寒月に想う

Dec.22 21:03 文章




ふと、窓を眺めると、外では雪が降っていた。
窓が、外気と室内の空気の温度さで白くなっている。
眼を凝らすと、その奥で、雪が庭を真白に塗り替えているのが分かる。そのくらい長い時間降り続いているのは、今年初めてかもしれない。
そのまま視線をカレンダーに移し、日付を数える。
昨年より、早い。
こんなに冷え込むのも、こんなに雪が降るのも。
昨年の寒さがマイナス何度だったとか、そんなことは覚えていないが、昨年よりも降雪は早い。それだけは確信を持って言えた。
「・・・もう、こんな季節になったんだね」
一人呟いた声は、暖かな空気に溶ける。
今年の寒さが、昨年来なくて良かった。
たった数日かもしれないが、彼女はその分、長く生きられた。
雪が降る、それは白く澄んでいて、美しいものだ。
けれど、そこに人のような温もりは無い。
人のような感情は無い。
ただ、舞い降りて、人から、物から、この世界から熱を奪ってゆく。
命さえも容赦はなく。
嗚呼、でも。
「雪も、ひとつだけ与えてくれるよ」
今も、この先も、僕は雪を見るたびに思い出すのだろう。
きみが、残してくれた、この痛みを。






愛犬アスカへ捧ぐ。



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