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リクつら小説(※NL注意)


始まりの気持ちは、もう、よく覚えていない。いつの間にか日が落ちて、暗闇の中の隠れん坊。何も見えず、一人きり。その中で見えた、純白。

「私がずっとお側におります。だから、もう大丈夫ですよ。」

差し伸べられた手。零されたのは微笑み。―――――――――始まりの気持ちは、もう覚えていない。













「……つらら。」

丑三つ時。静けさの満ちる庭。最近日課になりつつある夜の散歩に出掛けようと外に出た、そんな時。ふと、見知った姿が目に入った。漆黒の髪に、それと対照的な、闇夜にも眩しい純白。オレの従順な下僕であり、家族のようでもある存在。雪女。真名を、つらら。不意に呼ばれた自分の名に、女は微かに肩を震わせたが、オレだと分かると、すぐにいつもの雪女という妖に似つかわしくない明るい笑みを浮かべた。

「若!どうなされたんですか?こんな時間に…。」

「散歩だよ。」

「散歩って……。もう、ほどほどにしておいてくださいね。明日も学校があるんですから。」

「昼のことは、《オレ》には関係ねぇな。…そういうお前は、何してたんだい?つらら。」

いつまで経っても世話焼きな側近の忠告を一蹴し、笑みを浮かべ、問う。昼のオレが学校に行かなければならないように、つららも、護衛役として登校しなければならない。夜遊びをするな、という制止は、そのまま自分にも返ってくるはずだ。オレの質問に、つららは一瞬きょとん、とし、それから首を捻り唸ってみせた。

「なに、というわけではないのですが……。」

そう一言呟いて、

「この桜から、目が離せなくて。」

眼前に広がる、薄紅色の花を纏った染井吉野。桜花爛漫の言葉が相応しい咲き誇りだった。女の浮かべる笑みも、どこまでも優しい。

「不思議ですよね。雪女なのに、桜に、春の花にひどく惹かれるんです。」

「…………。」

「私の体が、冷え切っているから、暖かいものを求めるんでしょうか。」

ぽつりぽつりと独り言のようにそう漏らす彼女の横顔は、ひどく儚い。粉雪のように、風に吹かれて掻き消えてしまいそうな―――――――――美しい。

「つらら。」

「はい。」

「行くぞ。」

「はいっ?」

目を丸くするつららに構わず、その白く細い手首を掴む。そしてそのまま一気に―――――――地を蹴った。

「は――――――はわわわああっ!?」

「よっ、と。」

地面との距離は一瞬で開き、オレ達は宙に舞う。しかしそれも束の間。すぐに浮遊感は消え、足場が戻ってきた。常日頃、煙管を片手に背を預けている定位置の枝という、足場が。

「わ、わわわ、わ、っ、わ、か…!!」

「何語だよ。」

「なっ、何するんですかいきなり!跳ぶなら跳ぶと、事前に仰ってください!」

「いちいち細かいねえ、オレの側近は。」

「こまか……っ!?」

「ほら、見てみな。」

くいっ、と顎で頭上を指す。すれば、未だ納得がいかないらしいつららが、不満そうに上を見た。その瞬間、漏れる感嘆。

「うわ、あ………!」

「どうだい。」

見上げれば、桜花爛漫。そしてその隙間から、見える月夜。視点を変えるだけで、夜桜がこんなにも幻想的に映る。黒と金色と薄紅のコントラスト。見事、の一言だった。思惑通り、否、思惑以上に魅入ってつららに、笑ってしまいそうになる。呼吸を忘れたかのように、女は夜空と桜を見上げた。

「すごい……すごいです、若!私、ああ、なんて言ったらいいのか………、言葉になりません!」

「語彙が少ねぇなあ、つららは。」

「でっ、でも、本当に感動した時って、言葉が出てこないと思うんですよ…!」

金色の瞳を輝かせて顔を綻ばせるつららの頭を撫でる。くすぐったそうに、女は身を捩った。

「つらら。お前が桜に惹かれるのは、冷え切ってるからじゃねぇよ。」

「…………リクオ、様」

「美しいものを愛でる。当然の感情だ。雪女に、春の花を憎む掟なんざねぇだろう。」

「………。」

雪女の体が氷のように冷たいからといって、心までもが氷雪でできているはずがない。むしろ、つららの心は優しく暖かい。春の柔らかな日差しのような、居心地の良さ。側にいることを、許してしまう。側にいることを、望んでしまう。下僕であり、仲間であり、時には親のような存在であり、姉のようでもあり、友のようでもあり――――――――、

「…………若。」

「ん?」

「幼い頃のことを、覚えていますか?よく、隠れん坊をしましたよね。いつも、私が鬼で……。」

「…………。」

「あの日の約束は、今もこの胸にあります。違えるつもりはありません。


未来永劫、お守りします。」

――――――――つららは、下僕であり、仲間であり、時には親のような存在であり、姉のようでもあり、友のようでもあり――――――――愛しい女だ。始まりの気持ちは、今はもう覚えていない。けれど、美しく微笑むその姿が、狂おしい程に愛おしい。

「――――絶対に、違えるなよ。」

「はいっ!お任せください!!」

「――――――――なら、」


















誓いの口付けでもしてもらおうか




女の顔が紅色に染まるのは言うまでもない話。

20100724


******

ぬら孫とリクつらと夜若とつららが好きすぎて萌え萌えしてやった。後悔はしてない。むらむらする。あの子らはいつ結婚するんですか。

拍手レス


「シーズちゃん☆」

うざや/(^O^)\

あああああ二次元に飛んでいきてえええ!もうなんなの、私なんなの……ぁあああ散りたいあああぁ(ry





以下拍手レス

wonder days大〜の方へ

ああありがとうございます!大好きだなんて……!そのお言葉、とても励みになります。拍手ありがとうございました。


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