文倉庫


2010/2/22(Mon) 17:48

一片の光(幼少夜兎兄妹)

「ねぇ神楽」
彼女は泣きじゃくる。
「神楽ってば」
彼女は泣きじゃくる。
涙を止めてあげるにはどうしたら良いのだろう。
言葉をかけても無反応、抱きしめたって爪を立ててしまう。
実に情けない兄である。

血の染み付いたこの手で妹に触るのは、どうも抵抗がある。
何も出来ないくせに、汚したくはない。

戦うのも、人を殺めるのも、好き。
こんな事を言ったら一般人は厭がるが。
自分をこうさせた血が、妹にも眠っている。それは曲げられない事実で。
いつそれが覚醒するかは分からない。
彼女が何を幸せとするかも分からない。
何も分からない、でも。

 

「ごめんね」
爪を立てぬように抱きしめた。
彼女の涙は止まった。

 

 

未来、彼女が「幸せ」と言えるように。
それを自分で探せるように。

 

それまでは、どうか傍に。

 


一片の光
(願うことはできる)

 


.




comment 0

prev   next
[このブログを購読する]


back


-エムブロ-