memo
2022.8.15 23:12 [Mon]

コーネリアス・ヒッキーという男について。
ザテラー感想と銘打ちましたが、ぶっちゃけほぼヒッキー君の話です。いきなり大嘘から始まってごめんちゅ。

1.弁舌
 1話スタートからいきなり独特のトークをぶちかますヒッキー君、話の内容は正直よくわからんのですが(無知)、日常会話からこんな感じなのかこの男………というのが印象的でした。続けて見てたら余計に思うけどヒッキー君の語り口っていつも扇動的で弁論的というか、つまるところ演説っぽいんだなぁっていう。そこから思うのは、ああこの子はこの口先と頭であらゆることを乗り越えて乗り換えてここまで生き繋いでのし上がってきた子なんだなと。詭弁にも聞こえる論で周りを巻き込み動かし弄して生き繋いできたんだなと。そういう人って常に観察と思考を続けて些細な日常から脳を動かし続けて論で喋るのが癖になるところあると思っているので、彼もそうなんだなぁと。
 ただそういうのってある一定以上の脳や教養や視野を持つ人には効かないんですよね。だからグッドサー先生には効かなかったし、アーヴィング海尉が死んだ云々の時も疑いが大きかったのあるんだろうなぁと思いました。(海尉のときはサイレンスの拉致という前科もあるからだろうが)
 あとそんな舌で生きてきたヒッキー君が最後に舌を捧げるのとってもエモーショナルですね「新たな世界へ行く」という行動の象徴としてこれまでの世界を生きるための道具だった舌を捧げ捨てたという意味合いもあると思っています。見た瞬間はヒッキー君のタン!!!!!!!!!!!!!!!!で脳が埋まりましたけど。どうでもいいですが牛タンのスライス前の塊ってめっちゃグロいよね。

2.成り上がり
 ヒッキー君、とにかく下克上スピリットとというか、どこまで自分が行けるか、成り上がるか今より上の世界へ行けるかという気概が凄い。常に自信満々でニコニコ余裕のある笑みを浮かべて皮肉っぽく口の片端を吊り上げていて、さも「俺は余裕だ、俺は全てわかってる」と全てを一つ上の段から見下ろしてるような感じがすごい。実際頭がキレて観察眼があって行動力があるので間違いではないのだけど、そういう存在なんだ!というのを全身で主張しているような印象を受けました。
 あとツイッターでも書いたけど、追い詰められれば追い詰められるほど、煽られればられるほど不敵な笑みを浮かべるヒッキー君、あれは精神的な余裕からくるものじゃなく、ははぁそうなるか、さぁじゃあ俺はどうしようか?という余裕を持った思考へ持ち込むための動きなんだと思った。精神が顔に現れるのではなく、精神を持っていくための形。窮地を楽しむ人間ならああはならん(もっと破滅的でわざと掻き回すような男になるはず)と思うので、本心から楽しんでいたわけではないと思うんですよね。あれはヒッキー君が頭と口先で生きていくために身につけた術の一つなのだと思った。追い詰められて焦った思考からは何も生まれないし狭まった視野では何も見えませんからね。
 あとは単純に余裕をアピールして相手に舐められないためのものでもあるんだと思います。まぁ男の世界舐められたら終わりですからね。戦術の一つとしてとても正しいものではあるけどあそこまで常に顎を上げてニタニタとしてるのは強いなーと思った。どんな時でも隙あらば、わずかでもチャンスがあれば掴みかかって乗り込もうとする感じがある。野心的なんだけどあの余裕の笑みと時折表す謙虚さと優しさでその野心が不気味に霞むんですよね。マジで演技がうますぎる、アダムナガイティス氏。(これ多分あと5回は言う)
 上官へは謙虚に、同僚には時に優しく振る舞うヒッキー君、全くが演技とは思わないが、七割くらいは地盤固めなんだろうなぁと思う。が、それにしてはムーブがうますぎる。それも恐らくは生きていく中で後天的に学びとって行ったムーブだろうに。逆に何故ギブソン君の時はあんなに下手なのだ。そらぁもう、愛、やからやね……愛はアンコントロールですからね、さしものヒッキー君もギブソン君相手には一枚外皮が剥がれてその心の肉が見えるようである。これについてはまた後述します。

3.船長室での会話/9話での会話、教祖の素質
 船長室のトイレを直してた時(余談だけどあんな思いっきり部屋の中にトイレがあるのが理解できなくて最初誤訳か?とか思ったすみません)のフランシスとの話し方と、9話で捕らえてきたフランシスとの話し方の差がすごく印象的だったんです。あまりにも様変わりしてて、ヒッキー君の中で何かあったんだろうなって思って。猫かぶる必要がなくなっただけではない何かがあるなと。多分ヒッキー君の中で何かが大きく変わってるなと思ったんです。
 テラーとエルバスがきちんと運航していた時=既存の社会倫理が機能していた時、ヒッキー君はフランシスを敬い、部下として気に入られようとしましたね。まぁ上下の差がガッツリあるので当たり前なんですけど、この時のヒッキー君には「この社会構造の中で上手くやってじわじわのしあがってやろう」という印象があり、船長に成り代わるだとか、船内の社会構造をぶち壊して一から作り変えてやろうなんて気概は感じなかったわけです。ギラギラはしてたけど。
 そんで、倫理の崩壊後、ヒッキー君はフランシスを対等に扱いあの頃なら考えられない態度で話した。まぁこれでやっぱあん時猫被ってたんやね(そりゃそう)が決定的になったわけなんですけど、この時点のヒッキー君はもう既存の社会構造に一切囚われてなくて(フランシス側の人々が艦長命令を重んじたのと対照的に)フランシスを全く艦長として扱ってなかったなあって。いくら本心では敬ってなかったり上下を感じてないとしたって、普通の人なら多少の躊躇いや前置きがあるもんです。実際ヒッキーさんがあなたを館長と呼ぶなと…と言った子がいたように。でもヒッキー君はもうまるっきり捨ててしまってるんですよ、その頃の感覚を完全に切り捨ててる。これってただ社会構造が壊れただけではなり得ないというか、普通状況に心身が追いつかないもんなんですけどバッキリヒッキー君は適応しとるわけです。しかもさらにここに新たな社会構造を築いている。ここにヒッキー君が感情先行型ではなく論理や合理性先行型人間であることを感じるわけです。
 あとヒッキー君って教祖の素質があるじゃないですか。余裕の笑みと魔力のある瞳で心を捕まえて人を宥めすかして耳障りのいい言葉で絡め取って機転の効く頭で人々を先導していく、教祖の才覚があると思うんです。それがあればハナから社会転覆を望めそうなものなんですけどあくまで遭難まではヒッキー君にそれはないんだよなぁ。そう思うとヒッキーの脳には自分がどこまで上に行けるか、そして人々を掌握できるかという考えはあったにしろその外側には既存の社会構造、社会倫理が建ってたんですよね。
 つまるところ何を言いたいかというと、ヒッキー君もあの状況、あの世界に「変えられてしまった」人間なんだなということです。生まれながらの教祖ではなく、環境の影響を受け適応し変わり続けてきた男。誰よりも人間ですよ。やろうとしてやったわけではなく、状況に適応した結果、生きようと足掻いた結果変わってしまった、変えられてしまった一人であるというのを思って、ヒッキー君の人間さを感じてウッヒョー!!!!人間ダァ!!!!!!!て一人でワッショイしてました。今夜はカーニバルだぜ!!!!ポゥ!!!!

4.たった今盗んだ誓いの指輪を君に贈るよ
 ギブソン君とのあれこれ。
 ギブソン君とのなれそめっていうか始まりは多分情報収集とかの地盤固めの一環だったんだろうけど、かと言ってそういう立ち回りや諸々でさえきっとヒッキー君は自分のやりたくないこと、趣味嗜好に反してまでのことはやらないだろうから(なにせ全力で生を謳歌しようとしている印象がある(後述))ギブソン君はやっぱりヒッキー君の好みなんだろうし、ヒッキー君が愛を抱くのも必然というか、別に計画外ではないんだろうなと思った。にしても本当普通にギブソン君のこと好きなの出ててかわいいね?!?!?!もうやだついてけない(>_<)!て言われたら一生懸命にご機嫌取りに俺は将来有望だぞ?とか盗品の指輪をあげて愛を示したりだとか。
 ていうかヒッキー君がフランシスのお酒飲みねぇ!を勘違いしちゃったの泣けるな。海軍の皆さんのことを知らなかった(その世界の知識や感覚がなかった)のは勿論だろうけど、ヒッキー君の生きてきた世界ではきっと飲みねぇ!はあり得ないことだったんだろうと思う。多分本当にひどい生まれ育ちをしたんだろうと(後述)(後述多いな)思うんですけど、そんなヒッキー君の世界からしたら上官が(たとえ良心的な人間であれ)自らと同じコップで自分の酒を分け与えてくれるなんてよほど出来事なんだろうと思ったし、それを聞いたギブソン君の「おいおい君ってやつは……」なそんなことよくあるよ、という受け取り方の違いが本当に胸に刺さりました。ギブソン君とですらきっととても生まれや生きてきた環境に差があるんだろうなぁ……………………………
 きっとヒッキー君の人生は常にサバイバルで、今回のサバイバルレベルなんて今までも近いことがあったレベルなのでは、人を喰おうと思ったことが今回で初めてではないのでは、と思った。だからこそ未だ人間であり続けたヒッキー君があまりに愛おしい。
 話が逸れてしまいましたが、ギブソン君に対してやっぱ愛があったヒッキー君、愛があるから嫌がらせもするし気をひこうとするし死にかけてたら真っ先に殺したのかなと。
 ヒッキー君、常に周りに見下すように顎を上げている姿勢が印象的ですが、明らかに俯いて下を向いていたシーンがあって、カーニバルの夜事故的に医師を刺し殺してしまった時と、ギブソン君がもう永くないとわかってテントにナイフを取りに行って戻ってきた時なんですよね。ヒッキー君にしてはあり得ないくらい俯いていた。前さえ見てなくて、下しか見てない。だからやっぱり心では殺したくはない、悲しい、という気持ちと同時に彼の中の合理性とそして愛しているからこそ早く楽にしてやろうという気持ちが働いたのだと思う。そしてグッドサー先生を捌いたことで人が捌けない(食べ方がわからん)というのが嘘であることがわかって、ギブソン君を捌かなかったのはやっぱり愛があったからできなかったんだろうなーッッッッと思って大の字になった。大地。ひろーい。
 ギブソン君への態度だけはどうしてもどんなに取り繕っても本心が垣間見えるの、ヒッキーくんの心の腑が見えるようなのとても良い。ギブソン君が具合悪いって言った時にバッ!とグッドサー先生へ向けた顔の「治らないのか」と言う表情。治らないことは分かってて「明日も引けるか?」と聞く癖に表情にはなんとかならないかという気持ちが滲み出ている。口から先に生まれて口に出した言葉を感情としてそのまま自分にインストールするような男が、口と顔が言ってること違うんですよ。ラブじゃん。めちゃくちゃらぶだよ。ラブ、でっけぇ。
 そしてヒッキー君からのラブはよく垣間見えるのだが、常に困り顔というかウゥッて顔でついてきてたギブソンがヒッキーからもらった指輪、それも盗品の指輪を大事に首にかけていた事実!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ウワアアアアアアアアア!!!!!!!!!ドチャボコべキャバキャ両想いじゃん!!!!!!!!!!!!いや正直、ヒッキーからの矢印はビシビシ見えてた(これも本当に永井氏の演技が上手い。ヒッキーの胡散臭さの中に三割くらい本心からの愛を滲ませてるからちゃんと誑かしてるだけではないことが伝わる)んですけど、より内向的でヒッキーに辟易してるところもあったギブソン君がこんな静かに愛を胸に秘めてたなんて思わなかったんですよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!顔と口ではもうついていけない、またヒッキーが何かやらかしてる、といった感じで鞭打ちのシーンでさえ静かに見守っていたギブソンがまさか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!エーーーーーーン愛じゃん😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭それも盗品ですよ?盗品であることを隠しもしない、サイズも合わない、そんな指輪ですら、目を閉じて、とドヤ顔で愛の証として渡されたら嬉しかったんだこの子は!!!!!!!!!!!!!!!why!?!?!Soそれは愛してるからだyo!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ましてギブソンは曲がりなりにもヒッキーに反対意見を言える男である。そんな男が盗品の指輪を胸に納めて、そして最期までついてきたというのはやはり愛でしかないわけですよね。ヒッキーのこと好きだったんだなぁ。泣きそう。あのシーンはいたいけな少女への指輪を盗んだヒッキーの悪役としての悪行の証左であり、ギブソンの愛の証左でもあるわけですね。
 そしてギブソンの肉を食べるヒッキー。その顔は不思議な表情をしている。悲しさもあるように見えるし、味わう恋人の肉に興味深さもあるように見える。君はこんな味なのかと語りかけながら味わっているようにも見える。恋人の肉を食らうことをまだ己の哲学に加えられていないような、言葉にできない複雑な表情をしている。言葉にできない表情というのは、言葉にできないだけに、ただ感じ発するしかなく表現するのはとても難しいものだと思う。やっぱりアダムナガイティスは天才だ。恋人食べたことあるの?
 ギブソンが病であることを知った時、ヒッキーは「禍を福に転じる、いつもそうだろ」と言った。彼にとっての「禍」は愛するギブソンが病で弱っていること、長くないことで、それを食肉にありつくという「福」に転じたんですね、今までの人生のように。あれはギブソンに言い聞かせているようで自分にも言い聞かせているのだろうと思った。

5.鞭打ち
鞭打たれティス!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!いやマジでとんだド癖シーンがあるのは知ってましたけど寧ろ癖よりもあまりの美しさにびっくりしてしまった。めめめめめめめめめめめめめめめちゃくちゃきれいじゃないです??????????あのシーン。机に腕を広げるように縛り付けられたせいで細い肩の筋肉が鞭打たれるたびに蠢いて本当、フォロワーさんも仰ってたんですがマジで宗教画のキリストの磔刑のような美しさと妖艶さがあってオアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッてなったしぬささる無理無理無理無理。痛さは感じられるけど弱さや心が折れた様子は一切なく最後も笑って去ったのがマジでヒッキー君でウオオオオオッッッッッてなりました。良すぎて言語が消える。痛みにうめくあの顔の、それでもなお力を失わない瞳の強さ、美しさたるや……………………………痛そうな演技がマジで痛そうでこの人本当に鞭打たれ経験ある……?てなりました。もう天才を超えて変態では?(褒めてます)
 あと絶対に悔い改めないどころか悔い改めなければならないことだとさえ思っていない感じがすごいですね。絶対的な自信を感じる。そりゃああの男、人一倍観察して人一倍常に脳を回している実績と自負がある。誰よりも考えつくしている自負とプライドがある。それだけ考えたのだから間違っていようはずがないのだ。正義の反対はまた別の正義と言うが、まさにそんなようなもんで、ヒッキー君の考えはあの社会では受け入れられなかったがだからと言ってそれが「間違い」であるとは彼は決して思わない。彼の考えもまた別の正義であるだけなのだ。だからヒッキー君は折れないし改めない。
 本物の鞭打ちってマジで肉が裂けてやばいらしいんですよ、映像でも血が飛び散ってたしめっちゃ傷だらけでしたけど、本当に肉がえぐれるレベルなんだそうです。背中とかヘタをすると骨が見えてしまうことがあるほど。(昔SMの知識を掘ってた時に聞いた。なんでも学んどくもんである)その耐え難い痛みを、痛みに涙すれどその強靭な精神力で乗り越えた彼の自信と確固たる自己の倫理観たるや!!!素晴らしいですね。本当に教祖の素質がある。人は自分より圧倒的にイカれた存在に惹かれるものです。自分がひっくり返ってもできないことができる人間、根拠が不明であっても圧倒されるほどの自信に満ちた人間。そんなのってね、普通に考えたらイカれてるんですよ。でも本人がその圧倒的なほどの自信を持って俺はマトモだと言えれば、それはそうなのです。それができる人間だけが人を煽り人を支配し人を誑かし人を操れるのです。
 あとシンプルにおしり綺麗でしたね。ヒッキー君の時めっちゃ絞ってるっぽいからバックリー君と違っておしりもちょっと小さくて(当社比)めっちゃ綺麗だった。昔海外クラスタさんが「このシーンの大理石の像が欲しい」て言ってた気持ちがあまりにもわかった。ミケランジェロ!!!!!!!!たのむ!!!!!!!!!!!!!!!!!!

まだまだ続くんじゃ
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