文倉庫


2010/2/22(Mon) 18:01

眼下で揺れたハルジオン

「なあ月詠、」
「ん?」
「お前は、さ」

月明かりを眺め、一旦視線を落としてから呟く。

「寂しくねーのか」
「…何がじゃ」

視界の端で捉えた銀色は、月明かりを浴びて金色に近くなっていた。

「女を捨てたことが」

 

 

直ぐに返事が出来なかったのは、きっと

「お前は事あるごとに『わっちは女を捨てた』って言って片付けるけどよ、
そのくせ急に切なそうな目をしたり、泣きたそうな目をしたり…」

「…何が言いたい」

綺麗だ、と思っていた月明かりがぼやけたから。

 

「俺にはお前が十分女に見えるってこと」

 

 

まあるい月が歪むまで、あと少し。

 

 

 


眼下で揺れたハルジオン
(ゆらりと歪むそれは、)




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