文倉庫


2010/2/22(Mon) 18:07

雨色ラプソディ

例えば、傘の縁から雫が零れたとか
そよいだ風に黒髪が揺れたとか
差した光に淡い虹がかかったとか
そんな、些細なこと。

 

 

「雨が踊っているみたいアル」
右手に荷物、左手に私の傘を持った新八の横で、私は雨が傘をたたく音を聴いていた。
相合い傘をするために伸ばされた彼の左手は、ぷるぷると震えている。
「ちょ…神楽ちゃん、交代!」
「えー…根性ナシ。ダメガネ。」
「…荷物全部僕が持ってるのにその言い方はないよね」
じゃあ これだけ持って、と言って渡された荷物はあまりにも軽くて。

 

「…ほいっ!」
「わあっ!?…」
新八の腕を掴んだ。
さっきから震えている方の手を、支えるように。

 

「ど、どうしたの神楽ちゃん」
「交代は嫌だけどお手伝いはしてやるヨ」
「…ああ、そう」
ぽかんとした間抜け面を覗いた瞬間に、すごい速さで反らされた顔を更に見つめた。
「な、なに?」
「林檎みたいネ」
「!!」
息を詰まらせた後に発する言葉は何か、と思えば。

 

 

「…神楽ちゃんだって、同じ」

 

 

ああ、本当に、もう。

 

 

 

 

 

雨色ラプソディ
(云わなくちゃ、雨が止む前に)
(云わなくちゃ、おひさまより先に)




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