ついさっきまで『この世界の片隅で』だと思ってた。

日常過ぎて、普通過ぎてつらかった。
涙が止まらなくて首が涙で濡れていた。
私は泣くと鼻水が止まらなくなるんだけど、全く鼻水が出なかった。
いや、ふざけてるんじゃなくて、何か涙の質が違うというか。
悲しいとか怖くて泣いてるんじゃなくて、ただ静かに幸せが壊れていくのを茫然自失で見つめていたら自然に涙が溢れる感じ。
ほんとに絶望の淵に立たされた時に流す涙ってこんな風に無の状態なんじゃないかな。
映画自体が絶望とか幸せが壊れるって表現してるんじゃなくて、観てる自分の感覚の話。
面白い!とか好き!って映画ではないのに何度でも観たくなる、そして観るべき映画かもしれない。
とりあえずこれを見て戦争しようぜって奴はいないんじゃないか。
話題になってからだいぶ経つけど、のんに激似の子の顔を見てたら無性に見たくなったという、のんから入った私。
すずさんの声、良かったです。
感想らしい感想がない。
教訓しかない。戒めかな。
好きなときに好きなことができること、好きな場所へ行けること、暖かい家があること、空襲に怯えなくて済むこと、
家族が生きていること、食べるものがたくさんあること、自由すぎて不自由を感じることさえあること、そして笑っていられること。
些細なことも全てが大きな幸せ。
幸せに感謝。
忘れちゃうんだよなぁ私は。
よくここにも書いてるけど、あの時代を耐え忍んだ全ての人が今を造った。
あの時代の日本人は『やりたくない』では済まされなかった。
無理だと思っても逃げ出せなかった。
私には耐えられないだろうな、って想像すること自体が愚かなことで、
戦争はどれほど善良な市民であっても区別なく、慎ましく生きてきた日常を破壊した。
すぐに忘れちゃうんだよなぁ私は。

皆黙って立ち上がれなかった。
黒こげの死体を映像で見るより、リアリティがあった。
残虐なシーンを見せて悲惨ですよ、戦争はだめですよって言うより、顔がある人々の日常がゲームのように壊されていく様は、残酷だった。
平和という言葉の重みが、今どうしようもないほどのしかかってくる。