◇追記からどうぞー!(・∀・)
「ちょっとご近所さんにお味噌お借りしてきますねっ!」
「だめだ!!」
「えぇっ!?」
仕事から帰って来ると、ちょうど夕飯がもうすぐ出来上がるところだった。後は、味噌を溶かせば完成というところで俺の嫁さんは、はた、と気付いたらしい。肝心の味噌が家にないことに。
味噌がなければ、当たり前だが味噌汁は完成しない。
そして味噌を隣の家に借りにいこうと思ったらしい。
信じられないことに、"一人"でだ。
「ど、どうして駄目なんですか?」
千鶴は理由がわからないらしく瞳を白黒させている。
「なんでって、おめえ…」
「はいっ、なんでですか?」
まるでわからないというようなきょとんとした顔がまた可愛い。
「お前が可愛いすぎるからに決まってるだろ!!!」
「えぇえっ!?」
まさかそんな理由で?、と言わんばかりの顔をした俺の嫁さん。わかってねえな。
「いいか、今のご時世誰が見てるかわかんねえんだぞ。それにもうこんな時間なんだ、危ねえじゃねえか」
「こんな時間って…あの、まだ夕方ですよ?そんな暗くないですっ」
「いいや、十分危ねえ!」
こいつはわかっていねえ。外を一人で出歩くということがどんなに危険かを。
隣近所の家に行くまでに、怪しい男が千鶴に声をかけるかもしれない、それどころか味噌を貰った帰りに、千鶴が油断しているところを、お前をずっとつけていた男に攫われるかもしれないんだぞ!
と自分の可愛さをわかっていない嫁さんに説明してやると、千鶴はやはり納得していない顔だ。
「で、でもお隣の家はすぐ隣ですよ、全然危険じゃないです!」
「馬鹿野郎!変態をなめるんじゃねえ!いつ何処でお前を狙ってるかわかんねえんだぞ!」
思わず怒鳴ると、千鶴がビクッと若干怯えてしまったので、慌てて、自分を落ち着かせる。
「怒鳴ってすまなかったな。でもな、ほんとに危険なんだぜ?」
すると千鶴は、おずおずと口を開いた。
「あの、でも左之助さん。私ずっと思っていたんですが、」
「なんだ?」
「私なんて全然可愛くないので、男の方も見向きもしないと思うので大丈夫で、」
「馬鹿野郎!!!!」
「ええっ二回目?!」
なんてこった。
俺の嫁さんが、ここまで自分の可愛さを自覚してなかったとは。
「いいか、千鶴。考えてもみろ。お前は可愛い」
「かっ、可愛くないです!それは左之助さんがわ、私の夫、だから贔屓目で見てくださってるだけで…」
夫婦となって随分経つのに、未だ「夫」と呼ぶのを恥ずかしそうにしている。くそ、そういう初々しいところも可愛いんだよな。
「何いってんだ。誰が見てもお前は可愛いだろ。この前だって、お前、俺がちょっと目を離したら男に話しかけられてたじゃねえか」
「え?あれはただ、道を聞かれただけですよ?」
「その後、お茶に誘われてただろ」
「それは、道を教えてくれたお礼にと、親切におっしゃってくださっただけで、」
「そんなただの建前に決まってんだろ。あいつの目的は確実にお前だった」
俺がわざとらしく千鶴を親しげに呼ばなければ、確実にお礼と称して、連れていかれていただろう。
「まだあるぞ。この前はお前に鼻の下伸ばした野郎三人に囲まれてたし、一昨日船に乗ったときも、船酔いしたとか見え透いた嘘つきながらお前にもたれかかってきた男がいたし、昨日なんて家まで口説きに来てた奴がいたじゃねえか」
「えっ、そんなっ、ちがいまっ、って、えっ、口説きって、ええっ?!」
どうやら全く気が付いていなかったらしい。
心底驚いた顔で、俺の方を見ている。
「ああ、あれはどうみてもお前を口説いてたな」
「そんな、でも、えっと、」
「わかったか。千鶴、お前は可愛い。だから、一人で出歩くのはやめろ。用事がある時は俺もついていくからよ」
大方、自分は全然可愛くないし、自分の用事で仕事帰りの俺をつれ回すなんて申し訳ない、と思っているが、俺にここまで強く言われると言い返す言葉が見つからないと言う感じだろう。
千鶴は眉をハの字に下げて、とても困った顔をしていた。
ああ、そんな顔させたいわけじゃねえんだけどな。
ただお前が愛しい。
こいつに会うまでは、色恋で相手に夢中になるなんてことはなかった。
女を喜ばせながら、何処か冷静な俺がいた。
大の男が嫉妬なんてみっともねえ、とも他の奴らを見て思っていた。
しかし、今はどうだ。
目の前にいる女が愛しくて仕方がない。
嫉妬なんてしたことがなかった俺が、千鶴のことになると、冷静になれやしない。
こいつが一人で出かけてたら心配でたまらないし、ましてや男に口説かれているところを見たときなんか、周りの目も気にせず、カッとなって男を殴りそうになったことだってある。
自分から見ても、今の俺はいちいちつまんねえことで嫉妬するみっともねえ男だ。
「…すまねえな、俺のみっともねえ嫉妬っていうのはわかってんだ」
スッと千鶴の頬に触れると、戸惑いがちに顔を上げ、俺のほうを見る。
「ただ愛しいお前のことになると歯止めがきかねえ……こんな俺は、嫌いか?」
「………なんかじゃないです」
「ん?」
千鶴が何といったのか聞き取れず聞き返すと、顔を赤く染めながら言い直す。
「…嫌いなんかじゃないです。あなたのそんなところも含めて…あ、愛していますから!」
次の瞬間にくる胸への暖かい重み。
「!」
やられた。
俺の嫁さんが時折大胆であるということを忘れていた。
まさかの愛の告白に、抱きつきまでついてくるなんて思わねえよ。
「…たくっ、お前にはかなわねえな」
「えっ、あっ、すみません?」
わけもわからず思わず謝る千鶴が可愛い。
ああ、ちくしょう。なんでこいつはこんなに可愛いんだろうな。
「…あっ、あの左之助さん、」
「ん?」
「どっどうして私押し倒されているのでしょうか?」
「そりゃあ決まってんだろ」
首筋に接吻を送ると、千鶴は益々真っ赤になりながら、俺が押し倒した意味を完全に理解したのだろう。
焦った顔になる。
「ああぁの!ごはんが冷めてしまうので!」
「お前のうまい飯も食いてえが、今はお前を食べてえんだ」
「いやっ、でも、そんな、まだ夕方…」
みっともなく嫉妬するのも、構いたくてたまらなくなるのも、そしてすぐに押し倒して食べたくなるのも、
「というわけでいただきます」
千鶴が可愛いすぎるのが悪いよな?
end.
*さのさんは千鶴ちゃんにベタぼれだといい。さの千夫婦はラブラブぶりが半端ないと思います(^ω^)
2011-12-6 08:25
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