彼は、わざわざ俺に礼を言いに来た。俺が一緒に選んだ服を、お兄さんが気に入ってくれたって。

そんな当たり前の事にわざわざ礼を言いに急いで来るなんて…


何故?

 

…いや、何でもいい。

このチャンスを逃してはならない。

何がチャンスなんだか自分でもよく分からないが、この時の俺は必死だった。

偶然現れたこの奇跡を逃がすまいと、食事に誘って一緒に帰って、ケー番まで聞き出した。

軽い気持ち…だ。

せっかくなんだからまた一緒に遊べたらいいね、的な。

 

 

でも、現実はそうじゃなかった。

番号を知ったとたん、携帯を見る度にルークの事を思い出して、会う口実を考えては連絡を取ろうとしていた。
大学の見学をしていたことを思い出して、ウチに見学に来るように誘った。
どうせならウチに来てもらおうと、家庭教師も買って出た。

ルークは俺と気が合いそうな気がしたし、どこかほっとけない…手のかかる弟みたいな感じがして、姉しかいない俺は弟や妹に憧れてたのか、それともルークが人にそう思わせるタイプの人間なのか。とにかく、彼は俺の興味をそそる相手だった。きっと会った瞬間から肌でそう感じていたんだろう。俺たちは生き別れの兄弟かのように、みるみる仲良くなっていった。