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「ちぇっ、またかヨ」
教師から手渡しされたその紙に、さらりと目を通す。
バツ、バツ、マル、バツ、バツ、バツ…
これでもか、という程バツを大量につけられた答案用紙。
僅かに入るマルが妙に浮いて見える。
「どうしたの、神楽ちゃん」
休み時間、私が明らかに不機嫌なのを見かねて声をかけてきたダメガネ。
くしゃり、と縮めた答案用紙を見れば
「あーあ、駄目じゃないか」
と言い私の手元からそれを取り上げる。
見ても大丈夫?と聞かれたが、返事をせずにそっぽを向いた。
見るからね、の後に生じた僅かな沈黙が欝陶しい。
「…神楽ちゃん、数学苦手だっけ?」
「この単元とは仲良くなれないアル」
そっぽを向けた顔を再び新八に向ければ、どうしたものか、と言った表情。
更に生じた沈黙の後、何を言い出すかと思えば。
「教えようか、ここ」
「…はぁっ?」
発せられた言葉があまりにも想定外だったから、間の抜けた声を出してしまった。
「一応何問かは出来てるし、これを見る限りではもう少し頑張れば出来そうな気がするんだけど…」
「お前、数学得意だったアルか」
「いや、得意ではないけど、この単元は一応理解してるから」
「…ダメガネのくせに」
「なっ…とにかく、神楽ちゃんさえ良ければ教えるけど」
良ければ、って。
そりゃあ勉強なんて御免だけど。そうなんだけど。
「…酢昆布3箱で教わってやらない事もないアル」
「いや、おかしいからねソレ」
数枚の小銭で繋がる時間は、安上がりなのか、それとも。
みずいろの風景と君
(放課後に此処で、という口約束を交わした所でチャイムが思考を遮るから。)
(私は結局分からずじまい)