何が起こったのか分からなかった。
自分が、何を言われたのか、その意味がどういうものなのか。

結局、あの後タクシーで送ってもらった。
何をされる事もなく、すんなりと帰してもらえた。
別れ際に、「返事は急がない」って言葉を残されて。

 

自分の部屋に入り、まずは一息ついた。

色々あって疲れた。とりあえずベッドに横たわろう。


…今日は…ギンジさんと食事して…

そして…

 


時間が経てば経つほどに、自分が何を言われたのかが冷静に分かるようになってきた。


そう、あれは…

まぎれもなく、愛の告白だった。

 


…本当に?何で?
あんな女に困って無さそうでかっこよくて金持ちで頭もいい完璧な人が何で?

何で…俺?

一目惚れだって言ってたけど…俺、そんなに女子っぽい自覚は無かったんだけどな…。

女に告られたことは何度かあった。だから、想いを告げられるのに慣れてるっちゃ慣れてるんだけど。


…根本的な問題がある。


それは…俺もギンジさんも、男だということだ。


ルークの例があるから、全く無縁で信じられない話じゃない。
だけど、よりによって何で俺が。

しかも相手は…ガイさんの親友のギンジさんだぞ!!??

何だこの出来すぎた話は…。

 

まて、待て。

一度冷静になろう。

俺は、この状況をどう捉えてる?

まず…嫌かそうじゃないかって言ったら…

う〜ん…嫌じゃない気がする。

普通男に告られたら気持ち悪くてもう絶交したくなるもんだろう。

じゃあ?俺…ギンジさんの事好きって事か?

いや、いや。
それも違う。
そもそも会って数回の相手を、しかも男を好きになるなんて事が有り得ない。

ギンジさんの事は嫌いじゃない。むしろ、好きだと思う。
でもそれは一人の人間としてであって、恋愛感情なんて無い。


…うん、無い。

無いよな。
だって俺は普通の男だから。

 

ギンジさんの想いへどうやって答えを出せばいいのか。

俺はそんな事ばっかり考えていた。

本当の気持ちに、気付かないフリをして。