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走る走る!

13走る走る!
(臨→静)




「いい゙ざやあ゙あ゙あああぁぁ!!!どこ行きやがったああ゙ああ!!」

馬鹿みたいに大声で叫びながら追い掛けてくるシズちゃんを物陰に隠れてやり過ごす。シズちゃんは単純だからこうやって隠れてやれば大抵逃げ切ることが出来る。
案の定段々と声が遠退いていくのを感じながらポケットからメモ帳とペンを取り出して開いた。

「今日は25分45秒、と。まぁ、勘の良い方だよね」

携帯の時計を見ながらサラサラと時間をメモしていく。
いつからか取るようになったシズちゃんが俺に気付くまでの時間。別にデータを取ることに深い意味はない。ただ、何もしていなくても毎回どこからか嗅ぎ付けて追い掛けて来るからどれくらいの時間が掛かっているのか少し興味があっただけ。

もうメモ帳の半分も書き終えたそれを満足するまで眺めてポケットにしまう。
池袋に来た用事はこれだけだから愛用のコートを翻して帰路へとついた。


数日後、仕事で池袋を訪れトラブルもなくスムーズに済んだことに機嫌良くサンシャイン通りを歩いていてはた、と気付いた。そういえば今日はシズちゃんにまだ遭遇していない。
裏道を通っているわけでもないし今日は平日だから溢れる程人がいるわけでもない。時計を見れば1時間なんてとっくに過ぎ去ってしまっていた。
普段なら田中トムと取り立ての仕事の最中でも追い掛けてくるのに。
ざわざわとした嫌な感覚が胸に渦巻く。気持ち悪い。何でこないのか、シズちゃんに限って病気や事故は有り得ないだろうし。
ああ落ち着かない。馬鹿みたいなあの怒声が聞こえないと。有り得ない怪力を発揮して飛んでくるゴミ箱や自販機がないと。

気付けば走り出していた。普段勝手に見つけてくれるからシズちゃんの行きそうな所なんて見当もつかない。情報屋なんだからこんな時こそその情報を駆使するべきなのに。
すれ違ったサイモンやドタチンに聞いても知らないと首を振られた。ドタチンといた狩沢が何やら狂喜していたみたいだったけど今はそれ所じゃない。
走っている内に汗だくになっていてファーのついた愛用のコートが今だけは恨めしい。脱げば楽になるかと腕にコートを引っ掛けてひたすら走った。大人になってからシズちゃんから逃げる以外にこれだけ全速力で走ったのは久しぶりで足がもつれてくる。
何でこんなしんどい思いをしてまでシズちゃんを探しているのか自分でもよく分からなかった。


シズちゃんを見つけたのは走り出して30分も経った頃。どこにいるのかと必死に探し回ったのに当の本人は運び屋と楽しそうに談笑していた。
こんなに近くに俺がいるのに気付く気配もない。ああまただ。気持ち悪い。

気付いたらシズちゃんの頬を張り倒していた。ジン、と人を叩いた感触が掌に広がる。
シズちゃんは当然ながら驚いた顔で俺を見上げていて、運び屋も呆然としているようだった。

「いざ…「愛が足りない!!」

シズちゃんが何か言いかけたのを遮って叫んだ。
ぽかんとするシズちゃんの顔に思わず口をついて出た言葉を頭の中で反芻して急速に頬に熱が集まる。愛…?
余りにいたたまれなくて何か言われる前にその場から走り去る。さっきまであんなに走って疲れていたのに一秒でもそこにいたくなくて走る。胸が苦しい。



(あぁ、気付かなければ良かった)






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こないだ参加した静雄受けフェスに投稿したネタを小説にしたら何か違うものになったww

月島とデリックと日々也

マスター臨也のマンションを抜け出して朝帰り。
まだ眠っているであろう主の睡眠を妨げないように気をつけながら部屋に足を踏み入れると、ソファに静雄が寝ていた。
なんで静雄が1人でソファで寝てんだ?もしかするとマスターは昨日帰ってきていなくて待っていた静雄はそのまま寝てしまったのかもしれない。それにしても……

『何で部屋の中でマフラーしたまま寝てんだ?こいつ』

ソファで懇々と眠り続ける静雄は、白いマフラーを首に巻きおまけに見慣れぬ眼鏡まで掛けている。静雄といえばサングラスのイメージだったが変えたのか。
どのくらいの度数か見てやろうと眼鏡に手を伸ばした瞬間、今まで眠っていたと思えぬ程パチリと静雄は目を開いた。前触れも何もなかった為思わずビクリと肩を揺らす。過剰な程反応したってのに当の本人は笑う所か俺の顔を見たまま動かない。寝ぼけてんのか?

『おい、しず『あの…貴方が俺のオリジナル…ですか…?』

『…………は?』





『デリックさん、こっちの掃除は終わりましたよ』

『あぁ、サンキュ。次はそっちを頼む』

『はいっ!』

嬉しそうにマフラーをなびかせながら駆けていくそいつの名前は月島静雄。
あの日、静雄だと思っていたものはマスターが新しく作り出した静雄モデルのアンドロイドだった。あの瞬間が初めての起動で、一番初めに俺を見たからかまるで雛が親だと認識したかのように月島は俺によく懐いている。同じような行動言動を日々也の野郎にも散々されているが、日々也のように不快に思わないのは同じ静雄モデルだからか、月島の性格が日々也より控え目だからなのか。
理由は分からないが月島が傍にいるのは不思議と落ち着いた。

『……デリック』

次はマスターの机でも拭くかと布巾を手に取り移動しようとした背中に低い声が突き刺さる。マスターによく似ているが少し機械的な声。
振り返ればやはりそこにいたのは日々也で。あからさまな不機嫌オーラを撒き散らしている理由は十中八九月島の所為だろう。月島が現れてからというもの常に月島が俺の傍にいるからか日々也は俺に近づけないでいた。

『何か用があるなら後にしろよ、清掃中だ』

『っ、…今、話がしたいんです!最近月島とばかり一緒で全く傍にいられない、話せないし触れられない。デリック不足でどうにかなりそうなんです!』

『ちょっ、おいバカ王子!』

一方的にまくしたて抱きついてくる日々也にぎょっとして体を押すが、俺より幾分も強く作られた日々也の体はびくともしない。抵抗しても腕の力は強まるばかりだからどうしたものかとマントをぐいぐい引っ張っていれば突然背後から物凄い力で引き寄せられた。
不意打ちだったからか日々也の腕はあっさり離れ、腕の主を見れば先程まで向こうを掃除していた月島がいた。

『月島…どういうつもりですか』

『デリックに…触らないでください…』

『それは此方の台詞ですよ。デリックは私のモノです』

『おい、俺は誰のモノでもねぇ』

俺を挟んで火花を飛ばしあっている2人に余計に事態がややこしくなったと額に手を当てる。日々也だけならまだしも月島まで一体何だってんだ。

『俺もデリックがすき、…なんです。だから日々也は手を出さないでください…!』

『は?!』

ちょっと待て。何でそうなる。
日々也は元々相手がいなかった俺の為にマスターが作った存在だ(別に決まった相手が欲しかったわけじゃねぇから不本意だが今は置いておく)。月島は全く関係ない。なのに。
これじゃまるきり人間…

「あぁ、やっぱりややこしいことになってるね」

険悪な雰囲気を断ち切るように響いた声に視線をやれば、いつの間に帰ってきたのかマスターが買い物袋を下げて俺達の方へ歩いてきていた。

『マスター、説明しろ。月島のこれはバグか何かか?』

まだ睨みあったままの2人はそのままに助けを求めるようにマスターへ話し掛ければ、何が可笑しいのか口元に笑みを浮かばせていた。

「いや、バグじゃないよ。月島はデリックを一番初めに見たことで、デリックを主人だと認識してしまった。制作者が俺だというのは分かっているけど月島にとっての絶対的な存在はデリックなんだよね」

『な?!…データの書き換えしろ。同じアンドロイド同士で主従関係になんてなりたくねぇ』

「残念ながら出来ないんだよね。永久的なものになるようプログラムしているからさ。そもそも、デリックがあの日抜け出したりしなければこんな事態にならなかったんだから諦めなよ」

こう言われれば反論は出来なかった。
相変わらず楽しげなマスターから視線を逸らし奥歯をギリリと噛み締めながら、まだ睨み合い牽制し合う2人にこの先のことを思ってあるはずのない頭痛を感じ始めた…。









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月デリブームがきてますきてます。


上目遣い

49上目遣い
(臨静)


日付も変わろうとする時間。
夕飯を食べてダラダラとテレビを見ていたら隣でこっくりこっくりとシズちゃんが船を漕ぎ始めているのに気付く。

「シズちゃん寝るならベッド行こう」

ソファで完全に眠ってしまわない内にとシズちゃんの前に立って促す。しかしシズちゃんはぐずるように首を横に振るだけでその場から動こうとしない。その仕草はめちゃくちゃ可愛いんだけどソファで寝て朝体が痛いと不機嫌になられるのは困る。
ポンポンと怒らない程度に背中を叩けば面倒くせぇ、と今にも眠ってしまいそうな声が返ってきた。

「俺が連れていってあげるからさ。ほら立って」

「ん……おぅ…」

再三の促しに漸く観念したのか俺を見上げてシズちゃんは頷いた。
ただそれだけのことに息を呑む。
シズちゃんにとっては目の前に立つ俺を見上げただけに過ぎない。けど、普段見下ろされることが大半な俺にとってシズちゃんの上目遣いは殺人的な威力を持っているわけで。しかも睡魔の所為でぼんやりしているから余計始末に悪かった。

「あぁもう…」

簡単に欲情してしまう自分に舌打ちしたい。
口元を押さえて顔を背けた俺をシズちゃんは不思議そうに見ていた。









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書いてる途中で思った。
ヤってる最中いくらでも見てるんじゃ…?ということにww


今更なこと

51今更なこと
(新羅+静雄)



「この間も用もねえのにノミ蟲野郎が池袋に来やがってよ」

「ふぅん。臨也も暇人だね」



静雄が部屋に訪れてから早1時間。
何をしにきたのかと思えば臨也に対する鬱憤を吐き出しに来たらしく、ずっとこの調子で話し続けている。時々こういったことがあるから今更驚きもしないし、付き合いが長いから迷惑だとも思わない。セルティも仕事でいないしね。
けれど、久しぶりに訪れて臨也の話しかしないのは何だか少し寂しくもあった。静雄の中を占める臨也の割合が高いのは分かってるんだけどもっとこうさぁ!…分かってても気分は下がるんだよ。

「新羅?聞いてんのか」

悶々と思考の渦に呑まれていれば静雄の顔が眼前に広がる。余りの近さに後退れば怪訝そうな顔。やばい。聞いてなかったとか言ったら殴られるかも。

「あ、あぁ。聞いてる聞いてる。静雄も大変だよね」

背中に嫌な汗を伝わせながら返した言葉を、何か言いたそうにしながらも納得してくれたようで。気付かれないように安堵の溜息を吐いた。

「あ。そういや」

ぽつりと呟きふと何かを思い出したのか珍しく持参していた鞄を漁っている。眼鏡のブリッジを押し上げながらそれを眺めていれば静雄の手には茶色の袋。それをずいと差し出してくるから受け取れるけれど会話の流れと全く関係がないし、分けが分からなくて首を傾げる。

「これは?」

「誕生日プレゼント」

「10日前だけど」

「細けぇこと言うな」

「中身は?」

「開ければ分かるだろ」

誕生日プレゼントの癖に買った時入れてもらった袋のままなのが静雄らしいけど、(とっくに過ぎているとはいえ)覚えていてくれていたことが素直に嬉しい。
鼻歌まで唄いそうになりながら簡単に付けられただけのテープを外して中身を取り出す。

「………静雄くん、これは何だい?」

「誕生日プレ「この本は何かな」

「ことわざ…辞典」

そう。袋から出てきたのはことわざ辞典。しかも小学生が読むような薄いもの。

(静雄なりのギャグ…なのかな)

どう対処したものかとことわざ辞典とにらめっこ。表紙には可愛いキャラクターが描かれてあって、静雄がこれをレジに持っていく姿を思わず想像してしまってあまりの奇妙さに可笑しくて吹き出した。

「いらねえなら返せ!」

「あぁっ!いらないなんて一言も言ってないだろ」

馬鹿にされたと思ったのか(してなくもないけどさ)本を取り上げようとする静雄から死守するように胸元へと抱く。

「というより、何でこれを選んだの?」

「…お前が…ことわざ好きなの知ってるから買って来たんだろうが」

それきりへそを曲げたのか静雄はそっぽを向いてしまう。機嫌をとらなければと思うのに、静雄が自分の好きなものが何かを覚えていてくれたことが何より嬉しくて。頬に熱が集まるのを感じたからそれを振り払うようにソファから立ち上がる。
思ったより勢いがついてしまったからかビクリと肩を跳ねさせる静雄を横目に冷蔵庫へと向かった。静雄の大好物のプリンを取りに。










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静雄が臨也のことばっかり話すから気分落ちてたのに、誕生日覚えててくれた+好きなもの覚えててくれた、のコンボにすっかりご機嫌新羅さん。
新羅の口調分からな過ぎてことわざも難解な言い回しも何も入れれなかったww



メールは苦手

34メールは苦手
(臨静)



トムさんの後ろを付いて行きながら次の取り立て場所へと歩いている途中、ポケットに突っ込んでいた携帯が震える。
ディスプレイを見ると臨也からメールがきていた。仕事中に送ってくるなって言ってんだろあのノミ蟲野郎。
メールを開いて見てみれば何てことない内容だったが疑問系で終わっていた為返さなくてはならない気分にさせる。仕事が終わるか落ち着くかしてからに、とも思ったが気になって仕方ない。から、携帯を両手で持ちながらボタンを1つ1つ押す。ただでさえこうちまちま打つのは苦手なのに歩きながらだから何度か打ち間違えてしまう。前を歩くトムさんを見失わないように気を付けながらやっとのことで返す。
妙な達成感を感じながら携帯をポケットに戻して歩いていればまた携帯が震える感覚。まさかと思ってディスプレイを見ればやはり臨也からで。おい、俺が返してからまだ1分も経ってねえ。
中を見れば短時間で返してきたとは思えない程ビッシリと文字が打たれてあって読むだけでも苦労した。そしてまた疑問系で終わる文章。あと少しで着くぞと振り返ることなく言うトムさんに返事をしながらまたちまちまと打って返す。
するとまた1分も経たずに返ってくるメール。イライラしながら返せばまた臨也から。何回も何回も何度返しても短時間で返ってくるメールにイライラは更に強くなる。だから何で仕事中にあいつは馬鹿みたいにメールをよゔ………っ、っ、

「だあ゙あああああうぜえ゙え゙ええぇぇぇぇ!!!」

再度メールの着信を知らせるバイヴレーションに我慢ならずに携帯を地面へと叩きつけた。
粉々になった携帯の残骸に胸のすく思いをしながらトムさんの元へと走った。



(何つーか、静雄も律儀な奴だよな)
(は?)
(や、何でもねえ)









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メールじゃなくて電話にしろよばかっ、な乙女静雄はどこですか/(^p^)\

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