ルークは、昔から泣き虫だった。
そんなルークを庇ってやるのは、俺の役目だった。
だから、相手がたとえガイさんであろうとも、あいつを泣かせる存在は許せない。口ではとても言えない事だけど。
俺はそれだけ、あの、出来の悪い弟を大切に思ってる。
なのに。

みんなでモツ鍋を食いに行った日から4日くらい経ったかな。
月曜日に来て以来、ガイさんが来ない。あれ以来、ルークは元気がない。
ルークの話じゃ、男が男を好きになるなんて気持ち悪いって言われたらしい。
そりゃ、ルークにとっちゃこの上なくショックな内容だろう。
でも、今日はある約束をしていた。ルークのことは気がかりだけど、約束が優先だ。

 

出会いは、大学へ乗り込んだ時だった。

印象的な銀の髪は、あの時からずっと俺の頭の中から消えることはなかった。

そんな、彼が…俺に接触してくるなんて、思ってもみなかったのに。

…どうして、そんなに俺にかまってくるんだろう?
でも、悪い気はしないのは確かだ。
そして、今日はついに呼び出されたんだ。
母さんに食事は要らないっていってあるし、服もお気に入りのを用意しといたし…。
準備はばっちりだ。

初めて電話がかかってきたのは今週の月曜日だった。それから毎日(と言っても3日だけど)学校が終わるころに携帯が俺を呼ぶ。今日はどうだった、部活がんばってるか、なんて、たあいもない会話。
月曜日に約束した土曜日に会う話が流れて、急遽今日の夜会う事になった。

ギンジさんは話はうまいし、毎日会話しても飽きることない。
俺の好きな話題を提供してくれるし、ここってところで笑わせてくれたり、なんて話術に長けた人だと、この3日間で関心した。はっきり言って、俺にはない才能だからだ。だから、当然会うことにも抵抗はないんだけど…。


なんでだろう。


男と会うだけだってのに、何でこんなに緊張してるんだ、俺…?

気持ちを落ち着けるためにルークと話したいところだけど、あいつも様子がおかしいし俺の事を気にしている場合じゃない事も想像がつく。

ってか…

何で服までちゃっかり用意してるんだろ?まるで初めてデートに行く時みたいに、俺は何故か身の回りを周到にしている。

それは、ギンジさんがイケメンだからってのもあるかもしれない。あんなカッコいい人と一緒に並ぶんだから、俺もそれなりの格好をしないと。

そう、それだ!!そうだよ、そうなんだよ。俺は俺が恥をかかないためにこうしてるだけで。


独りで戸惑って焦って。

まるでルークみたいだと、自嘲し、待ち合わせの店へとバスに乗り込んだ。