お土産を配り終えた私は自分の病室に戻りました



病室に戻った私は、甦る記憶で考え事…

今まで思い出す事は無かったけど、昨日から今日になって…

溢れ出てくるよう…



封印した悲しい記憶…

二度と思い出したくなかった記憶



室蘭の家を出る時の、あの日を思い出していたの

姉は札幌の医師の家に

私は函館の医師の家へ

そして弟は
北斗の医師の家に貰われて行った



泣き叫ぶ私を宥める様にIちゃんは言ったの

「いい...?
綾ちゃん

私達3人は大人になったら、お医者さんになるの

家族がいなくなっても、1人で生きていけるように



忘れないで…
お医者さんになるのよ!



必ずまた会える

姉弟でまた会うのよ

約束よ」



あの日
私は姉や弟ともう、2度と会う事は無い…

そう思ったわ



室蘭の家や工場、敷地等は、やがて…

破産管財人の手によって、競売にかけられた…

会社の負責(借金)を返済する為に…



住む場所を失った母はこの後、何年も親戚の処へ身を寄せる事になるの