道はまだ続いています。続いている限り、歩き続けなければなりません。そして、その先にあるものを、誰も知りませんでした。

#ヘキライ 第41回テーマ ひかりのうろこ

booth通販、作品追加しました。&委託販売のお知らせ

booth通販、作品追加しましたのでこちらでもお知らせします。
milmyuto.booth.pm

本の他にうちわとかクリアファイルもあります。紹介文も気合い入れて書いたのでぜひ見てみてください!
boothはピクシブの会員登録しなきゃなのでそこだけ面倒かもですが、今は匿名配送サービスに対応してるので、お互いに住所は非公開でやりとりできます。安心便利ですよー。

そして、このたび、うさぎ洋品店&古書店さまで、「幻影詩集 きみを乗せて」を委託販売させていただくことになりました。
twitter.com
うさぎ洋品店さまのホームページにも近日公開されます。
うさぎ洋品店さまは原宿にある、お洋服とか雑貨とか本を扱っているお店です。わたしも先日伺いましたが、可愛いものがいっぱいでとても楽しかったです…! もし、近くまで来る用事がありましたら、ぜひ三明結都の本を見に寄ってみてください!

今後、いろいろ精力的に活動できたらいいなと思っています。よろしくお願いしますー!(*´艸`*)

browny


ブラウニー。
呼ぶたびに懐かしくなるのは、どういうわけなんだろうね。
きみのこと、何ひとつ知らないのに。

あまいあまい、ゆめを見ていた。
「ぼくの魔法で、全てを砂糖菓子に変えてみせよう。きみの抱く憂鬱さえも。」
オルゴールのような小さな世界で、ぼくらはきみの優しさに守られていた。
触れれば崩れてしまうような温もりが、この命を突き動かしている。

ブラウニー。
名前を呼んだ、声はあまく。
生まれてきたことの意味を全て、包むような柔さに、隠すような愚かさだ。
ブラウニー、
そして、きみはよわい。
やがて鳴り止むオルゴール。

「さよならを言うのだけが、正しさではないはずだ。きみもそうだと、思うだろう……?」
帰り道。砂糖菓子は攫われて、道標は消える。はぐれてしまうよ。
旅の終わりに、ぼくらは。

(魔法が寂しさを払うのではなく、寂しさが魔法になるのだ。魔法とはそのように出来ている。あの春には、皆、嘘をついていた。)

何ひとつ知らない、きみだから
ぼくらを守ってこれたんだ。

ブラウニー、あまいあまい、ゆめ。
名前を呼ぶたびに、溶けて消えてしまいそうだ。


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