20:41 2023/7/13
話題:今日読んだ漫画

『血の轍』
原作:押見修造
出版:小学館

長部静一は両親と共にごく普通の日常生活を送る、ごく普通の中学生。だが、母親の静子は彼に対して、周囲から「過保護」と言われる程に深く関わろうとする一面を持っていた。ある日の事、長部家は夏休みを利用して、静一の従兄弟に当たる三石しげると彼の家族らも伴って山登りへ行く事に。その道中でしげるは片足立ちでふざけたのが災いして、崖の所でバランスを崩し、危うく転落しそうになる。現場を目撃した静子は咄嗟にしげるを抱き止め、彼を窮地から救ったが、次の瞬間。何を思ったのか、静子は助けた筈の彼を突き落としてしまった。木が緩衝材となった事で絶命は免れたが、しげるは重い記憶障害を負った。母親の殺人未遂と、静子のあまりにも謎めいた二面性を目の当たりにした静一は、警察の事情聴取で彼女を庇ってからというもの、混乱と後悔の念に取り憑かれて行った。一方の静子は情緒不安定に陥り、これまで以上に静一へ依存するようになる。

題名からは怪奇的な雰囲気を感じさせるが(私はそう思っていた)、実は『毒親』を主題とした作品。息子を深く愛するがあまりに、その愛情は次第に歪さを呈して行き、心を縛り付ける枷に成り代わる。愛情とは人間にとって必要不可欠な感情で、これなくして生きてはいけない。しかし、静子が静一に対して抱く愛情には何やら異質なものを感じざるを得ない。その異質さが明るみに出たように感じたのは、静一の同級生で、彼に心を寄せている吹石由衣子からのラブレターを無残にも破り捨てた場面である。「青春真っ盛りな息子の恋路を邪魔している」などという解釈では表現し切れない程、静子の愛情が静一の心に影を落としていたのは確かだ。そして、その影は静一の意識をも翻弄して行く。

私も頻繁に動画を拝見させて頂いている、考察系YouTuberのキリン氏による『血の轍』も含んだ漫画の衝撃回がこちらで特集された。興味がおありの方は、是非ご覧になってみては?
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