-真夜中
この街では好き好んでこの時間に裏道に入るような人間はいないだろう。
普通のギャングに遭遇する位なら幸運と呼べるほど、この街には普通ではない輩が多い。
そんな街の通りを一台のバイクが疾走していた。
大きなコウモリを型どったかのようなバイクに乗る男の容姿も変わった…いや、ある意味この街では見慣れた姿かもしれない。
全身にコウモリをイメージさせる意匠が施された姿…。
だが
そのマスクは中世の騎士のようなデザインをしている。
口の悪い道化師ならば、こう言うだろうか
「アイツもコウモリのコスプレしてるが、コイツは品が有りすぎる!!なに気取ってやがんだ!?気に入らねぇぜ!!」
しかし、この街でコスチュームを着ていれば当然の如く「あの男」がやってくる。
バイクの男の耳にもその爆音は聴こえてきた。
ギャングならば音を聞いただけで震え上がるその爆音の元は…徐々にバイクに近づいてきていた。
「止まれ」
闇から滲み出したかのようなマシンから声が響く。
バイクの男は知ってか知らずか、警告を無視する。
すると更なる爆音を上げてマシンはバイクを追い抜き少し進んだ場所でターンする。
「止まれ」
もう一度、警告が発せられる。
バイクの男は…仮面の中で舌打ちするとアクセルを緩めた。
黒い車の前で止まったバイクの男に中から降りた男が問う。
「何者だ?」
「あんたがバットマンか」
質問に答えずバイクの男は言う。
「そうだ」
黒い車―バットモービルの主は答える。
「俺の邪魔をしないでくれ。あんたの邪魔をするつもりもない」
街の主とも言うべきバットマンに不遜な態度の男は、それでも名乗るつもりはないらしい。
バイクに再び跨がろうとする男に対してバットマンの手元が閃く。
バイクのカウルにコウモリ型の小さなブーメランが突き刺ささったのを見た男は再び舌打ちをした。
「名乗れ」
短い言葉だが威圧感はそれまでの比ではない。
「ナイト…仮面ライダーナイトだ」
「仮面ライダーナイト?」
男―仮面ライダーナイトと言う名前にバットマンは違和感を覚えた。
[知ってはいる…が…有り得ん]
世界一の探偵の異名を持つバットマンにしても奇妙な感覚だった…。