フォトショップ――ジェットコースター落下中に撮影した写真を、利潤しか求めていない異常な値段で販売する店――で蚊に刺された。
コバさんが休憩に入っている間の30分間で右腕と左腕に計4発。
7分30秒に1発の計算になる。
患部の腫れ具合から察するに、敵は抜群の殺傷力を誇るヤブだ。下っ端の殺傷力で 500円玉サイズまで腫れることはまずない。
死角から襲い掛かってくるヤブの猛攻をフィーリング――僕がヤブならこうする的なノリ――でかわし反撃に転じようとしたが、奴の姿は最後まで確認できなかった。
こんなことになるなら……ふたりが初めて出会ったあの瞬間に、一切の情を捨てて奴の息の根を止めておくんだった。
コバさんに報告したらムヒパッチ貼ってくれたよ。やっぱり年上のお姉さんは面倒見がよくて頼りになるね。
腫れすぎて入りきらなかったけど。
“蚊に刺されやすい”という自覚がある僕は、夏場はいつもポケムヒを携帯するようにしている。――が、今日に限って更衣室のロッカーに置きっぱなしというシンジラレナイ失態を経験した。
次の休憩交代のときに、コバさんから奴の死を告げられた。
コバさんが息の根を止めたらしい。しかも電話しながら。
この人を派遣社員にしておくのはもったいないと思った。
コバさん「潰したら血が出た」
僕「あ、それたぶん僕の血です」
うむ、実にシュールな会話である。