ギンジさんの指定通りに、岐阜駅前に来た。
午後7時。JRの入り口で待ち合わせの予定。
バスの都合で10分くらい早めに到着。ちょっとでも遅れたら失礼だから早めに来た。…なのに。

「よ、アッシュ。はえぇじゃん。」

「ギンジさん!え?だって…まだ時間じゃ」

「そんだけ楽しみだったってコトよ。何食いたい?」

 

ギンジさんは、タイトなシャツに素肌をちょっと覗かせ、下はブラックのスキニーだった。
さりげなく漬けたアクセが渋くてかっこいい。

正直、どこぞのファッションモデルより…カッコいい…。

スタイルもいいし背も高いし、…顔もいいし。
ぶっちゃけ初めて見た日からちょっと憧れてた。

俺、かっこう変じゃないよな?ちゃんとギンジさんに釣り合う…わけはないけど、一緒に居ても恥ずかしくないような格好だよな?

イケメンの隣がこんなに気を遣うなんて…。
ルークの気持ちが、ちょっとわかった気がする。

 

何食いたいか笑顔で聞いてくるギンジさんに、何故か緊張しながら何でもいいですと答えると、じゃあ、って駅隣の住居スペースのある高層ビルに案内された。
行き先は、その中の展望レストラン。


あの…これって。

なんだかリンクするものがあるんだけど…。

 

そこから見える夜景を眺めながら、俺はルークとガイさんの事を思い出していた。

何だか…二人の馴れ初めを辿ってるような気さえしてきた。

しかも、ギンジさんにお任せしたコース。


めっちゃ高そうだし…。

何だこの肉。

こんな旨いの初めて食べたし。


ギンジさんは相変わらず、面白い話をひっきりなしにしてくれて、俺はその話を夢中になって聞いてた。
ほんと、この話術がすごい。会ったばかりの人間を飽きさせない会話が出来る奴なんて、そうそう居ないだろう。

話題は専ら部活の事だ。俺の話もそうだけど、ギンジさんの所属してるサークルの事も色々話してくれた。
入ったきっかけはなんとなくかっこよくてモテそうだったかららしいけど、そこでガイさんっていう親友にめぐり合えて、世の中どこから何がどうなるか解らない。だから出会いってのは一期一会で大切なモノなんだって。
…確かに、そうだ。

俺が偶然大学に行ってそこで初めてギンジさんに会って。

今こうして、一緒に飯食ってるような仲になるなんて。

出会いって、不思議だ。


「ご馳走様でした!すみません、こんないいもの食べさせてもらって…。」

食事が終わって、レストランを出た。
支払いはギンジさんがおごるってきかないから、負けてお言葉に甘えることにした。

…っつっても、払えるような持ち合わせはなかったんだけど。


いくらしたかは解らないが、あの肉の旨さとコース内容でだいたい想像はつく。きっと結構値段張ってると思う。

「いや、たいしたものじゃなくてゴメンな。今度はちゃんと旨いもん食いに行こうな〜♪」

そういって笑顔で答えるギンジさん。

こ、これ以上高級で旨いもんって…何?俺、想像もつかないんですけど…。


レストランを出て、バス停の方に向かおうとしたときに気がついた。
そういえば、ギンジさんは何で来たんだろ?てか、どこに住んでるんだ?

「…あの、ギンジさんって家どこなんですか?バスの方向とか一緒?」

「ん?俺んち?ここ。」

「…え?」


ここ?ここって…

 

え?


えええええ!!!???

 

ここ!!??

た、確かにマンションになってるけど!!


一人暮らしなんでしょ!!??


一人でこんな高級マンションに住んでるの!!??

何!?この人もしかして超金持ち!!!???


「そうだ、よかったら寄ってく?お茶でも飲んでったら?」

「え…え!!??そ、そんな…!これ以上お世話になるわけにも…」

と、いいつつもあのマンションの中には興味があった。

俺は誘われるまま、ギンジさんの部屋にお邪魔することになった。