僕は走っていた。シロの手を繋いで、彼女を助ける使命のようなものを身勝手に感じながら。赤紫の空が僕らを覆う。足元では草がそよいでいる。ざわざわ。ざわざわ。
空の向こう側に浮かぶ島。大地をくり貫いて引っこ抜かれたそれは、機械も何もなくただ当然のように浮いていた。ここからだと崖のような下部しか見えないけれど、僕はそこに城があることを知っている。僕らの走る先が地の終わりだということもまた、悟ってしまっていた。

駆けている間に大地の果てに辿り着いていた。ようやく立ち止まる、息は切れていないのにひどく焦る僕がいる。赤紫の空を見下ろして、浮かぶ離島を見下ろして、さあ、今すぐあちらへ飛び移らないといけない。僕らを迎えるように小さな柵が開いている。そこ目掛けてさあ飛ぼう。シロの手を、離した。きょとんとした顔をする彼女、背中で可愛いなって思いながら、僕は飛ぶ!

コンクリートと排水溝。空はいつのまにか灰色の路地裏へ早変わり。
痛みは無いけど僕は死ぬ。ああ駄目だ、こんなの駄目だ。

そう、シロがあそこで僕を引き留めてくれたら。



そしてまた僕は、シロの手を繋いで、赤紫の空の下を駆けていた。
大地の果て、狭く遠いあの柵を越えなくては。シロの手を、離す。
離す、はずが、シロは僕の手を掴んだままで、首を横に降る。泣き出しそうな顔をして、僕にはその理由がわからない。
一人は嫌か、なら一緒に飛ぼうか。
シロの手を引いて、また、僕らは飛んだ。


あの離島に、あの城に辿り着けたのかは、わからないまま。





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シロはデッドマンワンダーランドのシロちゃんです。