蒼井優さんのアフリカの旅番組を見ていたらヴォワッと浮かび上がったお話しを唯唯、垂れ流し気味に書きます。ネタを忘れない様に書くメモみたいな物です。
……キーンコーンカーンコーン………
学校の予鈴が鳴り響き、生徒達は休み時間を惜しむ様にダラダラと着席し始める。
「次の授業何だっけ?」
「算数」
「あー、早く帰りたい」
「給食食べてから授業やれって誰が決めたんだ。腹きつくて眠くて授業何か出来ねぇだろ」
「いや、志位ちゃんはご飯食べてから昼休みめっちゃ遊んでたじゃん。 それは疲れの方が確実に優先してるよ」
「うっせ!出井っち。 腹がきつくて眠いったら眠いんだよ」
「あー、そう言われると思った。 分かった。もう言わない」
次の授業の教師が来る間、教室は小さくざわついていた。
「あ、先生来た」
その掛け声で徐々に落ち着き始める教室。
ドアの向こうに教師の影が写ったと思った瞬間、ドアはパシャリと簡素な音を立てて開けられた。
「オッス。 生徒諸君。 ちゃんと席には着いているな。 それじゃ、授業始めるか」
めんどくさそうに挨拶する教師は「前の続きから」と言って片手でペラペラと教科書を捲る。そして、目的の場所にたどり着いたのか、何頁が捲った所で片手を止めた。
「栄太、この問題やってみろ。 前回からの復習だ」
「はい」
栄太と呼ばれる少年は素直に前に出て問題を問いて見せた。スラスラと問題を解いて行く栄太。
「出来ました」
「……うん。 さすが栄太。 正解だ」
褒められた栄太は照れながら、席へ戻る。
「栄太は良いよな。 親父が考古学者の秀才児だもんな。 俺の親ももっと出来が良かったらな」
「それは志位ちゃんが、勉強頑張って無いだけでしょ。 栄太君は毎日頑張ってるんだから」
「うっせ!出井っち。 いちいち突っ込むな」
「はい、そこ喧嘩止め」
そんな三人のやり取りを見てクラスから思わず、ドッと笑い声が溢れだす。
教師から注意された志位はフンと鼻息を立ててそっぽを向き、出井はやれやれとでも言いたげに表情を歪ませた。
「栄太君、やっぱり凄いね。 勉強頑張ってるんだ」
隣りの席の愛に感心され、栄太は益々照れてしまう。
「栄太、嫁さんに褒められて照れてる場合じゃないぞ」
教師の突っ込みでクラスは二度目の笑いに包まれた。
耳まで真っ赤にする二人。しかし、どちらも満更では無いのか否定しようとはしない。
「……こういう所は否定しなきゃ面白くないんだぞ。 二人共」
教師から話しのテンポに駄目出しを食らった二人は更に「「あぁ、すぃません」」と、息を合わせて言うものだから、更に更に話しのテンポを狂わせていた。
∵・∴・★
学校の授業が終わり帰路へと着く生徒達。栄太と愛、志位と出井、それぞれ四人は馬が合うのか何だかんだと言って仲が良く、分かれ道までいつも一緒に歩いていた。
「それじゃ、また明日な」
「バイバイ」
「またね」
「また明日」
いつもの「無茶苦茶だった都市計画を思わせる四本の分かれ道」で別れて行く四人。
栄太も皆と別れて一人で歩いて行く。
栄太は他の子より、少しだけ頭の良い子だったが、どこにでもいる平凡な子だった。
ただ、一つだけ特殊な能力を持っていた。それは化石を復活させるという物だった。
その能力の仕組みを紐解いた者はいないので、どの様な仕組みになっているのかは分からない。が、栄太が化石に触れると、たちまち化石が蘇るのだ。こんな能力があるんなら凄い子じゃないかと思うかもしれないが、この特殊能力、実際何の役にも立たない。
化石が蘇るのは30秒、一度蘇った化石は二度と蘇らない。例え、DNAを調べようと皮膚などを削って採取したサンプルも30秒経つと化石に戻ってしまう。人を驚かせる事は出来るだろうが、そもそもこの化石復活能力は考古学者である父に止められていた。蘇ってから30秒経つと元には戻るのだが、本来の状態に戻る事は決して無い。蘇って黙っている生物はいないのだ。必ず、動いて本来の化石の形を失ってしまう。これは考古学者の父として、許されない行いであった。
だから、栄太もこの能力を使う事は無い。いや、正確に言うと栄太自身もこの何の役にも立たない能力に飽きていた。そう、最初は父の目を盗んでは復活させていたのだ。だが、それらは栄太が選んだ化石に戻っても元通りのままの化石。
木の葉や木の実、魚の骨、魚の糞、土器等々。
最初は蘇らせるだけで面白かったが、何の動きも無い物を蘇らせても飽きが来た。それなら他の人に見せて驚かせ様と、友達にも見せてみたが、やはり、驚くのは最初だけ。蘇った化石が魚の糞や骨じゃ誰も喜ばない。そして、その内、本当に詰まらなくなって止めてしまったのだ。
栄太自身がそんな能力を忘れてしまいそうになっていたある冬の日にその出来事は訪れた。