13/12/08 23:40 (:みる・きく)
シメールの翼に乗って


先週、パナソニック汐留ミュージアムの『モローとルオー ―聖なるものの継承と変容―』展に行って参りました。

初めて降りた新橋駅でJRと東京メトロの出口を勘違いし、危うく迷子になりそうでした…。
パナソニックビルは駅から間近だっただけに、何だか悔しかったです。(笑)

その4階にある汐留ミュージアムは、元々ジョルジュ・ルオー作品の蒐集に特化した美術館とのこと。
この企画も彼の師であるギュスターヴ・モローとの二人展という、珍しい形になっています。
とは言え…私自身は圧倒的にモローが大好きなので、少なからず偏った見方になっていると思いますが…。

生前の彼が画家としてより美術学校の教師として人気があったことは既に知られていますが、以前の私にとってはかなり意外に思えました。

耽美と退廃の19世紀末美術、そして象徴主義を代表するモローが、学校の先生というのが何とも不思議だった訳です。

しかし教え子のルオーやマティスらは全く異なる画風ながらも、その後20世紀の新しい美術を生み出していくことになります。
独創性ゆえにサロンからは受け入れられなかったモローだからこそ、自分の内なるものを表現する自由を生徒たちに教えることが出来たのでしょう。
デッサン至上主義だった当時の美術学校では、間違いなく破天荒な先生ですね。(笑)

そんなモローが特に目を掛けていた生徒こそ、ジョルジュ・ルオーだったと言われています。
公開されていた2人の書簡での遣り取りからは、作品についての相談と助言のみならず、お互いの暮らしや体調を気遣う様子も伝わってきました。
特にモローは神秘的なイメージを裏切って、ちょっと叱ってみたり、ぼやいてみたり、父親が息子に宛てて書く手紙のようで微笑ましかったです。

二人展という特色を活かし、それぞれが影響を与え合っていることが分かる展示の仕方も秀逸でした。
例えばルオーの『我らがジャンヌ』とモローの『パルクと死の天使』が並んでいると、モチーフと色彩の共通点を見比べることが出来ます。

ちなみに『パルクと死の天使』を目の前にした時には、画集では分からなかった鮮烈な迫力を感じました。

死の天使の赤と彼が跨る馬の黒、その手綱を握る運命の女神パルクの青。
この色彩から…絶対的な力を持つ死を、運命が粛々と導いてくるイメージが喚起され、私は初めてこの絵を理解することが出来た気がしました。
これが彼らが求めた色彩の力なのでしょう――やはり絵画は実際に見ないと分からないことだらけです。

そしてモローの話ばかりで申し訳ありませんが(笑)、ギュスターヴ・モロー美術館からやって来た作品たちに見惚れてしまいました

大好きな『一角獣』を日本にいながら見れるなんて…!
長いこと画集で憧れてきた絵画が幾つもの目の前にあると、にわかには同じものと信じられなくなりますね。

一番の大作は『ヘラクレスとレルネのヒュドラ』でした。

緻密なのに幻想的、私が一番好きな時期のモローです。
これらが展示されていた部屋は思わず3周してしまったので、もしかしたら学芸員さんに面白がられていたかも知れません。(笑)

勿論、ルオーの作品も充実していましたよ!
『聖顔』には素朴ながらも神々しさを感じましたし、もっと彼について知りたくなりました。
この師弟について“全く異なる画風”と前述しましたが、精神性は受け継がれ独自のものへ昇華されていたのですね。

という訳で、今回は2人の親子のような深い絆を中心とした、心温まる企画展でした。
画家は作品の影であるべきと考えるモローの意志には反するかと思いますが、彼の素顔も垣間見えるようで面白かったです。
11月の初めには皇后陛下もいらしたそうで、規模は小さめながらも充実した内容でした。

お楽しみのお土産は図録、A4ファイル、ブックマーク、そしてお約束の?絵葉書まとめ買いです♪

それにしても、浅学の身でありながら長々と語り過ぎてしまいました…。
ここまで飽きずに読んで下さった方がいるなら、その忍耐力に讃辞を捧げたいです。(笑)

話題:美術館・博物館

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