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「旦那ァー」
いますかィ、と普段よりも数段大きな声で玄関から呼び掛ける。
しかし、勢いよく戸を開けたのは、万事屋のチャイナ娘。
「おいサド、朝っぱらからうるさいネ!」
「もう昼でィ。旦那は?」
「銀ちゃんなら仕事ネ。用事なら預かっとくアル」
「てめーに依頼なんて預けられる訳ねーだろィ。すっこんでろガキ」
「オイ今なんつったァァァ!ガキにガキなんて言われたくねーヨ!」
こいつと話していると、条件反射のように皮肉を返してしまう。
その結果、いつものように取っ組み合いの喧嘩。
「喧嘩する程仲が良い」なんて気休めの言葉を信じる気はない、それでも。
幸せ、とは言える訳のない状況だが、あながち悪くないと思ってしまう。
‐‐‐‐‐‐
台所で昼食の準備をしていると、玄関の方から2人が喧嘩をしている声が聞こえた。
いつもの事なので仲裁には行かない。メキッ、などと物がはぜる音がした時にはもう手遅れだが。
僕は知っているのだ。
喧嘩をしつつも彼女が見せるのは、僕は見たことの無いような表情で。
そして見る限りでは、彼も、きっと。
ぼんやりとそんな事を考えていたら、鍋がカタカタと音を立てた。
もういい、考えるのはやめよう。
答えなど見え透いているのだ。
おたまを手に取り鍋の蓋を開けた時、怒鳴り声だけではないバキッという音を聞いた。
思わず笑ってしまう。
pain
(昼食が出来たら、そろそろ喧嘩の仲裁に)