あれから何度かギンジさんと会った。

電話はもちろん毎日かかってきた。会うペースは週イチくらい。

しかし妙な違和感を感じる。

俺、告られたんだよな…?

その割にその話には一切触れて来ないし、返事を求めるような態度も全く感じない。

まるであの告白が嘘だったようだ。

そんなある日。

 


「さー、着いたぜ〜。最近来てなかったから楽しみだぜ♪」

「俺、小坊の時に学校で見学に来て以来ですよ…懐かしいな〜。」

目的地に到着すると、ギンジさんは深呼吸をしてキョロキョロと辺りを見渡した。ただでさえ派手で目立つギンジさんなのに、車がアルファロメオの赤だから更に目立つ。
実家はバイク屋らしいけど、どんだけ金持ちなんだろう。まだ学生なのに…。

到着した場所は、隣町にある航空自衛隊基地の隣の博物館だ。飛行機が何機も展示してある、飛行機マニアにはたまらない場所だ。

入館まえからウキウキしてるギンジさんは、本当に嬉しそうで、そーとー飛行機が好きなんだなと分かる。
中に入り飛行機の歴史やら色々見て、ちょっと疲れたから飲み物買って座って休憩することにした。


「ギンジさんって本当に飛行機好きなんですね。」

「まあな〜。目ぇ輝かせて子供みたいでカワイイって思ってただろ?」

そう言ってニコッと笑うギンジさんに、頬が熱くなるのを感じた。

「ま、まあ…」


…いつも心の中を読まれて、図星でカッコ悪い。
まあ、ちょっと都合良いように解釈されてる感じはするけど。

「俺さ、パイロットになるのが夢だったんだ。あ、ガイには内緒だぞ?夢挫折したなんて知れたらカッコ悪ぃからな。」

「へー、そうだったんですか。ギンジさんがパイロットって似合うなぁ。」

「だろだろ〜?俺ってば何でもサマになって罪だよな〜?」

ギンジさんは自信たっぷりに言うけど、その通りだから全く抵抗を感じない。

「だからさー、俺、自衛隊行こうかって思ってんだよな。アクロバット飛行とかやりてーし。」

「え…自衛隊?」


その言葉を聞いた時、何故か心臓がつきん、と痛んだ。

「そーそー。パイロットはパイロットだし。夢追い掛けるのもいいかなって思うんだよな。俺、お前がプロ目指して頑張ってるのめちゃカッコイイって思うし。そんなとこに益々惚れたし。」

「…!あ、そ、そうなんですか…。」

久々に聞いた愛の言葉ってやつにヤバいくらいに顔が紅潮して、ハズかしくて顔を伏せた。


それから夜、飯食って家に帰り、部屋に入ってベッドに横たわった。

ギンジさんと遊びに行くのは嫌いじゃないし、ギンジさんの事も嫌いじゃないし。でも、なかなか俺の本心が見えてこずに、ずっと心の中でモヤモヤしてる感じだ。
ギンジさんは俺と居るときも色んな人から電話がかかってくる。相手は女が多い。モテるくせに俺に惚れてる意味が益々分からない。もしかして遊ばれてるんじゃないかとさえ思う。
それにしてもさっき、ギンジさんが自衛官になるって言った時に妙な感じになったのはなんだろう?

もう6月だってのに、まだ梅雨入り宣言が出されない空が雲を広げてその宣言を待ち構えているようだ。

何かひとつ決定打があれば、俺だって答えを出せるのに。