話題:今日見た夢


山奥にある、とある神社の祭りへ行く途中、長い道のりの息抜きにと偶然目に入った小さな神社を訪れた。
本来の目的地である神社の分社だというその神社は、山道に面した鳥居を潜ると緩やかな傾斜が続く長い道が続いており、奥を窺う事は出来ない。

乗ってきた自転車を道の端に止めると、カサカサとした音とブーツの底で砕ける枯れ葉の感触を楽しみながら、落ち葉の降り積もった道を行く。
左右を木々が茂る中、真っ直ぐと伸びる道は幅が広く、陽の光が満遍なく辺りを白く照らす為、とても明るい印象を受けた。
暫く進むと東屋が見えてきたので、少し休憩を取る事にした。緩やかとはいえ、地味に傾斜の続く道は歩いていても足への負担が多少はある。
来た道を振り返ると、先に潜り抜けた鳥居の位置と今立っている位置の高低差が思った以上にあった。これは確かに疲れる。

東屋のベンチに座り息を吐く。
寄り道をしているが、これから向かう神社での祭りが楽しみだった。
どんな内容の祭りかは幾ら調べても『神社側から詳細な公言が禁止されている』との理由からザックリとした内容しか分からなかったが、『ある日、突然送られてきた招待状を持つ者以外、参加出来ない』『神に扮して参加する祭りで、神として一晩過ごすとありとあらゆる御利益が得られる』のだという。
手元にある招待状によれば、神の扮する際の衣装は各自持参で自由。
ただし明らかにコスプレのような衣装や肌の露出が多い衣装、神らしくない衣装は禁止らしい。
どんな格好をすればいいか散々考えた結果、黒の上下の袴羽織、襦袢の代わりにスタンドカラーの白いシャツ、ブーツに植物の蔓と花をあしらった帽子、白い顔料で幾つかの目を描き込んだ黒い布で作った面を用意していた。
コンセプトは西洋文化に片足を突っ込んだ神、という事にしている。
これも何となくコスプレのような感じではあるが、それぞれ拘って選んだ衣装で安っぽくもなく、個々で着れば違和感のないものなので大丈夫な筈だ。

そんな事を考えながら、そろそろ先に進もうとベンチを立った時だった。
突然、奇声と共に私の目の前に躍り出る者が現れた。
驚きのあまり悲鳴も出せずにいると、その人物が立ち塞がる。
山伏のような姿をしており場所が場所なので天狗かと思ったが、身に付けている装飾品が現代的なのを見るに人間らしい。
恐らく、私が参加しようとしている祭りの参加者なのだろう。目的の神社も此処からそう遠くないし、祭りが始まる前に散策しているというところだろうか。

自身が祭りの参加者である事を伝えると、山伏は成る程と一言呟き面白い事を教えてくれた。
祭りの参加者が神に扮すると、不思議な力が得られるというのだ。
自分の場合は空を飛んでいるかのような跳躍力が得られたと云うと山伏はその場で軽く飛び跳ね、ふわりと宙を舞った。その姿はまるで本物の天狗のようだ。

君も早く神に扮するといい。
それから改めて此処に来ても遅くはない筈だ。

そう云うと山伏は空を蹴るようにして、その場から飛び去った。

面白い事を聞けた。

その一心で元来た道を駆け降りる。
自分は一体、どんな力を授かる事が出来るのだろう。
さっきの山伏のような跳躍力だろうか?
それとも、それとはまた違う力だろうか。
扮する姿によって力が変わるなら、恐らくは…。

高揚感によるものか、飛び跳ねるようにして道を駆ける脚が身体がやけに軽い。
全身に受ける風を感じながら、私は鳥居を潜り抜けた。



残念ながら神の力を授かる前に目が覚めてしまった。
どうせなら授かった力を堪能してから目を覚ましたかった。

因みに、神といえば和装で面や布で顔を隠しているか、或いは頭部が異形(角が生えている、そもそも人のそれとは違う等)のイメージがあるのだが、他の人はどんなイメージを持っているのだろう。