「…さむい。」
今年の冬はやけに冷える。
そんなことを霞がかった脳で考えながら、
一人きりの部屋で壁にもたれ掛かり、ベッドに腰を下ろす。
何もやる気など起きぬまま、チクタクと秒針が動く音を聞いている。
そのまま何もしないでぼんやりしていると、
学校帰りなのでしょう、子どもたちの元気な声が外から聞こえてくる。
ふと時計に目をやると、
いつの間にか14時を回っていた。
何もしていなくても時間は過ぎるもの。
そんなの当たり前のことなのに、今は何故かそれが酷く苦しく感じる。
『ひろし!こっちこっち!!』
脳に聞こえてくるよく知っているはずのその声に、思わずベッドから勢い良く立ち上がり、窓から外を覗いた。
だがそこに声の主はいるはずもなく、下校中の小学生がふざけ合っているだけだった。
そう、それもそのハズです。
だって、声の主は…半年前に首を吊って●んだのですから…。
私は深く息を吐くと、その場に座り込んだ。
どこから間違えた?
私の選択は一体どこから?どうすれば君が●なずにすんだ?
どうすれば君が笑える未来があった?
どうすれば…君は私の隣にいてくれた?
脳味噌野郎。君が私をそう呼んでいたが、私の自慢の脳味噌は、君がいなくなってから壊れてしまったようです。
ですが、私はそれを治すための方法がわかりません。
どうしたらいい?
どうしたらこの苦しみから解放される?
君がいないだけなのに、私は何故…こんなに悲しい?
『ひろし!』
そうか。
今年の冬がやけに寒く感じるのは、
君の暖かい笑顔と声を知ってしまったから…。
『こっちこっち!』
あぁ、臆病な君が私を呼んでいる。
あの日救えなかった笑顔を、今度こそ私は守れますか?
私は…
「たけしくん。今、会いに行きますよ。」
君の隣で生きていたい。
あんなに興味なんてなかったはずなのに、
今では…君が隣にいなければ、
私は上手に息をすることもできやしない。
例えるならエラーを起こした機械のように、
最後に見た君の顔が、脳味噌から離れなかった。
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